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5・スライムってこうやるのがド定番だもんね

 さて、そう言う事でメイドが3人増えることになった。


 名前を聞いてみたが、猫獣人はバルナ、犬獣人はフェケテ、狐獣人はスーケというらしい。


「さて、3人にはスライムの研究を手伝ってもらいたい」


 そういうと、当然絶望したような顔となった。


「言いたいことは分かる。だが、そこまで危険があるとは思っていないんだ。それを証明したい」


 そう言って納得するはずもなく、僕はマチカを説得して実験に立ち会う事にした。


 兵士長を呼んで数人護衛を頼み、川へと向かった。途中で館に居る下男に陶器製のオマル(汚物入り)を持ってこさせるように言付けて、人数は先日よりかなり増えた一行で向かう事になった。


「お館様、本当に大丈夫ですか?」


 オマルを河原へと置き、下男が不安そうにそう言う。大丈夫だと答えてみたが、彼や兵士は少し下がって行く。僕が網を渡した3人娘は意を決して川へと向かい、スライムを掬ってくる。


 スライムと言うからプニプニしたあの形を想像したが、これゴミじゃね?いや、デカイアメーバって感じではあるけど。所々緑なのは藻でも食べてたんだろうか。


「それをオマルに入れてくれ」


 そう言うと、網を持ったスーケがオマルへとそっとスライムを投入した。すでに3人は死んで良いという感じだろうか。マチカが僕を引っ張って逃げようとするが動かなかった。


「イシュトヴァン様、危ないですって!」


 マチカが涙目でそう言う。実に可愛い。


「見てみなよ。ほら、瘴気を出してない」


 僕はオマルを指さしてそう言う。だが、僕以外は一切警戒を解く気配がない。


「3人はそのオマルを観察して記録をつけてくれ。どのくらいで汚物を消化したか、瘴気を出すか否かを出来るだけ詳細に」


 僕もしばらくその場にとどまり、3人に記録の付け方などを指示していく。もう、マチカも兵士や下男のところまで逃げている。


 結局、翌日開門と共に観察に行った3人組がすぐさま帰ってきて、汚物をすべて吸収して、スライムは茶色くなり、オマルには水らしきものが残るだけとなっていたと報告してきた。


 そこで、まずはその水らしきものを調べるために銀匙を持たせて毒性を調べてもらった。


 僕の予想通り瘴気も出ていなければ毒物も出してはいない。


「たった1日でここまで綺麗になったんだ。スライムを使っても問題ないと思うよ?」


 そう言ってみたが、まだまだ疑念があるらしい。


「一匹だったから瘴気や毒が少なかったのもしれませんよ。複数匹でならば・・・・・・」


 口をそろえてそう言うので、水がめを用意させ、スライムを増やして実験してみたが、瘴気や毒を出すことは無かった。



 それでも信じられないというので一月近くスライムを増やしたり吸収させる物を変えてみたりと実験をしてみたが、何の問題も出はしなかった。


「問題なかっただろう?」


 そして、文官たちにもその結果を見せ、街の汚物処理方法を検討するように指示を出した。


「汚物を道や庭に捨てずに回収する。回収したモノは川岸へ集めてスライムに吸収させて川へ流せばいい。回収方法や集積地の選定を頼む」


 お飾りとはいえ、辺境伯家の四男の言葉を無視するわけにはいかず、それから数日掛けて検討が行われることになった。


「イシュトヴァン様。これで如何でしょうか?」


 さすがに下水道整備とはいかなかったが、オマルの中身を窓から捨てるのを止めさせ、回収用の瓶を用意して、適時回収して回ることになった。

 処理場は川岸となり、肥溜めの様に瓶を土に埋めて、中へとスライムを投入するという。


「排水はどうするのか?いっそ瓶を繋いで複数個をひとつの処理槽となる様にしてみてはどうだろうか」


 浄化槽や沈殿槽という前世知識を彼らに教えて検討させてみたところ、まずは実験という事で、3人衆を責任者とした研究チームが発足することになった。


 一槽と二槽は下部で繋ぎ、三槽を上部で繋ぐ形状のモノを作って実験する事一月ほど。スライムの数や汚物投入量などの基準が出来上がり、実用設備の建設へと駒を進めることになった。


 その間、僕はせっせと必要な網や鍬や鋤といった道具を作っていた。そう、あの魔鋼とかいう素材にして。 


「作業に便利な道具も作っておいた。使ってくれ」


 作業に携わる者へとそれら道具を配るよう3人衆に頼んで持って行かせる。


 浄化設備の完成には2か月もかかったし、それから街へと汚物集積や回収を告知して徹底させるのには半年も要した。

 街が綺麗になるのは僕がこの街に来てから1年後という時間を要しはしたが、街から異臭がしなくなったのは非常に良い事だった。


「マチカ、これで路地から異臭もしないきれいな街が出来ただろう?」


 僕は街の視察に赴いて胸を張ってそう言った。


「本当に。イシュトヴァン様は凄いです!」


 マチカの笑顔が何よりの報酬だな。


 こうして街の汚物処理事業が行われ、3人衆は読み書きが出来る事から汚物処理の文官として毎日忙しくしている。

 そうそう、あの商会との付き合いは今も続いている。汚物回収を行う人員を彼に依頼して街で購入したんだ。

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