09 問題の泉
話がなかなか進まなくてすみません><
瘴気を辿ってやっと辿りついた泉で一休みしようとしていただけだったのだが、矢を射かけられるは、人型の精霊に逃げられるはとトラブルが立て続けに起こったが、まだ終わりそうにも無い。
「オマエ、ナニシタ!」
何をしたかったと聞かれても、そこの風の精霊さんを驚かせてしまったので、落ち着けようとしただけなんだけなんて言っても分かってくれるんだろうか?
地球でも、女性は家族以外に顔を見せてはいけないとか慣習がある地域があるが、もしかして触ったのって、タブーだったのだろうか。
「えーと、ちょっと危なかったので、受け止めただけで、他意は・・・」
「ウソヲツクナ!」
弁明の途中でまた矢が襲って来る。
まあ、それは警戒はしていたし、先ほどよりは遅く感じたので軽く避けれたので、まあ、良しとしよう。
だけど、さっきからあなたの後ろの精霊さんの様子に嫌な予感がどんどん高まってくるのはなんでなんでしょう?
精霊さんはいたづらを思いついた子供の様に笑っているんですが、変な事しませんよね?
そして風の精霊がまた増えているのは気のせいですよね?
「誤解があるようですが、そこの子にも聞いてもらえませんか?出来たら何かしようとしているのを止めてくれると・・・」
「オマエ、ナニモノダ!」
話をまた遮られてしかも質問返しって良く無いですよ?
それに、一々矢を射かけてくるのは止めて欲しい。
小さい子が真似したらダメでしょ?
そんな事を思っていたのだが、注意するのが遅すぎたようだ。
精霊さんは指揮者の様に手を振り上げ、精霊の玉をを引き寄せたかと思うと、こちらに向かって手を振り落とす。
まさにそれが合図だったのか、精霊の玉が風を伴って襲ってくる。
下手にぶつけられるとどんな目に合うかも分からないので避けたのは良いのだが、ちょっと威力が強くないか?
砲弾が落ちたかのように土煙を巻き上げるその威力にちょっと冷や汗をかいてしまう。
精霊さんからの攻撃は一回では終わらず、避けるたびに球数が増えてくるは、変化球まで交えた珠を笑いながら投げ続けてくる。
「カーブに、シュート、フォークに、ってホーミングで後ろからもありかよ!」
全ての攻撃が風を伴って襲ってくるものだから、俺を中心に嵐のような有様だ。
当然、目の前の木も台風にさらされており、激しく揺れている。
「って、あいつはどうした?」
樹上にいた精霊さんの相方さんを慌てて探すと、木にしがみついて何とか耐えているようだが、これ以上激しくなったら危ないんじゃないか?
木から振り落とされたら辺りはまさに殴りつけるような風の嵐だ。
見た目小柄な体では良いように翻弄され、全身打撲で済めば良い方だろう。
どっちにしろ、この状態の元凶である、精霊さんを止めてくれる可能性は無いか。
「まずは、後々の為にあの人を遠くに引き離しますか。」
風の攻撃を避けながら試してみたのだが、風の魔力を纏っておけば軌道を逸らせる位は出来た。
ただ、さすがは精霊の攻撃だけあって、結構強めに纏っていないと手が持っていかれそうになる威力なので、油断出来ないのは変わらないが。
隙をついて飛び込み、直撃しそうな攻撃を弾きながら枝の上に飛び上がる。
近寄ったせいか、攻撃がより熾烈に強烈になってくるのを往なしながら樹上の人に飛びついた。
「後で、しっかり相手してやるからちょっと待ってろ!」
樹上にいた人は木にしっかりとしがみついたまま、気絶しており、下手に避けると風の暴力にさらされてしまう。
仕方なく避けるのを諦め、背中や足に魔力を集めて風の攻撃に対処するのと並行して引きはがす作業を行った。
二つの事に集中するのは中々大変だったが、何とか引きはが事に成功し、急いで仔犬たちの元に駆け込んだ。
「この人を頼む!」
と、急いで指示を出してすぐに木の元に戻り、再び精霊さんと対峙をした。
精霊さんは木から離れている間は律儀に攻撃を止めてくれていたんだが、攻撃の再開をワクワクしながら待っている気がする。
俺としてはこのまま終わりにしたいんだが、そんな事にはならないんだろうな。
「待っててくれて助かったけど、このまま終わりに・・・って」
『エーイ!』
またもや言葉を遮って攻撃を仕掛けてくる精霊さん。
ちょっと気の抜けた掛け声に反して繰り出される強烈な攻撃の数々。
今度は下手に避けずに、逸らしたり弾いたりしていたのだが、いつまでたっても攻撃の手は休まる兆しも無い。
その癖、無邪気に笑いながら攻撃してくるその様は無垢な子供のようで、悪意も感じられなく、こちらから攻撃するのも躊躇われる。
「だけど、悪い子にはお仕置きが必要だな。」
意を決して近づき、逃げる回る精霊さんを追い詰め、迎撃に耐え抜き、ついに精霊さんを捕まえた。
幼女を追いかけまわして追い詰めるなんてまさに危ない人だが、誰も見ていないよな?
今度は逃げられない様に、しっかりと捕まえているが、潰したり、怪我させない様に気を使っているんだし、警察に通報なんてしないでね?なんて考えていたのだが・・・。
『ツカマッタ〜♪ツカマッタ〜♪』
暴れられたリ、ムキになられるのを覚悟していたのだが、何故かはしゃいでいる精霊さんに毒気が抜かれた。
まあ、あれだけ攻撃したので気が済んだのかな?
何時までも捕まえているのも可哀そうだけど、離しても大丈夫だよね?
