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小心者が往く!  作者: 平坂
1/10

1話

投稿してみたかっただけで続ける気がない。

 




 50年前、アメリカで初めて発見された"ゲート"



 裂け目のように宙に現れたその"ゲート"から這い出てきたのは、見たこともない凶暴なモンスター達だった……







 ゲートの向こうからやってきた残虐なモンスター達。そんなモンスターに対抗手段を持たない人々は逃げ惑うしかありません。


 ゲートから現れたモンスターは今も日本に住み着き、人間を殺そうと機会を伺っています。開いたままモンスターを排出し続けるゲートも少なくありません。

 突如開いたゲートに閉じ込められ、そのままゲートの中で殺され二度と出てこられない人達も増えています。


 モンスターは人間を襲い、食べ、時に攫います。そんな極悪非道なモンスター達と戦い、人々を守るヒーローになりませんか?


 日本ではまだ達成されていないゲート攻略をあなたならば出来るかもしれません!





 今なら無料ジョブ診断中!詳しくはこちら!』










 学校から支給されたパソコンから流れる広告である。




 某人気戦えるアイドルが妙に派手な衣装で告げた内容を完全にスルーし、パソコンのマウスで広告を飛ばすボタンをクリックする。






 ゲート。



 50年前に現れた、正体不明の時空の裂け目。


 向こう側はゲートごとに違う場所へ繋がっており、その入り口のゲートからは出ることが不可能となっているらしく、ボスモンスターを倒すと発生するゲートでしか帰ることができないとされている。


 実際初めての帰還者となったのはアメリカのハンターチームであり、その偉業を成したのは5年前である。つまりは45年間、様々な人間が挑戦したにもかかわらず誰も帰ってこれなかったのだ。


 今でも無人カメラなどを使った調査が行われているものの、内部のモンスターに壊されたり、広すぎて電池が持たなかったり、入口の位置が空のゲートだったりと様々な問題が積み上がっていた。



 時空の裂け目が初めて確認されたのはアメリカだったため、アメリカが定めた「ゲート」という言葉がそのまま使われるようになった。モンスターも同じだ。


 人間を優先して襲うモンスターは人間よりもはるかに強く、当時は意味も対抗手段も分からなかったため当然パニック映画のような状態となった。そこでようやく世界各国で次々観測され出したゲートとモンスターに対抗すべく、どの国も戦力増強に乗り出した。


 もはや賛成反対の問題ではなくなっていたためすぐに可決された。



 そこで役に立ったのがモンスターを倒した時に落とすドロップアイテムだった。

 どの国も、モンスターを倒した際にモンスターが落とす最初のアイテムは同じだったのだ。


 それが"能力判定装置"。

 手をかざした人間の持つ"ジョブ"や"ギフト"といった特殊な能力を、地球に存在しない特殊機能を持つ特殊素材のカードにして排出するものだった。


 各国はこの能力判定装置をこぞって研究し、モンスターから落ちるアイテムをふんだんに使うことでようやく数を増やすことに成功した。

 オリジナルの劣化版ではあるものの、オリジナルにはない判定した能力データを転送して本部で管理することができるため重宝されている。


 日本全国にこのコピー版能力判定装置を設置し、皆小学校入学時に能力判定をするのが義務である。ただ数が少ないので長蛇の列が途切れないと毎度クレームが入るらしい。


 このカード、本人が望めばジョブもギフトも本来のランクより下のものとして表示もしくは見えなくすることが出来る。


 発見当初は個人ステータスとして全て管理しようとしたようだが人権侵害だ個人保護だと反発にあい、最終的には本人による隠匿が許可されたらしい。外国は全員強制管理である、



 そんなこんなの50年。


 当たり前だが人々の生活は変更を余儀なくされた。


 学校や会社は突発して発生するゲート対策により安全を確保できない学区は一年のうち半分以上が通信制となり、登校日は道に警備のためハンターや警備員が立つようになった。


 武器の携帯も法が一部変更となり、紙からデータへと本格的に変更されるなどモンスター云々以外の部分も変わり、職業にはモンスターを討伐するための職業──"ハンター"が増えた。

