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2・ここは見事に中世ヨーロッパ的などこか

 僕のやる事は特にないというので、スライムの件を少し調べてみたい。


「イシュトヴァン様、どちらへ?」


 マチカが僕について廊下を歩いてくる。


「街を見ようと思う」


 そう言うと、馬車の準備がどうのと言い出した。


「マチカ、実際に歩いてみたいから馬車は必要ない」


 どこかへ行こうとするマチカを呼び止めてそう言うと、付いて来ると言いだした。それは仕方がない。ついでだから街の兵士に案内でもさせるか。


 そう思って役人へと声を掛け、視察について来る兵士を募った。


「いや、こんなに要らないぞ?それとも、ここではフニャディの人間は襲われでもするのか」


 そう言うと、兵士長だという人物が出てきて言う。


「いえ、マーレタティはそのような治安の悪い場所ではありません。しかし、今日初めてお越しになった代官殿を少人数でご案内するのは失礼にあたると思い、部隊を用意いたしました」


 そう言ってくるので、街の実態が知りたいだけだから少数で良いと再度言い聞かせ、兵士長と他数名だけを連れていくことになった。


 街はものの見事に中世風異世界の街並みである。


 レンガ造りと思しき街並みがメインストリートに立ち並び、そこから奥を覗くと雑然とした世界が広がっている。


 そして、風ではなく中世ヨーロッパらしい不衛生さがそこにあった。


 いや、領都ですら今思えばこんなだった気がする。前世記憶があるから不快さを感じているのかもしれない。


「どうも、獣人が多いように見えるが?」


 街へ出て、通りを歩いているとその多くはケモノ耳を持った人々だった。誰も彼も老若男女が整った顔立ちという言おうか、綺麗や可愛いと言ってよさそうだ。


「はい、ここは魔人支配下に近いため、多くの獣人が流れ込んでおります。我が国における獣人の多くは、魔人の国を祖としておりますので」


 そう言えば、そんな話を習ったような気がする。魔盆地より南方に栄える魔人の国から多くが流れてきている。

 習った歴史によると、魔人たちは獣人を自身のオモチャとして扱っていたらしく、そこから逃げてきたのが我が国の獣人らしい。

 獣人と言うと様々な種族が居そうなものだが、基本的に犬猫狐らしい。


 そして、野生の獣人は前世で言うコボルトの事らしい。ゴブリンはというと、体は緑ではなく普通に毛が生えた魔物で、いわば、猿?みたいなものだと習っている。ただ、気を付けないといけないのは、ゴブリンは固有魔法として水魔法を使うので、ザコ扱いしていると痛い目を見ると教えられている。コボルトはすばしっこいだけらしいので脅威ではないし、そもそも人間を襲ったりはしない。だから飼いならされて、いつの間にやら魔人と交わって獣人になったのだと言われている。コボルトを見た事ないので何とも言えないが。


「それでか、領都では獣人の職人など見ることが無い」


 先ほどから大柄な犬獣人の男が荷物を運び、猫獣人の小柄な男が身軽な動きで何やら作業をやっている。


 領都では多少の使用人なら見ることはあるが、ここまで普通に街中で見かけることは無い。


 街門を出るとそこは畑が広がっている。主に栽培されているのは麦だ。何麦かまでは分からないが、パンになるのだから麦だ。多分。


 そして、街壁から少し離れると川がある。なかなかに大きな川だが水は澄んでいる。前世知識からするとそれは不思議な事ではないが、ここでの常識からすると少々不思議だ。


「川が澄んでいるな。領都近くの川は茶色なんだが?」


 確か別の川だったと思うが、この川と合わさり、更に大きくなって王都へと流れているはずだ。


「川は時期によって変化しますが、この辺りまではだいたい澄んでいますね」


 それがもしかしたらスライムのせいではないかと考えてしまう。


「川にスライムが居るそうだが、たしか、領都の川にはいなかったと思うのだが」


 そう聞いてみる。


「はい、この川もより大きな街に近づく前に大きな堰を設けてスライムが乗り越えられないようにしております。そのため、下流にはスライムは居なくなり、安全になったのです」


 じゃあ、ここも上流で堰き止めればと思うが、あまりに魔人領が近いので無理なのだという。そして、費用対効果を考えれば、大きな灌漑用水の設備もないここにはスライムが畑へ入る危険も小さいのだそうな。


 灌漑を縦横にめぐらす大草原地域にスライムが入らない様に、その手前で堰を作り、スライムの進入を防いでいるという。

 だが、水が澄んでいるという事はスライムが濁る原因となるモノを食べているからではないのかという疑問もある。

 そもそも、この世界ではスライムと言えば瘴気を放って疫病をまき散らすものと考えられているが、僕にある前世知識から言うと、必ずしもそうではない。死体や排せつ物を食べる掃除屋といった感じの物語も多く見かけた。さらに、中世ヨーロッパでは、この様な不衛生な環境での疫病を瘴気や魔という得体のしれないモノの所為にしていたところがある。この世界には実際に魔物が居り、スライムやゴブリンは典型例と言えるだろう。

 他にも狼や熊の魔物なども居ると習っているので、地球の中世以上に疫病を魔物由来と考えるのではないだろうか。




 

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