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謎のアピール 情に訴える

 三人の表情が強張る。


「言っておくけど、実は自分のメガネと同じ占い師で、私とメガネが村人だと知っている、なんていうのは無しよ。ニャル、昨日、食堂のシャンタに聞いたのだけれど、職業は重複していないのよね?」


 ツインテが裁判長席を見上げると、ニャルは大きく頷いた。


『もちろんですよ♪ 人狼ゲームに使われる職業は元々一〇以上ありますからねぇ♪ 人狼を含めて一〇人全員、別々の職業を割り振らさっているはずなのですよ♪』


「だ、そうよ」


 言われてみんな黙ってしまう。

 すると、オールバックが小声で、


「な、なぁ……この犯人探しって意味あるのか?」

「どういう意味かしら?」


「だってよ、この五人の中から一人選んで処刑するのが人狼でも、村人でも、四人以下になったらゲーム終了だろ? ここで誰かを殺さなきゃ駄目っていうなら、もう俺らの運命は一人が死んで四人が助かるって話だ。今更人狼を当てて処刑しても、助かる人数が増えるわけじゃねぇ。ならよ、死にたくないっていうアピールタイムにしないか?」


「アピールタイム?」


 ツインテの視線が、いぶかしげにオールバックを射ぬく。


「だってそうだろ! 今までのゲーム見ていたら、結局人狼が誰かなんて推理できなくてあてずっぽうの運任せだ。おまけに俺は容疑者三人の中の一人、三分の一確率で運任せで殺されるなんてまっぴらだ! なら五人で、死にたくない、死ぬわけにはいかない理由を言い合ってよ、その上で、人狼っぽい奴じゃなくて、一番死んでもいいだろうって奴に投票するんだよ! それなら恨みっこなしだろ!」


 ツインテが溜息をつく。

 本当に、まるで、


『なんでこの生き物はこんなにも馬鹿なのかしら』


 という目と溜息だった。


「あのねえオールバック。そんなのどうやって証明するのよ? 誰だってこの場でいくらでも嘘をついていかにも生きる価値のある人間っていう風に見せようとするに決まっているじゃない……」


「いーや! 俺は証明できるぜ! これを見ろ!」


 オールバックは、服の襟の中に手をつっこむと、ロケットを取り出した。

 こいつ首からそんなのしていたんだな。

 ロケットを開けて俺らに見せつけるオールバック。

 中には、オールバックと映る老婆の写真があった。


「俺は婆ちゃんと二人暮らしなんだ! 婆ちゃんの為にも、俺は死ぬわけにはいかないんだよ! そしてこの写真がその証明だ!」


 いきなりブチこんできたなこいつ……

 でもそれが本当なら、確かにオールバックは死んじゃいけないな。


「勝手にアピールしないでくるかしらオールバック」

「なんだよ! 自分が村人に確定して安全圏だからって、ずるいぞ!」


 ツインテの眼差しが、絶対零度まで冷え固まった。


「せっかく私が誘導してあげているのに、次から次へと貴方達は……本当に、生きて帰ったらランドセルでも背負いなさい!」


 冷徹な瞳が、俺とオールバックを貫いた。

 どちらかを睨むというよりも、広範囲威嚇攻撃だった。


「そうは思わない? ミツアミ?」

「え?」


 水を向けられたミツアミが、また緊張で強張ってしまう。


「なな、なんであたしに話を振るの?」


 俺は、ツインテの言葉を思い出す。


「おい待てよツインテ! 誘導してあげたのにって、お前が疑っていたのは」

「あ、あたし!?」


 ツインテの肩が、びくりと跳ね上がった。


「待てよツインテ、違うんだ! ミツアミは人狼なんかじゃない! ミツアミは」

「兵士だって言いたいんでしょ?」

「!?」

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