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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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五十一頁    犬 捌   『犬猫探偵団』

 五十一頁

 

 犬 捌

 

『犬猫探偵団』

 

 ゴールデンウィーク明け、女神は普通に登校して来た。

 

 えぇぇぇぇぇっ? 警察に突き出すんじゃ無いの? みんな、殺されそうになってたんだよ? それ、お咎めなしなの⁉︎

 

 あたしは、一番の被害者で、一番女神を嫌ってる筈の小鳥に、休み時間トイレで席を立った時に付いて行って声を掛けた。

 

「ねぇっ? ちょっと!」

 

 小鳥は、つまらない物でも見るかの様な目で、あたしを見て言った。

 

「何か用?」

 

 お前、絶対友達出来ねぇよ。

 

「いやっ、何で女神普通に登校してんの? あんたそんな酷い怪我負わされてんのに!」

 

「だからなに?」

 

「だからなにって……け、警察に、被害届とか出さないの?」

 

「なんで?」

 

「え、えぇっ? なんでって……」

 

「なんで警察に突き出したいの? それって、お前の私怨混ざってない?」

 

「あたしはただ、小鳥が、その……」

 

「私が何? お前が文句あるなら、お前が三上に言えよ‼︎」

 

 やっぱ怖ぇよコイツ。敬語にした方が良いな。関わるのやめとこう。

 

「あっ、冗談でした。ゴメンなさい。リアル過ぎましたかね?」

 

「冗談? どこに笑う所あった? リアル過ぎ? 何処ら辺がリアルな訳?」

 

 ヤバッ、捕まった。

 

「いや、忘れてくれていいから! 気にしないで、下さい……」

 

「お前の言うリアルと私のリアル、どうも行き違ってんなぁ? ちゃんと、話し合わなきゃねぇ?」

 

 は、は、離してくれない‼︎ しかも、何か言ってる事よく分かんない‼︎

 

「も、もう! 休み時間終わるから、教室戻るから!」

 

「お前のリアルの中に私は居るんでしょ? その中で私は、どう振舞ってる⁉︎ どんな立ち位置に居る⁉︎ 猫ちゃんは、私の事、見てくれている?」

 

 はぁーい、ヤバいの確定! リアルって言葉が、パラレルワールドの様な意味合いを持ち始めたんだね?

 

「知らない! あたし知らないから! 猫宮の事とか知らないし、女神を放っておくなら話し終わりだから!」

 

「猫ちゃんの事知らない? そんな奴が、何で猫ちゃんの傍に居んだよ⁉︎ 猫ちゃんの傍に居れる奴は、猫ちゃんを心から愛し! 猫ちゃんを守っていける奴しか居ちゃいけねぇんだよ‼︎」

 

 ご、ご立腹だァァァァァァア! ただ、その理論だと、猫宮と友達になり得るであろう人までふるいにかけられる事になるんだけど? 猫宮にとっちゃ、ありがた迷惑だと思うんだけど? みんな、友達になる事をそこまで大事に捉えて無いんだよ?

 

「わ、分かりました。時間取らせちゃってすいませんでした……」

 

 もういいから、この場を離れたかった。

 

「何でお前、敬語使ってんの?」

 

 ヒィィィィッ! 駄目なの⁉︎ 敬語逆鱗なの⁉︎

 

「いや、なんてか、その、アハハ……」

 

 何が可笑しい⁉︎ あたし、何が可笑しくて笑ってんだ⁉︎

 

「まぁお前とは友達でも無いし、どうでもいいや」

 

 小鳥が、背を向けてトイレから去って行った。

 

 切り抜けたぁ! ってかアイツ何なの⁉︎ クラスメイトかよマジで? 謎あるわ、怖ぇわ、仲良くなんて出来ねぇよ!

 

 このクラス、変な奴多すぎだろ⁉︎ まともなのあたししか居ねぇじゃん! いや、兎咲あたりもまぁ普通っちゃ普通か。天使除いて、よく絡む奴ら、全員異常だな? あたしは、別にスクールカーストの上位に位置したい訳じゃ無い。高校生活なんて、中の上くらいで過ごせりゃいい。一瞬、女神のグループに、なんて夢もみたが、あんなヤベェ奴と仲良くするとか、両親が悲しむ様な交友関係持ちたく無い

 。

 どうすれば良い? あたしが、何の気掛かりも無く過ごすには、どんな人間関係を築いて行けば良いんだよ……

 

 放課後になり、いつも通り猫宮に声を掛けられた。

 

「へへ、それじゃあ、一緒に教室を出るんだよ?」

 

 へへ、じゃねぇよ‼︎ この地獄先案内人が! コイツだ、コイツのせいだ! コイツと関わったせいで、あたしはこんな稀有な目に遭っている!

