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龍国の剣神 ~千年前の英雄は、別れた友を探し王都へ向かう~ 作者:yuki

一章-英雄との邂逅編-

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8話

「──いい朝だ」


自室のドアを開け、伸びをする。
昨日アルテナと戦ったからか、寝付きも寝起きも良好だ。

昨日の戦いで、対人の動きの感覚は大体掴めた。殺さずに手加減することもできた。
アルテナもあの敗北で強くなるだろうし、多くの収穫があった日だった。

正直言えば、全体的に英雄は期待外れだった。しかし、まだ伸びしろは残されている。その中でも桁外れに素質があるのがアルテナだ。
いつか、俺を脅かす存在になってほしいものだな。


「さて、今日は何を……?」


噂をすれば。校門の外に、なぜかアルテナが佇んでいる。
鎧を着込み、聖剣を腰に帯びるその姿は絵になっているが、その顔は少し曇っているように見えた。
どうしたのだろうか。


「アルテナ」

「!? …………驚かせないで」


ビクリと肩を震わせ、振り向くアルテナ。
ふむ……消してもいない気配にも気づかないか。


「こんなところで何を突っ立っている。朝食はとったのか?」

「……あなたには関係ないでしょう」

「まだなんだな。ならば行くぞ」

「え、あ……」


アルテナの、革のグローブの上からでも分かるほどに細い腕を掴み、食堂へ歩く。
この細腕から、あの重い斬撃が繰り出されるのか……これも魔力の力なのだろうか。


「ちょ、ちょっと! 離しなさい!」

「なら、一緒に来るか?」

「分かったわよ! 分かったから離して!」

「言質はとったぞ」


確認を取り、アルテナの細腕から手を離した。
顔の血色が良くなってきたな。こういうのは苦手だったが、うまくいったようで良かった。

そうしてアルテナと共に食堂に座ると、すれ違う生徒達が驚愕と好奇の目を向けてくる。


「お、おい。あれアルテナ様だろ? 隣にいるの誰だ」

「昨日アルテナ様と戦った、アレスっていう英雄クラスの奴だよ」

「アレスって、剣神アレスか? にしては魔力がないけど……」

「そう。だから偽物だって話だ。よく見れば剣だってただの鉄剣だし、間違いない」

「でも、それじゃあアルテナ様は偽物に負けたってことに……」

「ばっか。何かズルしたに決まってるだろ」


……どうやら昨日の一騎討ちの話題のようだが、なんという偏見だ。魔力の多さで強さが決まるわけでもないだろうに。
まあ、まだ子供だから仕方ないが。


「アルテナ。お前はどう思う?」

「なにがよ」

「周りの言っている事だ」
「……別に間違ってることは言ってないじゃない。私だって、あなたが英雄だと100%信じた訳じゃないわよ」


フォークをレタスに刺しながら、アルテナは言う。


「英雄は全員魔力を多く宿していて、前世の自分の剣を持っているの。その点あなたから魔力はほとんど感じられないし、帯びてるのは鉄の剣。共通点が1つもないもの」

「英雄は強者がなるものだ。魔力など関係ない。それは昨日の戦いでお前が証明しただろう」

「それは……」

「それに、もし魔力や魔法で英雄かどうかを判断するなら、『火の時代』の英雄は皆認められないぞ。何せ、『火の時代』に魔法は無かったからな」

「魔法が無い……?」


俺がそう言うと、アルテナは何を言っているんだといった顔で停止した。


「ああ。知らなかったのか?」

「……それは私をからかっているのかしら? それならば、どうやって人々は生活していたのか説明してみなさいよ」


……これは本気で言っているようだな。

いや待て。そいえば確かに、この時代の人々は魔法が生活の全てを賄っている。
火を点けるにしても、水を汲むにしても、全て魔法で行っている。つまり、魔力は『火の時代』でいう石炭、魔法はエンジンのようなものか。

