俺らは忘れていた。これがデスゲームであるということを。
「ぶはっ、おいシャンタA! 急に何を!?」
あわててシャンタAの胸から脱出してしまい、直後に、もったいなかったな、と後悔してしまう。
「メガネてめぇ、何してやがんだ!」
「え?」
俺が辺りを見回すと、そこは会場だった。
裁判上を模したカジノみたいな内装。
極端に露出度の高いバニーガール姿のシャンタ達がいたるところにいて、俺らを見下ろしている。
裁判長席には、当然、ニャルがいる。
円卓にはみんなが集まっていた。
ハゲ。
オールバック。
ツインテ。
シャギー。
ミツアミ。
の五人だ。
女子達は白い目で俺を見ていて、
男子達は怒りに燃えた目で俺を睨んでいる。
「いや、ちが、これはこいつが無理矢理」
『そうです、無理矢理なんですぅ! メガネ様がいやがるわたくしをてごめにしようとハチ切れんばかりの獣欲をこのわたくしに!』
『うわぁ、これはペナルティ対象ですかねぇ♪』
裁判長席で、ニャルの野郎が腹を抱えて愉快に笑っていた。
「俺は無実だ!」
『解っていますよ。シャンタきゅんにそんな事すれば、メガネ君なんて一瞬でミンチですから。それじゃ、早く席についてください』
俺は気を取り直して、自分の席についた。
顔ぶれを確認すると、シャギーが、
「これで、あとはキンパツとロングだけね」
俺の心臓が、一瞬高鳴った。
昨日の作戦では、兵士はキンパツを守る事になっている。
でも、人狼が大預言者を自称するキンパツを無視する可能性もある。
つまり、今日は誰も死なないか、キンパツ以外の誰かが死んでいるかもしれない。
来ていないのはキンパツとロング。
なら、もしかするとロングが人狼に襲われたかもしれない。
俺の頭を、いやな予感が満たしていく。
続けてシャギーは言う。
「あいつ、まさか」
「みんな」
シャギーが言っているそばから、ロングが姿を現す。
やわらかい足取りで歩み寄り、自分の席についた。
「ごめん、今日はわたしが遅れちゃったみたいね」
よかった、作戦は成功したらしい。
シャギーもホッと胸をなでおろした。
「これであとはキンパツだけね」
『いえいえシャギーさん、これで全部なのですよ♪』
ニャルがにんまりと笑う。
え? だってまだキンパツは来ていないだろ?
ロングが無事ならあとは、兵士に守られているキンパツだけのはずだ。
同じ事を思ったんだろう。
ハゲも、
「おいおい、キンパツは昨日、兵士に守られているんだぞ。あいつが死ぬわけが」
『キンパツさんが襲われました』
俺の心臓が、きゅっと絞めつけられる。
「え?」
『だーかーらー、昨晩人狼に襲われて死んだのはキンパツさんなんですよ』
めまいで頭がぐらついた。
全身の至るところを食いちぎられたパンクを思い出す。
キンパツの死体を想像して、俺はあらためて思い知らされた。
これがデスゲームだということを……
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オールジョブ人狼ゲーム
ルール一
プレイヤーの一日。
部屋で起床。
食事後、会場へ移動。
昨晩誰が死んだのかを確認。
誰を処刑するか議論。
処刑する人へ投票。
最も多く投票された人は処刑。
会場から退室。
自由時間。
夜、就寝。
就寝中、人狼が選んだプレイヤーは死亡。
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