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2/5

いきなりの追放

前回のあらすじ

ただの世界観説明

2015年に人類は負けたことだけ把握して欲しい

 夜、焚火を囲んでいる者達がいた。彼らは霧の魔物討伐隊の一部隊であり、先日とある森にて魔物が発見されたことでそれの討伐任務が発生し、目的地に向けて移動している最中であった。

 夜になったため彼らは休憩し、あるおしゃべりな隊員が先の事を話し始めた。

 先の話を要約すると、昔スペインという国で大規模な戦闘があり、人類がそれに敗北し、それ以降負け戦が続いているが、それでも俺達は諦めない。というものだった。

 他には鎧や冒険者、大規模な魔物の侵攻の話があったが、それは雑学の1つとしてとらえていいだろうと、この物語の主人公、クラム・バレーは判断した。


 彼はこの隊の中でも一番若く、新入りで、その実力はこの部隊において最底辺である。

 彼は得意な戦い方というのをまだ確立していなかった。そのため、部隊の様々な隊員に戦い方を教わっていたが、それをやりすぎた結果、器用貧乏に育ってしまった。しかし、そんな彼にこの部隊の隊員達は優しかった。

 彼は未だに戦闘力は低かったが、他の隊員は自分たちのサポートをするよう彼に伝えていた。

 例えば、近距離で戦う隊員へのサポートとしては、少し離れた所にて魔法での援護射撃、他の敵の動きの伝達、回復や付与の魔法での援護等。遠距離で戦う隊員へのサポートとしては、近距離での防御や、遠距離魔法の攻撃の追撃等がある。


 しかし全てを補うことはまだできないため、守られることも多い。だが彼は自分で行えることをひたむきに行い、そんな彼のすることに隊員たちは感謝していた。


 まだ自分は弱いけれど、これからも頑張って強くなることで、みんなから守られるのではなくみんなを守ってみせる。

 彼はそう考えながら日々を送っていた。

 そんな彼だったが……


 「クラム、お前は今回の任務が終わったらこの隊を抜けろ」


 この隊の長であり、攻撃を一身に引き受ける盾役である男、ラグナは、彼とクラム以外が寝静まり、その見張りをしている最中にそう告げた。


 「……え?」


 何を言っているのかクラムは理解できなかった。普段の冗談を言わない彼からは全くと言っていいほど違う雰囲気で、否、魔物と対峙した際の真剣で、冷酷な雰囲気を彼は放っていた。


 「は、はは……ラグナ隊長、何言ってんるんですか。まさか、隠れて酒でも飲みましたか?」


 引きつった笑顔でラグナの手元を覗き込む素振りをする。しかし、酒類が入った容器が辺りに無いのは先ほど確認していた。それに、これが酔って出た言葉であっても、それは普段真面目な彼が普段考えていることが口に出たに過ぎないというのは、彼と過ごした日々で分かっていた。

 酒を飲むと普段思っていることが口に出るような彼を、彼は数ヶ月間見てきたからだ。


 やだなあ


 「変な冗談は「冗談ではない」っ…………」


 クラムは黙る。お前も分かっているだろと言わんとする眼差しが、彼にはとても毒のように感じた。


 「お前はこの隊に貢献していると思っているだろうが、実を言うと全く貢献していない。サポート役だなんだ言って皆がお前をそばに置いてはいるが、実は皆、お前がいない方が良いと考えている」


 つまり


 「お前は役立たずなんだよ」


 役立たず。

 クラムの中でそれは何度も響き、気が付いたら視界がぼやけていた。俯くとそれは解消したが、代わりに彼の拳に水滴が落ちた。この時彼は初めて涙が出ていたことに気が付く。


 ラグナの顔はもう見れない。見るのが怖いのだ。


 暫くの沈黙。それを破ったのは寝返りをうった際に目を覚ました女の隊員だった。


 「んん~?ど~したの~?」


 女性隊員の名はスズ。親が日本人の遊撃担当の弓兵だ。いつも軽く受け流すように人と接するが、その弓の腕はかなりのものである。彼女はそのことに誇りを持っているらしく、他人から何か言われても軽く流すが、弓の腕をけなされると途端に人が変わったように口喧嘩を始める。そんな人物である。


