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物的証拠

「ここまで言われても認めないなんて……なら、物的証拠を出すしかないようね」


 言いながら、ツインテは胸ポケットからスマホを取り出した。


「この空間、通信手段は使えないけど、写真や録画録音機能は使えるのよ」

「だから何よ……」


 ミツアミが、ツインテを睨みつけた。


「昨晩の襲撃は成功したみたいだけど、ロングが最後まで出てこなくて、ニャルが人狼の夜襲成功を告げた時……どうして貴方! 笑っていたの!?」

「そんなの嘘だよ! だってシャッター音なんて」

「知らないの? 写真撮影にはシャッター音がするけど、録画機能をあらかじめオンにしておけば、レンズが貴方を向いている間は、ずっと映像を撮れるじゃない」

「ッッ!」


 ミツアミが口を閉ざし息を飲むと、ツインテはスマホを操作する。


「貴方の邪悪な笑みを動画が、これよ!」

「ヒッ!」


 ミツアミが短い悲鳴を上げる。



 ツインテのスマホには、可愛らしい子猫の動画が流れていた。



「なーんて嘘よ。そんな動画撮っているわけないじゃない」

「な、何ハッタリなの?」

「そうよハッタリ、でも」


 ツインテの目がキラリと光る。


「そのハッタリに、どうして貴方はびくびくしていたのかしら?」

「ッ、そ、それは……」


「貴方が村人なら笑うはずが無いんだから、カメラで撮られたと言われても、不思議そうに首を傾げて終わりじゃないの? なのに貴方ときたらびくびくしちゃってみっともない。それは貴方が人狼だから『もしかして表情に出てしまっていたのか』って不安になったんでしょ!? 違う!?」


「違うもん! 笑ってないはずだからこそそんな突拍子もない事言われたら、驚いて動揺しちゃうじゃない! みんな聞いて、あたしは」


「そして私がダラダラと話を伸ばした理由!」


 ツインテが、鋭い声でミツアミを切り裂いた。


「どうして議論の最初に推理ショーをしなかったのか。だってそうでしょう? 私は私の探偵スキルでミツアミ、貴方が人狼だって知っているんだから、大預言者が人狼を暴露するみたいにして普通に言えばいい。なのにみんなが貴方を疑う様に誘導しようとしたり、推理ショーなんて言って、こんなもったいぶってダラダラと長く喋るような事をしたのか。まぁ、推理ショーなんてしなくても、最初からみんながミツアミを疑ってくれればそれに越したことは無いとか、そういう考えも無いわけじゃなかったんだけどね……何よりも、私がどれだけ完璧な推理を披露しても、嘘の証言を並べたり、泣き落としとかそういう手でみんなの心を揺さぶって欲しく無かったのよ」


「それとツインテさんの推理ショーに何の関係が」

「答えは、これよ」


 ツインテは、またスマホの画面を操作して、俺らに見せた。

 今度は動画じゃない。

 ストップウォッチ昨日だった。

 今、59:50秒。


「ッ!?」


 ツインテの顔に、電流が走った。


「まさか!?」

「そうよ! でも、今更気付いても遅いわ! ニャル! 投票タイムよ!」


『はいはーい♪ イイ感じに狂乱の香りですねぇ♪ それではタイムアーップ♪ 議論はそこまでです♪』


「ちょっ、あたしはまだ、みんな聞いて! あたしは!」

『あーミツアミさん。議論終了後の過度なアピールはお控えください。ペナルティで殺しちゃいますよ♪』


 ミツアミの目から涙がら落ちる。


「そんな……メガネくん!」


 俺は何も言えなかった。

 俺は認めてしまっていた。

 ツインテの推理は完璧だ。

 でも認めたくない。

 ミツアミが人狼なんて。


 あんな可憐な子が人狼で、みんなを騙しながら三人ものプレイヤーを意図的に殺したなんて……


 けれどそれは感情論。


 頭ではもう解っている。


 人狼は……


 俺の指が、ミツアミの名前を押そうとする。

 予定通り、俺とミツアミがオールバックに投票しても二票。

 他の三人はみんな、ミツアミに入れるだろうから三票。

 仮に俺がオールバックに票を入れても、ミツアミは助けられない。

 どうせ助けられないなら、なら、なら……

 手と背中にびっしょり汗をかいて、

 心臓の動悸が激しくなる一方で苦しくなって、

 息が止まりそうになって、俺は…………


「投票はそこまででーす♪ ではではー、結果発表をどうぞー♪」


 みんなが注目する中、大画面に表示されたのは、

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