まずい……
次の日の会場。
俺は放送で呼ばれたり、シャンタに連れて行かれる前に自分であの黒いドアをくぐる。
円卓にいたのはツインテ、ミツアミの二人だけ。
俺が席についてから、すぐにオールバックが姿を現した。
残るはロングとシャギーの女子二人だ。
結果は、
「あれ? あたし今日は遅かったかな?」
底が見えない出入り口から、シャギーが姿を現した。
人狼が襲撃を失敗したのなら、昨晩の犠牲者はゼロ。
ロングも来る。
でも襲撃が成功したなら……
俺は覚悟を決めてから、ニャルを見上げた。
『ではこれで全員です♪ 昨晩の犠牲者はロングさんでしたー♪ じゃあ皆さん、今日の議論を始めてください♪』
俺は一度歯噛みをしてから、気持ちを切り替えた。
よし、いくぞ。
ツインテとミツアミを援護しつつ、人狼を見極めるんだ。
容疑者はシャギーとオールバック。
でもシャギーは言動から違うような気がするし。
俺としてはオールバックが怪しいかな。
「じゃあまず人狼の狙いについて考えましょうか?」
珍しく、シャギーではなくツインテが口火を切った。
「最初に殺されたのは、アフロと一緒になってシャギーを攻めていたパンク。その次は大預言者を自称したキンパツ。最後は特に目立った発言はしていないロングね」
シャギーが頭を悩ませる。
「言っちゃ悪いけど、いてもいなくても変わらないようなロングをなんで狙ったんだろう?」
「逆に言えば、発言の多いシャギーさんは殺せなかった、シャギーさんを生かしておくことにメリットのある人物かしら?」
「あたしを生かす?」
「はっきり言ってシャギーさんて、アフロ、パンク、ハゲとか、男子と対立する事が多いでしょ?」
「べ、別にあたしは男子が嫌いなわけじゃないわよ、ただあいつらが……」
「もしも人狼が女子なら、確実に自分ではなく、男子に疑いを向けてくれるシャギーさんは貴重な人材よ」
おお。今のって結構いい推理なんじゃないか?
流石ツインテ。
クールビューティーだけあって頭もいいな。
あれ?
でもそうなると……
「私はメガネ君が村人だって証明してくれているから。そうなると怪しいのは消去法でミツアミになるわね」
「えっっ!? あ、あたし!?」
ミツアミが目を丸くして、固まってしまう。
まずい、ツインテはミツアミが兵士だって知らない。
ミツアミ、こうなったら自分が兵士だって言うんだ!
「あ、あたしはそんな、人狼なんかじゃ……な、ないよ」
弱々しく否定するミツアミ。
彼女の視線が、ツインテから、すっと俺に向けられた。
そうか、昨日の処刑の後の空気。
兵士が意図的にキンパツを守らなかったのだとしたら許せない。
あんな事をみんなに言われて、自分が兵士だなんて言ったらどれだけ責められるか。
ミツアミはそれが怖いんだ。
臆病な性格が災いして疑われるなんて……
俺は語気を強める。
「いや、ツインテ。それはちょっと考えがストレート過ぎないか?」
「どういう事かしら?」
「だからさ、昨晩シャギーが襲われなかったのは、シャギーが必要な人材だからっていうのはそのまま過ぎるかなって」
「つまり、シャギーさん自身が人狼である可能性かしら?」
「メガネあんたあたしの味方じゃなかったの!?」
シャギーが円卓に手をついて、身を乗り出してくる。
「いや、何もシャギーが人狼だなんて」
「おいメガネ! そうなると消去法で俺が人狼になるぞ! 俺が人狼って言いたいのか!」
「なんでみんな俺ばかり責めるんだよ!」
まぁ、俺はお前が一番怪しいと思っているんだけどな。
「埒が明かないわね。状況をまとめましょう」
ツインテは腕を組み、冷静に語る。
「まず残っているのはメガネ、オールバック、シャギー、ミツアミ、ツインテの私の五人。そのうち、村人だと証明されているのは、私とメガネだけ。容疑者はシャギー、ミツアミ、オールバックの三人。そこで質問だけれど、この中で自分の職業を明かせるかつ証明できる人はいる?」
三人の表情が強張る。




