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14・厄介な奴への対策を講じてみる

 弓を扱える者が少ない。なら、クロスボウを使えば良いじゃない。


 などと思ったが、そこには大きな問題が立ちはだかっている。


「クロスボウですか?たしかに、兵士の教育で構造や扱い方は学びましたが、射程は弓以下ですよね?そんなものをもって近づいても、スケイルピジョンは逃げるだけだと思います」


 との事だった。 


 確かに、弓とクロスボウでは射程は弓が優る。有効射程内の威力ではクロスボウだが、そう、あくまで有効射程内ならば。そもそもの射程が短いのでは、使い勝手が悪い。


「だが、相手は無能なんだろう?相当近付くまで逃げないんじゃないのか?」


 そう、鳩なんて目の前まで近づいても逃げないハズだ。


「連中はアレでも魔物なんです。こちらが武器を持って居れば警戒して距離をとります。確かに一羽や二羽なら倒せるでしょう。しかし、以後は続きません」


 そうか、無能なりに知恵があったんだ。


 ヤツは鱗が重くて飛べなそうに言えるが、風魔法で飛べるらしい。なんとも便利な話だ。


 そうか、ならば前世知識の武器を作ってみようか。


 もちろん、造るのは銃だ。


 しかし、火薬がここにはない。いや、あってもしょせんはマスケットしか造りようが無いだろう。


 19世紀後半から使われ出した元込め式銃は雷管を前提にしている。その雷管の材料となる物質は銀や水銀から作るとは知っているが、それ以上の詳しい事は分からない。20世紀に入って登場した合成火薬に至っては、まるで分らない。


 しかし、わざわざ火薬を使う必要はない。空気を使えば良い。


 日本では玩具としての認識が一般的だが、実際には狩猟用としても用いられる立派な武器が存在している。

 その歴史は古く、15世紀には貴族のオモチャとして存在していたという。実用的な空気銃は18世紀後半にオーストリア帝国で作られたもので、日本にもオランダを通じて同種のものがもたらされ、鍛冶師が製作しているが、幕府によって火縄銃に対して音が小さく暗殺に利用される危険があるとして禁止されたため、後世にはわずかな数しか残されていない。


 そのような歴史を持つ空気銃はライフリングを持つ実用的な猟銃として世界で販売、利用され、日本でも製造されている。

 そう、僕の前世平民は、その空気銃メーカーで働いており、別部門も経験しているため金属知識が豊富なようだ。

 

 なので、空気銃なら前世記憶に構造まで入っている。作れない事は無いだろう。魔鋼と神銀、後は銅があれば当座はいけるんじゃないだろうか。


 当然だが、ライフル銃として作る。


 前世携わっていた圧縮空気式を再現してみるために、まずはエアタンクを試作して見る。確かアルミ合金だったはずだから神銀で作れるだろう。


 神銀を捏ねてボンベ状に作る。まるで陶芸の様な事だが、、魔法なのでろくろは必要ない。


 ポンプはとりあえずシールを金属製にして作って試してみると何とか動く様だ。


 ボンベに空気を送り込んでいく。かなり力と時間を要する作業だが、18世紀に作られた物より効率は良い筈だ。それでも随分な労力だったが、取り付けた圧力計は僕の目指した圧力に達した事を知らせてくれた。


 魔法が無ければ作ることも難しいだろうな、これらは。


 そして、ボンベが出来たならば銃を造って行く。銃身はまだ作りやすいが、小さな部品が難しい。


 結局、一丁作るのに3日も要したが、何とかモノになった。


「イシュトヴァン様、その杖は何ですか?」


 マチカが銃を見て杖と言ってくる。まあ、仕方が無いな、この世界では。銃なんて無いんだから。


「これは銃という。スケイルピションを倒す道具に出来ればと作ってみた」


 僕の予想通りなら射程は弓と同等以上の50mはあるだろう。屋敷の庭を測って的を設置した。


 的を狙って撃ってみる。


 パン


 うん、さすが、21世紀基準の200気圧仕様だと発射音もそれなりに大きいな。


「な、何ですか?今の音」


 マチカだけでなく、通りがかった文官までもが寄って来るが、僕が試作品の実験をしていると知ってさっさと仕事に戻っていった。なあ、いったい僕はどんな目で見られてるんだろう?


 さて、結果だが、鉄を使用した弾を使ったので重さもあり、威力も相応だったらしく、板切れを貫通している。


「板に穴が開いてますね」


「マチカもやってみるか?」


 そう言って狙い方を教えてマチカに撃たせてみた。


 パンという音に耳をピコピコ動かしていたが、姿勢自体はぶれることなく撃てたらしい。


「一応、的には当たってるな」


 随分端の方だが、獣人は身体能力や視力が優れているので難なくこなすんだろうか。


「まさか、弦の無い弓とは、さすがです!」


 うん、まあ、その理解は間違っちゃいないと思うよ。


 その銃をフルチャにも見せ、部品類や構造も見せてみた。


「こいつは面白いですな!鏃だけを飛ばすクロスボウ、しかも射程は弓なみ!」


 絶賛したあげく、いきなり作り出してしまった。いや、どんなに早く作っても一日は掛かるから・・・・・・


 この変人、ちょっと兵士長の所に新兵器の説明と実演に行って帰ったらすでに完成させてやがった。


「凄いですな!作ってより実感しましたぞ」


 こっちはさらにおどろいてるよ。


「10日あれば20丁ほど作れそうだな。僕も5丁ほど作っておくから、それで兵士たちに銃班を作らせよう」


「20丁で良いので?30丁ならば作れますぜ」


「なら、それで頼む、予備があった方が良いだろう」


 変人すぎて付いて行けない。


 

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