 

 小鳥を寄せない為に、一緒に教室を出るのだが、もうあたしにそれを続ける意味など無かった。

 

 校門で別れる際、猫宮に言った。

 

「今日で最後ね」

 

 そう言うと、猫宮は何が最後なのか理解していない様なリアクションを取った。

 

「へっ? ヒヒッ」

 

 何が可笑しい? ちゃんと説明してあげよう。

 

「今日で一緒に教室出るの最後。そしてもう、話し掛けないで? あんたの周りに居る奴、変な人ばっかりじゃん?」

 

 猫宮と、縁を切りたかった。でも、可哀想だったから、猫宮が原因って感じには言わない様にした。って事で、さよなら。

 

「へっ? 話し掛けちゃ駄目なの?」

 

 そうだよー。もう二度と、あたしを変人だらけの世界に招かないでねぇ。

 

「話し掛けないで。もうあんた達と関わり合いたくないから」

 

 あたしは猫宮に背を向けて、帰り道を歩き始めた。

 

「わ、わんちゃん! ね、猫の味方で居て欲しいんだよ……」

 

 あのさぁ……一度でもあんたの味方として動いた事無いんだけど? どんだけ頭の中お花畑だよ?

 

「自立しなよ! いつまでもあんたの尻拭いやってらんないから!」

 

 足早に帰り道を歩きながら言った。猫宮がついて来て、何度も語り掛ける。

 

「わ、わんちゃんには味方で居て欲しいんだよ。猫が気に障る事したのなら謝るから、機嫌を直して欲しいんだよ!」

 

「あたしは機嫌が悪い訳じゃ無い。フラットな精神であんたと縁を切ろうとしている」

 

「何故猫を切るか! わんちゃんの不都合になる事などした覚え無いんだよ!」

 

「山程あるわ‼︎ 急に泊まりに来たりしたし、あたしの歯ブラシ使いやがって! 思い出したらイライラして来たわ!」

 

「ね、猫は謝ったでは無いか! わんちゃんは、その事を今更掘り返すか?」

 

「いや、今更とかじゃ無くて、許したとか言って無いから!」

 

「まだ根に持っているか⁉︎ その時、天羽を連れて来てあげた猫の裁量でプラマイゼロにはなら無いか⁉︎」

 

「そうしてやっても良いけど、あんた、あたしの天使への想いバラそうとして脅して来ただろ⁉︎」

 

「そ、それは! 確かに‼︎」

 

「そんな奴信用出来ねぇ。友達でもなんでもねぇよ。去れや、家反対だろ!」

 

「も、もう、その事で脅したりしないから……」

 

「お前の様な変な奴の言葉を、そっくりそのまま信用出来る訳ねぇだろ‼︎」

 

「へっ? 猫は変な奴なの……?」

 

「変な奴だよ‼︎」

 

 ヤバっ! 流石に可哀想だったかな……

 

「アハハ」

 

 何が可笑しい? やっぱ変な奴でした。

 

「ってか、何であたしと仲良くしたい訳? 他の奴で代用しろよ!」

 

「わんちゃんはたん……わんちゃんは優しくて、あつかいや……器用だから、傍に居て欲しいんだよ」

 

 お前、何回か言葉詰まったなぁ? たん……って、単純って事? あつかいや……は、扱い易いから以外無いわな?

 

 あたし、猫宮に随分と舐められてたんだな……

 

「マジ帰れよ……」

 

「へっ?」

 

「帰れよ‼︎ お前ん家こっちじゃねぇだろぉが‼︎」

 

「な、何怒ってるの? わんちゃん?」

 

 ここまでであたしが怒ってる理由分からないのこの子?

 あたしは立ち止まって、猫宮が帰るのを待った。すぐ先の十字路を右に曲がれば我が家だったから、その前に猫宮に離れて欲しかった。

 

「……イッ⁉︎ イィィィィィィィィィイッ⁉︎ ヒッ? ヒィィィィッ⁉︎」

 

 なんだどうした? 急に悲鳴上げやがって。

 

 猫宮が指をさした十字路の方向を見てみると、右側の道から、兎咲が首輪をして四足歩行で歩いている姿が見えた。

 

「えっ⁉︎ はっ⁉︎ なっら⁉︎ なに? ナニコレ⁉︎」

 

 兎咲はあたし達の声が聞こえたのか、こちらを振り向き、一瞬で顔が青褪めた。

 

「う、うさちゃん……あ、あの子、何やってるの?」

 

 あたしに聞かれても……マジあの子、何やってんの?

 

「なに余所見してんだよ‼︎ さっさと歩きな!」

 

 兎咲の手綱を引いている奴の顔が見えた。

 

「ア、アイツ……」

 

「わ、わんちゃん知ってるの?」

 

「鬼釜尚子だ……隣のクラスで、何か、名前と顔だけは覚えてる……」

 

「お、鬼釜⁉︎ そ、そんな物騒な苗字の女が我が学校に居るのか⁉︎」

 

 ナニコレ? 怖ぇ。怖いけど、面白そう……な、謎を、解き明かしたい! 何故、兎咲が首輪を付けて散歩させられていたのか、理由が知りたい!

 

 ってか、あんなんめっちゃ目立つでしょ? 散歩させてる側もリスクデカくない? それを厭わないとは、はぁ、はぁあ! ますます、益々謎深まるわ‼︎

 

「猫宮? 二人で、あの謎解き明かそう?」

 

「はっ? わんちゃん! 猫と寄り戻してくれるの⁉︎」

 

「しょうがないから、あの謎解くまではね」

 

「犬猫探偵団、発足ですな!」

 

 そんな探偵団、発足するつもりありません。

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