 50年変わらず男子のなりたい職業1位らしい。


 最近はゲートから大量に湧いたモンスターが別の場所に住み着き、地球で数を増やすという事態になっているためその需要はますます増えている。

 モンスターやゲートへの研究も進む中、モンスターを研究しようと生け捕りにして研究所内で暴れられる割合もまた増えている。



(なりたい職業か…働きたくないなぁ…顔でどうにか楽に稼ぎたいけどモデル、も最近はハンター路線ばっかだしな)



 パソコンの画面を見つめる少年がそっと息をつく。


 毛先だけ遊ぶようにあちこち向いた黒髪、かなり垂れ気味な二重の瞳も黒。ブルーライトをカットする目的で掛けられた眼鏡は少年が瞬きするたび睫毛とぶつかりずれるためいちいち手で直していた。


 男らしい、雄々しいといった顔ではないが顔だけで見れば間違いなく美しい。目元にあるホクロが男らしさというよりも中性的な美しさを引き上げているため男前、という顔ではないが、顔だけで生きていけるタイプなのは間違いない。まぁモンスターがいる現況では少々その価値は劣ってしまうだろうが。


 だが本人も美しさを自覚しているタイプの人間だ。


 少年の視線がパソコンの隣のカードに向く。



 立花 一樹(15)


 ・&#$%*

 ・○○○



 書かれているのはこれだけだ。


 名前以外何も読めない。本来ならば1行目がジョブ、2行目がギフトである。ただこういった例も最近ではかなり稀にだがあるのだ。


 ジョブもギフトも何もない場合は"・"すらなく名前と年齢の下に意味深な空白2列のみの表示となる。つまり少年…一樹のジョブとギフトはないわけではなく、何かの理由で解放できていないということになる。この場合はおそらく何かの能力値が足りず解放できない上級ジョブ・又は努力により何かのジョブになれるかもしれない状態である、とされている。

 ギフトまでもか表示されないのは見たことがないが。


 ジョブは下級から上級まで様々な種類が存在する。


 本来は基礎ジョブと発展ジョブという名前だった。だが基礎ジョブは下級ジョブ、発展ジョブは上級ジョブと影で呼ばれており、結局基礎と発展は下級と上級と呼ばれるようになった。

 発現しやすい下級ジョブとかなり発現しにくい上級ジョブの間には大きな溝が存在する。ジョブ持ちの9.5割は下級ジョブであるのだが、そもそも上級も下級も分けているのは人間のため本当に正しい分類なのかも分かっていないのだ。

 ジョブ持ち同士ですら下級上級で溝があるのだ。ジョブもギフトもない人達とどちらかを持っている人たちとの間にある溝はとんでもなく深いだろう。


 実際ジョブを持っているのは世界の2〜3割程度であり、ギフトを持っているのも1割程度だ。つまり人口の3〜4割程度にしか何かしらの特殊なものが備わっていないことになる。

 ジョブやギフト持ちは持っていない人を見下し憐れみ、何も持っていない人は妬みや恐怖から化け物だと影で罵る。

 持っていてもいなくてもお互い仲良く、なんて無理な話なのだ。


 大体のジョブ持ちは最初から発現しているため特に何かをする必要などない。だが上級ジョブはかなり稀だが学校の部活動程度でも走り込みや筋トレが必要になる場合があり、大会に向けて筋トレをしていたら上級らしきジョブが発現したというパターンもここ数年でごく僅かだが存在していた。