それならば、アルテナの反応にも頷けるな。
とりあえず、アルテナに『火の時代』ではどのような生活をしていたのか説明した。


「……炭を掘って、それを燃やしたエネルギーを使ったエンジンというものがあって、それによって鉄の箱が人を乗せて走る……?」

「俺が生きていたときは、戦が続いてまともに生活できないところがほとんどだったが、だいたいそんな生活だった」

「……嘘にしては説明が詳しいわね。もしそうだとしたら、今伝わってる歴史はほとんど間違っているわよ」


なにかを思い出そうとしているのか、アルテナは眉間に眉を寄せた。


「たしか、『火の時代』について書かれていた本によると『火の時代』こそ最先端の魔術を扱っていたとあったのだけど……」

「それは間違いだな。確かに、生物に宿る何らかの力──現在の魔力にあたるものは発見はされていたが、戦で研究資料が吹き飛んだらしくその正体どころか性質すら分からずじまいだった」

「…………でも、やっぱり信じられないわ」

「まぁ、無理に信じろとはいわんがな」


口が乾いてきた。紅茶を口へ流し込む。


「そういえば、他に『火の時代』の英雄は転生していないか?」

「……この学校にはあなただけね。学校だけでもここ含めて3つあるし、必ずしも英雄が学校にいく訳じゃないから探すのは少し大変なんじゃないかしら」

「そうか……やはりここには居ないか」


居るとしたら、次点は他の学校か? でも、学校の他にも戦いがある場所はあるだろう。
リアの性格上英雄だと語るわけが無いし……確かに、探すのは骨が折れそうだ。


「……知り合いでも探しているの?」

「ああ、友を探している。前世でできた唯一の友だ」

「そう」

「俺と渡り合える、唯一の武人でもある」

「…………想像したくないわね」


顔をしかめるアルテナ。


「俺の見立てでは、お前もそうなる可能性が十分にあるんだがな」

「……あなたは、どうやってそこまで強くなったの?」

「? どうした急に」

「別に。なんとなく気になっただけよ」

「…………そうだな」


目を閉じ、昔を思い出す。


「思えばいつの間にか、といった感じだったが、常に強者と戦っていた気がするな」

「強者と……?」

「ああ。幼子(おさなご)の頃は大人と。難なく倒せるようになれば、次はゴブリンと。魔狼と。キマイラと。幻獣と。そしてドラゴンという感じでな」

「……」

「そういう意味では、お前が羨ましい。お前の上にはまだまだ強者が居る。それだけ強くなれるということだ」

「……あなたがバカみたいな修行してたっていうのは分かったわよ」


呆れたように右手を上げて、アルテナは席を立った。


「どこへ行く?」

「……寮に戻るわ。少し休みたいの」

「そうか」

「ええ。じゃあね」

「ああ」


振り返らずに手を振りながら、アルテナは食堂を出ていった。
それを見計らったように、辺りがざわつき始める。


「おいおい。例の奴とアルテナ様って仲良いのか? ズルしたならもっと殺伐とするんじゃないのか」

「こ、こんなはず無いんだけどな」

「バカ。聖騎士様は、そんな卑怯者にも平等に接するんだよ。偉大な方だろ

「そうだ。さすがアルテナ様だな」


周りがうるさくなってきたな。
ちょうどいい、俺も書庫に行くか。以前教師が言っていた、『英雄全集』なる本を読んでみたい。

皿に残ったハムエッグを平らげ、席を立つ。
確か、書庫は学校の北側だったか。こことは反対側だな。


「ん?」


広い廊下を歩き書庫へ向かう途中。何気なく見た窓の外で、アルテナが歩いていた。


「あっちは寮とは逆方向のはずだが……」


不思議に思い進行方向へ目を向けると、一台の馬車が停まっていた。
金と銀の装飾の中に、家紋のようなものが彫られている。それに向かっているということは、アルテナの今世の家か。

そうこうしているうちにアルテナはその馬車へ近づいていき、ちょうど俺の目の前を通っていく。
その顔は、先ほど校門外に立っていた時のように憂鬱そうだ。


「……ふむ」


家の馬車に乗るだけで、何故そんな顔をするのか……
アルテナは家に対してなにかあるのか?

俺が頭を捻る間に、アルテナの乗った馬車は発進し、視認できなくなった。

……気がかりだな。
なんとなくだが、厄介事の臭いがする。
なにか書こうとしていたのに、投稿ページに行くと忘れる。あると思います(殴)
+注意+
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