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1話 桃華の異世界転移

 「最後に、お兄ちゃんにもう一度会いたかったな………」

 迫り来る死と1本の水の刃が私のめがけて飛来してくるのをただ呆然と眺めこの最後の願いを口からこぼすことしかできなかった。



 数時間前……。

 矢樹桃華が帰宅中にそれが起こった。

 ふと、桃色に透き通った石を見つけ綺麗だなぁと思いながらそれを手に取ったとき、石は光を放ちながら彼女を包み込み数十秒後彼女の存在と共に石は彼女を飲み込んだ。

 

 気がついたら私は森の中にいた。

 さっきまであった見知った家々は木に変っていた。

 私は意味が分からずただ呆然と立ち尽くしていると木々を通り抜けざぁーっと共に冷たい風が私の肌を触りながら吹き抜けていった。

 まだ夏だというのにこの寒さはおかしい。

 とりあえずこの寒さを半袖で凌ぐことはできそうにないので私はどこかいいところはないかと思い歩き始めた。

 森は上を見上げても背の高い木々が邪魔をして空が見えない。

 森の中は薄暗く森の先は真っ暗で何も見えない。

 私は迷った末、真っ直ぐ進んでみようと思い歩を進めた。

 一応地図は使えるのか持っていたスマホの電源を入れてみたのだが何故かスマホは黒い画面のまま動かなかった。

 充電はしたはずなのだが。

 

 数時間たった頃。

 私は歩き疲れて木にもたれ掛かっていた。

 この森は高低差はほぼないのだがいくら歩いてもずっと同じ景色が続いていて足も痛くなってきたので休憩することにした。

 森はずっと真っ直ぐに進んでいても景色は変わらずまるでその場から動いていないように感じさせるほど広かった。

 「どうしよう…寒いよ……」

 相変わらず冷たい風が私の肌をなでふき去っていく。

 足は疲れ身体は震えお腹が空いた。

 朝の暖かくなるまで待とうとも何度も思ったが、今が夜中なのかすら分からない。

 何かを食べてお腹を満たしたいが周りを確認してもそのような物は見当たらない。

 歩くしかないのか……。

 そう思いよろけながら立ちまた歩きだす。

 少しの間休んだから足の疲れは少し治ったような気がした、がもしかしたら空腹感の方が勝って痛みをあまり感じなくなっただけなのかも知れない。

 右足を前にだし左足、右足………、ずっと歩いていると自分が今何足を出しているのか分からなくなってくるほど、空腹とともに沢山の距離を歩いてきたと思う。

 いつの間にか私は月明かりに照らされ輝いている湖が見えるとこにたっていた。

 森を抜けた。そう思った私は足の力がいきなり抜けてその場に膝をついた。

 そして、気づいたら泣いていた。嗚咽を漏らしながら足が痛い、お腹が空いた、暗くて、変な鳴き声が聴こえて、一人で怖かった。

 と、抑えていたものが溢れてきてこぼれ出した。

 

 ひとしきり泣いたあと私は、湖の辺りまで歩いて行った。

 湖は月明かりで水面がキラキラと輝いておりその中央には小さな陸があった。まるで夜空に浮かぶ三日月のように。

 辺りまで歩いてくると白い砂浜が待っていた。

 白い砂以外はなくふるいで砂だけを綺麗に落とされたように、ゴミなどはなく綺麗だった。

 水面に写り込む自分の顔は、目の下が赤く腫れていて頭には葉っぱが1枚一枚ついていた。

 その葉を頭から払い、湖の水に手をつける、

 「冷たっ!」

 湖の水は冬の川の水のように冷たく、一瞬で手の熱を奪っていった。

 だが、湖の水は冷たかったが水自体は透明でゴミとかはなく綺麗だった。

 「飲めるのかな?」

 人の手が加わってない水を飲むのに、少し抵抗はあったか喉が少し渇いているから一口なら大丈夫かな?と考えこんで、私は水を手のひらを器のようにしてすくい口元に持っていった。

 くんっ。

 匂いはなさそうだな。

 ごくんっ。

 そのまま私は、冷たい湖の水を喉に流し込んだ。

 「くっ、冷た〜」

 喉の奥に落ちていく水が、喉の壁を伝って降りていったためめちゃくちゃ、くっ。てきた。

 ちなみに味は普通の天然水のような感じだった。

 その後私は、靴と靴下を脱ぎ素肌を外気に晒しながら冷たい湖の水の中につけた。

 「ひゃぅっ」

 疲れきった足を冷やすために足を突っ込んだのだが、あまりにも冷た過ぎてすぐに足を出してしまった。

 だから、足を砂浜の上に置き足首に手で掬った水をかけながら私はこの先のことを考えていた。

 「このあとどうしよう…」

 靴下を履き靴を履いた私は、立ち上がりそうぼやいた。

 

 湖の周りを一周してみたが食べ物はおろか木以外何もなかった。

 どうやらこの湖の周りは木々で囲まれているようだ。

 ぐぅーーー

 「お腹空いたよー」

 私は空腹に耐えきれず最初に湖の水に触れた場所まで戻ってきてヘナヘナとへたれこんだ。

 夜はまだ明けず月が登ったまま。

 「月…動いてない?」

 砂浜に仰向けに転び月を眺めているとそんなことに気づいた。

 森から抜け初めて月を見た時からだいぶ時間は立っているはずなのに何故かその場から動いていない気がする。

 そんな時に森の方から葉っぱと共に冷たい風が吹き抜けた。

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