 上級に分類されるジョブとて大抵は最初から発現しているのだ。おそらくよほど偏った能力を持つジョブのみの仕様だろうと言われている。


 実際途中で現れるジョブは今までに無いものがほとんどである。


 何の努力もしないまま数年が経ち、気まぐれに持った剣で戦士のジョブ(戦士は下級のジョブである)を手にしてしまった者もいるため、未解放のジョブ持ちは取り敢えず体を動かす等の努力をしたほうがいいのではないかと言われている。


 それでも解放できないものは何かしらの条件を満たすことで解放されることもある。それはモンスターとの遭遇だったり攻撃だったり、逃亡だったりと様々だ。実際世界中で未解放ジョブを解放させようと様々な方法を取っている。


 だが、中にはそれでも解放できない類のジョブも存在する。


 一体何が足りないのか。


 判明したわけではないが魔力値関係ではないかと言われている。


 筋力や体力ならばまだいいのだが、魔力だった場合はどうにもできない。魔力開花というのはジョブありきなのだ。

 50年前まで魔法が使えなかったように、人間はジョブなしに魔力は使えない。これが下級ジョブ「魔術士」等ならば世界で多発しているゲートやモンスターから漏れる魔力のおかげか問題なく発現する。だが上級ジョブになると足りないのか違うのか、魔法系統の上級ジョブは数が少ない。


 一樹はおそらく魔力が足りない。

 何故ならば今まで散々鍛えてきたからだ。


 どれだけトレーニングを積んでも、どれだけ走り込んでも、ジョブもギフトも反応しなかった。


 勿論素人の頑張りのため限度こそあるだろう。しかし必要な能力値が筋力だった場合は発動に必要最低限の筋力さえあれば開花する。

 実際未解放だったジョブがダイエットでの走り込みだけで開放されだという話は数例だが確認されているのだ。それがないということは筋力値が条件ではないということになる。



(もう諦めて何もないふりしたほうがいいな)



 カードが配られたら人生が決まると言われるほどジョブやギフトは重要だ。

 ハンターになるためにジョブもギフトも必要ないが、上位ハンターや人気ハンターなど注目されているハンターはほぼ全員ジョブかギフトは持っている。どちらも持っている人間は公表されている中ではいないが、どちらかはほぼ必ず持っているのだ。

 一樹はどちらも持っているのに、どちらも解放されていない。


 そもそも未解放のジョブ自体発見が難しい。

 全国に設置された能力判定装置のコピー品だと未解放のジョブやギフトは出てこないのだ。その場合未解放ではなく何もないという判定になってしまう。


 未解放のジョブやギフトを確認するには国内1つしかない大元の能力判定装置を使用するのだが、それはゲート対策本部に一台しか存在しない。



 ゲート対策本部。

 ゲート庁が作ったゲートやモンスターを対処するための組織である。ここに勤めるのはよほどのエリートか、凄腕または希少ジョブを持つハンターばかりだ。ゲート庁にいるのはハンター能力の低いエリート達だが、本部にいるのはハンター能力が高く頭もいい者だけだと言われている。このイメージのせいでゲート庁に勤めている一部のエリート達が腹を立てているらしい。


 大元の能力判定装置だが、その一台はお偉い方々の知り合いや親族が意味もなく何度も能力判定の更新しているためツテやコネがなければ見ることすらできないというのはSNSでは有名な話だ。そもそも大元の能力判定装置から排出されたカードはコピーの能力判定装置と質が違うようなのだが、どこがどう違うかは未だに分かっていないらしい。

 厳重に保管された大元の能力判定装置を使用できる機会など一般人にはないのだ。


 一樹はたまたま本物の能力判定装置を一度使用できた上未解放のジョブとギフトがあった。


 選ばれた人間なんだ、と舞い上がった時期などはとうの昔に過ぎている。幸い筋トレや何やらで忙しかった上通信制だったお陰か直接的な黒歴史は発生していない。

 他の人間とは違うと様々なトレーニングを試した3年間だったため親しい友達もいないが。そもそも警備の関係上登校時間と下校時間が決まっていて登校日の放課後友達と遊ぶなんてことも出来ない。つまり友達が出来にくいという問題も確かに存在する。