 彼女なら自分を庇ってくれるかもしれない。

 一縷の望みをかけてクラムは彼女に先程の事を説明し、彼女に自分をどう思っているのかを聞いた。

 そして後悔した。


 「ん~…ごめん。私もクラムについてはそこまで役に立ってないと思っていたんだよね~」

 いつものように軽くそう言われた。


 彼は何も言えなかった。

 ごめんね~。と謝る彼女の言葉は耳に入らず、全ての事がどうでもよくなっていた。


 「そうでしたか………すみません……そんなに自分がいらないのでしたら…見張りも役に立てそうにありません……ごめんなさいスズさん。今から変わってくれませんか」


 「……いいよ~」


 スズがそう言ったのを聞く前に、彼は就寝用の布を荷袋から取り出し、寝転がっていた。

 彼が少しだけ彼女の顔を見ると、目が合ったが、直ぐに目を逸らされた。

 それは、自分に対して無能だから顔を見たくないという意識の表れなのだと彼は思い、悲しくなって涙を堪えながら眠りにつく。それなりに疲労していたためか、直ぐに睡魔はやってきた。


 「……ばーか」


 彼が耐えられない睡魔に意識を手放す直前、彼に向けてのスズの罵倒が耳に入ったが、それを気にしないことにした。



 次の日の行った任務は無事に終わった。任務中と帰りの間はクラムにとって地獄であったが。

 今まで共に戦った仲間が本当は自分を必要とせず、むしろ邪魔だと感じながらいたということが、彼にとっては辛かったのだ。任務中は思うように体を動かすことができず、再び仲間に守られがらその戦いを生き延びた。皆、自分が動かない分普段より動きが良かったように感じた。


 (任務の報酬はいらない。街に帰ったら直ぐに脱隊しよう)


 そう思いながら帰りの道中を歩いていた。そんな彼に対する視線はとても痛かった。


 本来ならば街に到着した隊は本部に行って、その任務完了を報告をした後、報酬を受け取るのだが、彼は報告が終わった後にその場を離れた。そして、部隊を編成している者達がいる部屋に向かった。


 「そうか、脱隊か」

 「はい」

 「わかった。もともと隊長のラグナから報告は受けている」

 「隊長から…?」

 「そうだ。君は先の任務が終わった時に抜けるだろうと相談されていてな。もし君が脱隊するのであれば、君を頼むと言われたよ」

 「……そんな施し、いりません」


 クラムは本部から出ると、自分が住む家に向かった。

 その際、先程の会話を彼は頭の中で反復させていた。

 『君を頼むと言われたよ』


 (何が頼むだ…!)


 奥歯を噛みしめ、拳に込める力を高めながら歩く彼は、彼とすれ違う者達を皆驚かせるのだった。


 家に帰った彼は、無事に帰ってこれたことの喜びよりも、さっさと眠りたいという思いのもと、ベッドへと向かってダイブし、涙を流しながら眠りにつくのだった。


補足

魔物討伐には以下の

盾役のラグナ

遊撃役のスズ

近距離戦闘役のダリル

遠距離戦闘役のマリン

サポート役のライラ

ヒーラー役のナイン

オールアラウンダー(補助)役のクラム

がいる。

ラグナは金髪で青紫色の鎧を着て、大きな盾を持つ男である。年齢は29歳。

スズは茶髪で緑色の彩色の服を着た女である。年齢は26歳。

クラムは黒髪で、白茶色の服を着た男である。年齢は17歳。

ナインは赤毛で白を基調とした服を着たおしゃべりな男である。年齢は28歳。前回世界説明をしてくれた者である。メンバーの中では1番ラグナと一緒に行動を共にしてきている。

他のメンバーについても後々説明していく。

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