最悪の結果
「うそだろ……」
『いえいえ、嘘じゃありませんよ?』
俺の口からついて出た言葉を、ニャルはあっさりと否定した。
『昨晩襲われて死んだのは間違いなくキンパツさんですから。というわけで、今日はこの七人で議論を始めますよ』
ニャルは俺の気持ちをよそに、さくさくとゲームを進める。
「では、一時間の議論タイムをどうぞ♪』
俺はキンパツが死んだ実感を得られないまま、視線をニャルから円卓のみんなに移す。
みんなも言葉を失っているようだ。
それとも、いつも口が回るアフロがいないからか、誰も喋ろうとはしない。
けれど、
「な、なんでキンパツが死ぬのよ!」
シャギーだった。
その声には、強い感情がこもっている。
議論では、キンパツと一緒になってアフロと討論をしていたのは彼女だ。
二日とはいえ、キンパツに親近感を持っていたんだろう。
「誰よ兵士! なんで昨日の夜にキンパツを守らなかったのよ!」
「シャ、シャギーさん」
隣に座るロングがなだめようとする。
「そそ、そんな……キンパツさんがぁ……」
ミツアミは目に涙を溜めながら震えている。
ハゲが舌打ちをする。
「ちっ、ようするにあれか。兵士はキンパツを守らなくて、人狼はセオリーに自称大預言者のキンパツを殺した。最低だな!」
「誰よ兵士! 名乗り出なさいよ!」
シャギーが何度も怒鳴って、俺はようやく頭が正気に戻って来た。
「……少なくとも、俺、ツインテ、シャギーじゃないよな」
「はっ、それどういう意味だよ? 僕は悪くありませんてか?」
ハゲが俺を睨む。
「いや、そうじゃなくてさ……俺とツインテは、キンパツの作戦に賛同しただろ? もしも俺かツインテが兵士なら、みんなの前で賛同なんかしないで、個人的に勝手にキンパツを指定すればいいだろ? だから賛同の意志を示す意味は無い」
「そうかよ、それでなんでシャギーの奴まで兵士じゃなくなるんだよ? 自分が兵士でキンパツを守らなかったことを誤魔化す為かもしれないだろ?」
「人狼の可能性はあっても、兵士じゃないよ。だってそうだろ? シャギーが人狼で、キンパツを襲ったなら、それを誤魔化す為に騒ぐ可能性はある。でも、自分が兵士なら、それこそキンパツを守ればいいわけで、あえてキンパツを守らないでいて、シャギーに得することはないだろ? むしろ人狼に積極的なシャギーだ。シャギーが人狼じゃなくて村人である兵士なら、大預言者の暴露はなんとしてでも欲しいところだからな」
「そ、そうよ! あたしは兵士じゃないわ! もっとも、人狼でもないけどね。メガネ、あんた思ったより頭回るじゃない」
「え、あ、ありがと」
女の子に褒められて、なんだかちょっと照れる。
でも照れている場合じゃない。
俺らは大預言者であるキンパツを失ってしまった。
犠牲者が出た悲しみもだけど、このままでは今夜も犠牲者が出てしまう。
そう考えると、冷静じゃいられない。
なんとかして、大預言者抜きで人狼を見つけ出さないと。
「あのさみんな、兵士が誰なのか、そしてなんでキンパツを守らなかったのかって、人狼操作に役立つと思うか? ならそっちから先に話したほうが」
「いえ、もしかすると、無意味かもしれないわ」
言ったのはツインテだった。
「どうしてだよツインテ?」
ツインテは、冷静な瞳で俺を見据える。
「貴方達は、どうして兵士がキンパツを守らなかったのか、って話しているけど、もしも兵士が守らなかった、ではなく、守れなかったのだとしたらどうかしら?」
みんなの顔に緊張が走った。
「え、ツインテ、それって」
「そうよ、もしも既に死んでしまった、アフロとパンク、この二人のどちらかが兵士だった場合、もうあたし達の中に兵士はいない。つまり、自分は重要な職業だから守ってくれ、と暴露するのは自殺行為になってしまう」
ロングが青ざめる。