(まぁどうせ普通科にしたし)



 ハンターになる人間が通う専門学校がある。

 ハンターを目指すなら是が非でも通っておきたいが、そうでないなら無難に普通科を選択するほうがいい。

 結局華々しいハンターになるのはごく一部なのだ。掛け持ちや兼業、さらには趣味といった輩も多いが総じて小さなゲートから出る弱いモンスターを取り合っている。



(…ハンター専門の学科のないところだし、劣等感もわかないでしょ)



 ハンター専門の学科に通う生徒は身体能力に自信があるか、裕福か、ジョブやギフト持ちばかりだ。若さと自信もあいまり、普通科や無職(ノージョブ)の人々をバカにしたり下に見たりする傾向がある。

 少なくとも一樹にとって関わりたくない人達なのだ。



(…結局、他人なんて理解できないんだろうな)



 机の端にある家族写真を一瞬だけ目に留め、そのまま目を瞑る。






 一樹は幼い頃、ゲートを二度見たことがあった。




 一度目は買い物途中、そして二度目は家の庭。


 ゲート発生寸前には特殊で強力な磁場が発生するため、政府の専門機関──ゲート対策本部により発生場所の予測が立てられる。だがその時は二度とも予測なしにゲートが発生した。そして二度目に出てきたモンスターにより、一樹の両親は死亡した。






 やや難のある家庭だった。


 歳の離れた兄と姉は早々に一人暮らしをすると言って家出同然に出て行き、自身で稼ぐ事が出来ない一樹はそんな家庭の元で生活するしかない。


 些細なことで起こる喧嘩、八つ当たり、号泣、無視を繰り返す両親だったせいで空気を読むスキルばかりが磨かれてきた。ギフトが空気を読むだったとしても驚かないだろう。

 父親は気に入らないことがあると物を投げるくせに小心者で、転勤族だった。母親はそんな父親の悪口ばかり言うのに毎回ついていき、ついぞ離婚はしなかった。

 あなたのためだと言う母親に、俺のためなら離婚してと言ってみたところ無表情で首を横に振られた。


 体良く子供のせいにしているだけ。


 大人だろうが親だろうが、結局可愛いのは自分だけなのだと認識した瞬間だった。


 1度目のゲート発生時は場所が場所のため逃げられたものの、2度目は逃げる場所すらなかった。

 家の中に押し入るモンスターを父親がわざと音を立て外へと誘導し、母親は一樹を頑丈な地下に隠して身1つのまま無防備に外へと向かうことで父親が引ききれなかったモンスターの注意を引いた。


 助かった一樹に残されたのは両親らしき残骸と、無残に壊れた家だけとなっていた。今でも食い散らかされた両親の骨や肉片を思い出す。たいした思い入れこそないが、少しの寂しさと疑問ばかりが残っていた。



 自分のことばかりだった人たちなのに、どうして。



 当時の一樹には理解できず、ただ呆然とした。

 今でも理解できないだろう。ハンターやゲート対策の職員に立派な両親だと口々に褒められ、そんな人達じゃないと言える空気でもなかった。どうしていいのか分からず立ち尽くすだけだった。


 兄は居たが歳もそこそこ離れており、その時点で結婚間近だった。

 一樹とは違い両親に顔が似た兄だが空気が読めない方だった。簡単に言うと一樹以上に親と仲も悪かったのだ。一樹も保護を受けるから気にしなくていいと兄との同居話は断った。残念ながら一樹は新婚の家に割り込めるほど空気読めなくはない。

 姉もいるが、姉と暮らすのは嫌なので普通に断った。姉個人が嫌というより、姉という存在自体が弟という存在にとってあまり良いものではない。






(そういえば俺が生まれた日にもゲートを見たって自慢してたよな)



