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【移り香】/【そりゃ浮かれちゃうよ】
【移り香】
待ちに待ったバレンタイン。あの人へ贈る言葉は頭の中に、本命のチョコは鞄に携えて登校する。今か今かとタイミングを見送り、弁当を食べるのを忘れ、ついに放課後を迎えた。気持ちと共にチョコを贈る。ひと口齧り、彼は言う。
「カレーの匂いがする」
鞄の中は弁当のカレー臭がした。
【そりゃ浮かれちゃうよ】
巷を騒がせている事件の犯人はわたしである。我ながら芸術的な犯行だったと思う。絶対に足がつかないよう幾重にも細工を施し、確実に目的を果たした犯行だ。現に警察諸君も一向に捜査が進んでいないようで、報道を見ながら飲む酒が進む。
わたしの才能が世間に認められたのだ。そりゃ浮かれちゃうよ。