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生活環境

 ホテルに戻った俺は早めに昼ごはんを食べると、部屋に戻った。


 あらためて部屋を見渡すと、意外に遊ぶものが多かった。


 人狼ゲームは数日がかりなのに、プレイ時間は一日一時間と少しだけのせいだろう。


 部屋机にはノートパソコン。

 室内にはコンポと雑誌が完備されている。


 CDは去年と今年発売されたCDが何十枚も用意されている。


 ノートパソコンを起動させる。

 基本的なソフトはインストールされていて、インターネットにも接続できた。

 でも当然というか、これがニャルの魔力なのだろう。

 調べることはできても、干渉することはできない。

 通信系は全て動かないし、

 掲示板などには一切書き込めない。


「ん? これは?」


 たくさんの動画がインストールされていて、俺は何気なくクリックしてみた。


「ぶはっ!」


 エロ動画だった。

 他のアイコンもクリックしてみるけど、どれもエロ動画だ。


 ニャルの奴は何を考えているんだ。


 他のフォルダには、アニメやドラマ、映画も入っていた。

 これでヒマを潰せという意味なのだろう。


 でも今はそんな気分じゃない。


 俺はワードソフトを起動させて現状を記録する。

 生き残っている人や人数。

 そして俺が覚えている限り、みんなの発言内容をまとめる。

 でも、発言内容だけじゃ怪しいかどうか解らない。

 気が付けば、もう夜の七時だった。


「ツインテに相談しようかな」


 さっきの議論で、ツインテは俺が村人だと信じてくれているはず。

 きっと俺の相談には乗ってくれるだろう。


 俺は部屋から出て、二階へと向かった。

 階段を上って二階へ行き、二回のホールを抜ける。

 左右の壁に俺の部屋と同じドアがずらりと並んだ廊下をみつけると、順にノックをしようとする。


 みんなの部屋の場所は知らない。


 仮に二回は女子部屋だったとしたら、この廊下の部屋にいるのは、ツインテ、ミツアミ、シャギー、ロングの四人。


 最悪の場合だと三回も『間違えました』と言うハメにある。


 でも、俺はノックできなかった。


 廊下の奥。

 そこは俺らの階と同じ談話室の空間だった。

 そこから、女の子の泣き声が聞こえる。


「?」


 気になって行くと、談話室でミツアミがソファに座って泣いていた。

 両手でスカートのすそを握りしめて、子供のように涙を流している。


「ど、どうしたんだミツアミ?」


 ミツアミは俺に気付くと、少し驚いた顔になって、それからすぐに指で涙をぬぐった。


「メ、メガネくん!?」


 俺は慌てて駆け寄った。


「今、泣いていたみたいだけど、どうかしたのか?」

「う、うん、実は……」


 ミツアミは一度うつむいて、それから俺を上目づかいに見て来る。


 やばい、可愛い。


 ツインテの美少女ぶりにばかり目が行っていたけど、よく見るとミツアミはミツアミで凄く可愛らしい女の子だった。


 クールビューティーのツインテにはない、守ってあげたくなるような、特別な可愛らしさがある。


 そんな彼女が、涙交じりに言った。


「あたしが兵士なの」

「え……? それってつまり」


 ツインテの言う様に、他の職業に能力を操られていたのか?

 兵士に自分を守らせるとかいう職業があるってこと?


「違うの……あたしじつは、自分で自分を守ったの……」

「なっ、ど、どうして?」


 あえてキンパツを守らなかった。

 処刑の後に触れた事。

 みんなは許せないと言っていた。

 俺も、酷い話しだとは思う。


 でもそれがまさか、こんな虫も殺せないような、弱々しい女の子がしていたなんて。


「だって、だって怖かったんだもん!」


 ミツアミの目から、涙が零れる。


「だって、ツインテさんが言っていたじゃない。人狼がキンパツさんを無視して、全然違う人を殺すかもしれないって。あたしもそう思った。大預言者は脅威だけど、それを守れる兵士だって人狼には脅威だよ。じゃあ、まずは兵士を殺してからって考えてもおかしくない。人狼がキンパツ以外の人を意図的に選んだら……六分の一の確率であたしが殺されちゃう……」


「でも、作戦は」


「あたしだって作戦はわかっているよっ。でも、でも怖かったの……」


 最後の方は完全に力を失って、ミツアミは泣き崩れてしまった。

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