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第1章 其の二


私の通う

“國皇國皇(こくおう)第三高等学校”

かなり厨に…もとい、金持ちの子が通うような高校名だが、名前に反してかなり普通の子が多い。

それなりに不良っぽい生徒もいれば、頭いい生徒、オタクっぽい生徒、普通の生徒と様々。強いて言うなら、國皇高校は第一から第三まであるんだけど、第三は他の高校や第一、第二と比べて妖怪の生徒率が多い。

まあ、世の中の企業に比べたら少ないかもだけど。



キーンコーンカーンコーン

ガラガラ!!


「お、おはようございます!!」

「はいおはよう。そして遅い。

早く席に着きなさい」


馴染みがあるがなかなかいない妖怪。男のろくろっ首の先生

飛頭(ひとう) 首長(くびなが)

教壇にて体を生徒に向けたまま顔を私の前まで伸ばし、睨みつけたまま言った。全速力で走って、教室に着いたらすぐ目の前に顔来られると怖い。イケメンだから目の保養にはなるけど。

私は小さく「はい…」と返事すると、そそくさと教室の一番後ろの窓際の席に座った。


前の席と私の隣の席に座る美男美女が必死に笑いをこらえてる姿がとてもイラっとした。

覚えてろよ…禄郎…知江…!



さてさて。

今日は登校から散々で、飛頭先生のお顔のみの歓迎から始まり、はやくも昼休み。


友達であり悪友の2人と昼ご飯に屋上へやってきた。3人並んでフェンスを背に座っている。

不機嫌な私の右隣では私よりスラリと背が高く、姫カットの前髪に背中の半分はある長く艶やかな黒髪。私より切れ長の目をした美女

弁財(べんざい) 知江(ちえ)

が、顔に似合わずゲラゲラ笑って食べられないでいる。

普段大和撫子のような感じなのにやめろ。他の人のイメージ壊れる。

左隣ではサラサラ流れる茶色のミディアムヘヤー。人形の様に整った顔に私より10㎝以上高く均等に鍛えられた体型に加え、冷静沈着クール美形の

福寿(ふくじゅ) 禄郎(ろくろう)

がパンを片手に顔を逸らし肩を震わせている。他人が見たら普段クールな彼なのにどうしたと驚くだろう。

禄郎はいつもこんな感じだ。


「そんなに笑うかフツー」


我慢できず美女…もとい知江を睨みつけると、彼女はヒィヒィいいながら涙目で顔を覗き見てきた。


「だって!遅刻しそうになって!朧車に乗せてもらって飛び降りたら!ぬっぺっぽうがいて!?

ボイーーンって…!!ブハッ」

「もういいでしょっ!!

禄郎も!笑いすぎっ!!」

「…っ…悪い悪い…

だが、遅刻するお前が悪いんだからな。反省しろ」

「わぁってるってー…」

「はぁ面白かった…

…それと昌ぇ。あんた校舎の3階以上の高さから飛び降りたんだってね。

私達だから笑い話だけど、普通は怪我どころじゃ済まないんだから」

「というか、ぬっぺっぽうがいたからって鼻打っただけで殆ど怪我なくて済んだな」

「前に聞いたことがあってさ。美術室の大掃除してた時、石膏像を移動させてたら誤って窓から落としちゃったんだって。

美術室って3階じゃん。落としたら確実に壊れるし弁償かと思いきや、たまたまそこをぬっぺっぽうが通って、めり込んだと思ったらポーンと飛んでなんと花壇に着地。花は潰されちゃって諸々のこともあり結局怒られたみたいだけど、石膏像は欠けてすらなく無事で弁償しなくて済んだんだって

だから大丈夫かなーと」

「へぇ…それでもよく無事だったな」

「ともかく!気をつけなさいよ」

「はいはいわかりましたっ

それより今日の放課後のこと話し合おう。ごちそうさまでしたっ」


思い切り空の弁当箱を膝に叩きつける。いつもの美味しい弁当箱がこういう弄られる日に限って何も感じない。

ああ、はやく全て終わらせて妹に癒されたい…。


ーーー



「以津真天さんから…“違法死体遺棄(人、妖怪〜昆虫まで)の取り締まり”」

「いくら何でも引き受けるって言っても限度あるし一介の高校生にできるわけないでしょうが。警察なりに頼みなさい。次」

「餓鬼さんから…“飯くれ”」

「底なしが何言う。次」


さて。ここで私達が放課後毎回やっていることをお教えしよう。

私達は妖怪に限定して困ったことや手伝って欲しいことなど、犯罪や生死に関わること以外の依頼を受けている。

一応こう言う万屋的なことをやるなら名前は決めといた方がいいって禄郎に言われて決めた私達の名前が

“妖怪専門何でも屋”

知江にはどうこう言われたけど私は気に入ってる。


何でも屋といってもいくつか依頼者に対してのルールがある。1つ目は依頼は手紙などの文のみにすること。

今じゃスマホ持つ妖怪は多いが、持たない妖怪や自身の性質上持てない妖怪もいる。水や火関係の妖怪だったりね。それにメールを間違えて消しちゃったりしても面倒だし。

なので、依頼の際は禄郎か彼の実家に手紙を届けることをおねがいしてる。禄郎の実家は神社で、そこなら受け取りの際の場所がほぼ移動しないだろうし、邪気のある手紙であっても一度お祓いをしてから読むので浄化される。と言う利点のため。