 病院の側だったらしく、病院も被害を受けるなど大変だったようだ。

 見たからこそいざという時の対処法を考えていたのだろうか。だが自分が同じ状況になったら、同じことはきっとできないだろうとその考えを中断した。


 予測できなかったゲートの出現による死亡事故だったため、一樹は特殊制度により高校卒業までにかかる学費や生活費等全て免除された。

 その際訪れたゲート対策本部での空き時間、職員に良いと言われた一樹は国を挙げて作ったコピーの能力判定装置ではなく本物の能力判定装置を利用した。そこで発覚したのが文字化けしたジョブとギフトだったのだ。


 コピー品ではない大元の能力判定装置には、本部のコンピュータに能力データが送信されない。

 モンスターからのドロップアイテムに新たな機能は追加できなかったからだと言われている。その時自分から職員に報告していれば一樹は無職ではなく未解放状態という扱いになっただろう。


 一樹はそれを職員に報告しなかった。


 わざとではない。今度はモンスターを倒せるかもしれないと自己完結してしまっただけである。無意味な期待を他人に抱かせなかったのだから結果として報告しなくて良かったのかもしれない。


 ふと意識を戻すと、いつ付けたかも忘れていたテレビからニュースが流れている。



『鷹司事務所社長の鷹司 浩司さんが日本に到着しました。今年4月にハンター育成の名門である岩倉高校に入学を控えたご子息のこともあり、今年のハンター科は賑わう予感がしますね』

『そうですね。岩倉高校も素晴らしいですが巽高校も最近実績を上げているそうです。全国ハンター科選手権が待ち遠しいですね』



(…はぁ、なーんでこのタイミングでそんなん流れてくるかな全くもー……そろそろ準備しよ……)



 ハンターが急激に出てきたからといって今までの仕事が全てなくなったわけではない。

 飲食関係や製造業、配送の仕事もたくさんある。むしろハンター関係の武器防具の関係で仕事が増えたくらいだ。テレビは派手なものほどウケるためハンター関係の仕事ばかりを取り上げるのだから仕方がないと割り切りつつもテレビを消す。そしてその腹いせにリモコンはベッドの上に投げつける。


 こういう時咄嗟に投げた物が壊れぬよう考えてしまうため腹いせが全く出来ず不完全燃焼になるのだが。


 カードを手に取り、ポケットに突っ込んでからパソコンで入学式の時刻を確認する。カードは基本的に肌身離さず持っておくのは常識である。

 このカードは身分証と財布と貯金を兼ねているため持ち歩くようにと小学生から習うのだ。落として誰かに拾われ使われそうになったとしても本人確認が取れないため使えないのだが。


 ちなみにこのカード、ハンター登録の際にも使用する。ちなみにハンター登録時に名前は自分の好きなものに変更できる。所謂ハンターネームというものだ。


 基本ハンター登録が出来るのは20歳からだが、ハンター科の生徒や伝手コネのある場合は15歳から登録可能だ。伝手コネさえあれば本名や個人情報を知られず登録、なんてこともできるらしい。



(えーと、10時に集合か。ならその日は念のため7時起きにしと───こっ?)



 突然椅子が不安定になり、なぜか真下に沈む。


 ゆっくり、緩やかに、しかし確実に沈んでいる。



(……え、な……なに?)



 驚きのあまり固まってしまった身体は動かない。仕方なく視線だけむりやり下を向けると、なんと赤黒い光が椅子の真下───床から発生していた。

 赤い光の中を黒い点が絶えず動き回っている。


 瞳が開くように怪しい光の中心部に亀裂が入った。


 見たことがある。


 記憶の中のゲートと似た光。

 背筋を走る怖気にも似た感覚を感じた瞬間、一樹の身体にかかっていたはずの重量が消失した。



(───こ、れっ……ゲート、……ヒョエッ)



 情けない声すら漏らすこともできず。



 一樹は椅子と共に着の身着のままゲートの中へと落下した。




ありがとうございました。

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