2つ目は先ほど挙げた通り犯罪と生死に関わる依頼の禁止。

“〇〇を殺せ”だの“夜の相手しろ”だのは一切無視している。

依頼主が襲いかかってきた際は即座に妖怪警察の烏天狗に通報する。ちなみに私達担当の烏天狗さんがいるよ。

また、最近依頼も増えてきてて、こなせる量が限られてるため、実行日や1日の依頼の数、受ける数の限度はこちらで決めさせてもらってる。緊急の場合や内容によって日付前後するけど、大抵は手紙が来た順。


もちろん依頼主だけじゃなく請負人の私達にもルールがある。これが3つ目の依頼を必ず全うし、報酬は共通して1つのみにすること。それから依頼を受ける時は自己責任。

特に3つ目は私達に危険を及ぼすかもしれないので見極めが重要だ。

今やっているのは、その3つ目のため。禄郎が邪気を感じるかどうか、内容は大丈夫かを簡単に仕分けし、知江がさらに確認しつつ手紙を読み上げ、私が受けるか否かを決める。


何でも屋は中学からだけど、妖怪の手伝いとかは小学生からやってきてて、騙されたり誘拐されかけたりといったことはしょっちゅうだった。

運良く朧のおっちゃんや烏天狗が通りかかって助けられたり、偶然が重なって逃げられたりと事なきを得てたけど。

そんなこともあってか危険かどうか何となく勘でわかる様になったのはラッキーだと思う。

お陰で今楽に選別(危険回避)できるし。


「一反木綿さんから…“先日の嵐で体が破れてしまった。繕ってくれ”」

「あー…まあそれならいいか。丁度頼んでた物も出来たし。あとで木綿糸買ってくるわ。

そーかぁ…あの嵐ひどかったもんなぁ…私ん家のビニールハウスも紐でくくって地面に打ち付けてなきゃ飛ばされかけたし」

「昌。なんであの嵐起こったか知ってるか?」

「いや?季節の変わり目のせいとかじゃなくて?」

「父さんが神主の会合に行った際に聞いた話なんだが…

何でも、一目連があまりにも花粉が多くて腹が立ち、洗浄するために起こしたらしい」


一目連とは片目が潰れてしまった龍神。また天候を司る神ともされ、妖怪というより神に近いものとされる。姿は龍だったり片目の青年だったりするみたい。私も姿みたことないし神社の関係者ぐらいしかみたことないらしい。

しかしだ。会ったことないけど言わせてもらおう。

ホントはた迷惑…!

依頼できないから集められないし。妹が雷怖がってかわいそうだったし…

あの2日はイライラされっぱなしだった。


「はぁ?なにそれ…!そのせいで色々あったし、おまけに風の音やらうるさくて眠れんかったんだぞ!」

「さすがに他の神様達からもこっ酷く言われたみたいだ」

「そりゃそうだ!!」

「(妖怪も花粉症になるんだ…)

はいはい、もうそれいいから2人とも話戻して。今の一反木綿で最後よ。

まとめると、今日の依頼は“がしゃどくろ”“一反木綿”ね。

内容からして…一反木綿はやること決まってるからこっちから行った方が早いかも」

「他のは…俺だけでこなせそうだが、どうする昌」

「うーん…一回天のとこ行きたいし、行ってから私も着いて行く。たとえ少しでも早く集めたいし」

「わかった。

俺は一旦帰って準備する。場所は俺の家だから来る時連絡してくれ」

「了解」

「じゃあ私は昌に着いて行くわ。天ちゃんにも会いたいし、あとは2人で大丈夫そうならそのまま帰るわね」

「ああ」

「知江が来ると知ったら天喜ぶよ。

あ、行く時コンビニ寄ってくから」


天…【黒多(くろだ) (てん)】は私の妹。

今はもう小学6年だけど、一年のうち半分以上病院で過ごしている。

小学校入る前にとある出来事があり、それからは通院と入退院を繰り返しているため行事にほぼ参加出来ず、またネット中継を通じての授業だ。

同じ髪色で外ハネのショートも大人しく優しい性格も、いつもは無表情気味だがたまに見せる笑顔も全て可愛い。

たまーにそこらのおばちゃんおっちゃんやらが「お姉ちゃんに似てないねぇ」だの「昌ちゃんは可愛いけど天ちゃんは普通だね」とか言われるけど、わたしには可愛い可愛い可愛い可愛い妹ですから…!!

(言ったやつらは私が言葉でボコボコにしてやったわ!!)


学校側は全て説明した上で受け入れてくれた。しかし入退院を繰り返すとやはり友達は出来ず、1人寂しい思いをさせてしまっていて…

だから私は何でも屋をしているが、無理にでも時間を空け毎日お見舞いに行き、休日は病院に許可を得て出来る限り泊まったりもする。


熱が出ようが怪我しようが天のためなら頑張れるさ。


4/29 書き漏れと添削と追加しました。

すいません…

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