『離してあげるけど、もう攻撃とかしちゃだめだからね?』
小さい子に言い含めるように言いながら、そっと手を開いた。
もちろんまた暴れるようならすぐに捕まえるつもりでいたんだが、手を開いても精霊さんは大人しくふわふわ浮いており、初対面の時のように目をパチパチさせていた。
『ハナセル?』
『話は出来るけど、何を聞きたいのかな?』
『ハナセル!スゴーイ!ワカルー!』
いきなり質問されたので答えたのだが、途端にはしゃぎだされてしまった。
はしゃぐ精霊さんをなだめながらも、原因を考えていたのだが、そもそも俺は何語で話していたんだ?
無意識に相手の言葉で話していたが、日本語どころか全く知らないはずの言語で違和感無く話していた。
これが小説とかに出てくる『言語チート』っていう物だろうと新たなチートの発見にあきれてしまった。
もし最初っから話が出来る事を知っていたら、無駄なドッチボールをする必要も無かったのに。
誰でも良いから『自分マニュアル』を作ってくださいと切に願いたくなった。
ともかく、言語チートについては色々疑問もあるが、考えるのを早々に放棄した。
ただ、止めを刺そうとしている獲物から急に命乞いなんかされない事だけは祈っておこう。
『とりあえず、君の相方が目を覚ますまでお話を聞かせてくれるかな?』
仔犬たちの元に戻ったのだが、樹上にいた人、運ぶときにとがった耳が見えていた。
小説とかに書かれているのを信じるのであれば、恐らく『エルフ』だと思うのだが、まだ目覚めていないようだった。
目を覚ましたらまた一悶着起こるかもしれないし、今のうちに泉の傍に場所を移して休憩がてら目を覚ますのを待つとしますか。
『エートネ、エートネ、ハナセルケドワカラナイノ!』
少しでも情報をと思い、精霊さんに話を聞いてみたのだが、難しい言い回しは理解できず、話す内容も言葉足らずで分かりづらい。
先ほど得意げに話してくれたのはまだ目が覚めていないエルフさんについて聞いた時の回答だ。
更に言い方を変えて聞き出した結果、エルフさんは精霊さんの言葉を話せるのだが、精霊さんの言葉が分からない事が多いとの事だった。
他に聞いた話と併せて考えると、エルフさんと精霊さんは比較的最近に友達になったばかりで、まだ意思疎通が完璧ではないらしい。
ちなみに、友達になった時に自我が芽生えたのか、それまでの記憶は分からないんだそうだ。
あと、分かった事は精霊とは彼女の言い方では友達、恐らくゲームなどで精霊使い(サモナー)と呼ばれる者の力を増幅する存在のようだ。
何しろ、「チカラモラッテ〜『ヒュー』ヲ『ビューン』スルノ〜♪」って言われたのを想像で補ったので間違っているかもしれないが。
ともかく、術者の補助やブーストをするようだが、普通は力と指示を受けて風の力を発現させるようだ。
だが、ちょっと不思議なのは最初の攻撃の時はともかく、その後、力をもらったり指示を受ける暇も無かったと思うのだが?
『力や指示っていつあったの?』
最初に射程を超えて飛んできた矢、これはまだ説明が付く。
矢に風の精霊さんの力を乗せる事で飛距離と威力をブーストした結果なのだろう。
だけどその後はいつ力を与えたり、指示を出していたんだ?
何しろ途中から気絶して戦線離脱した後も精霊さんの攻撃は続いたのだ。
『チカラ、モラッタ〜♪』
何故か俺を指さしながらそんな事を言ってくる精霊さん。
俺が力をあげた?そんな覚えなんて無いんだが、どういう事なのだろう?
『シャベッタラ、ビューン〜♪』
力の出どころはともかく、友達がしている事を真似して、こちらが話したら精霊玉をぶつける物だと思っての行動だったらしい。
実際に似たような事があって、その時は褒められたそうだ。
ただ、今回は俺が避けてしまったり、当たっても吹き飛ばなかったので、面白がって連発していたのが真相らしい。
ってか、縁日の的当て感覚で精霊玉を投げつけられていたのか・・・。
もしかして、最初に素直に受けて吹き飛んだら大人しくなったのかも?
「まあ、他の誤解もさっさと解けたら良いのだけど、あっちも気になるんだよな。」
泉の横で、エルフさんが目を覚ますのを待っているのだが、さっきから監視されていたりする。
最初は茂みの陰にいたのだが、エルフさんを抱えて泉の傍にきた時、傷ついて弱っている体にも関わらず、こちらを睨んでいる。
襲われたら迎撃するつもりで、エルフさんを草の上に寝かせて対峙したのだが、これ以上近寄らなければ襲って来なさそうだった。
おまけに精霊さんに『メッ!ナノ!』と叱られたので、この場所から下手に動けないのだが。
まあ、戦わずに済むのであればそれに越したことは無いのだが、せめてさっきまでの様に茂みの陰で休んでいてくれないかな。
弱っている相手を前にこちらだけ休憩なんて、シルバーシートに堂々と座っている感じで落ち着かない。
「それとこっちもか。」
もう一つ気になっている事は泉の横にいるにも関わらず、水の精霊力が弱すぎる。
正確に言うと、地下の水脈に沿ってすぐ近くまでは来ているようだが、泉に出てくるまでに途絶えてしまっているようだ。
途絶える原因についてはチートな視力を使って確認したのだが、ちょっと面倒かもしれない。
解決するには泉に入る必要があって、となると未だに睨んでいるあの方が素直に通してくれるとは思えない。
それに、事情も分からず勝手な事をしたら後々面倒になるかもしれないし、誤解を解く前に勝手な事をしたらこじらせる可能性も高いだろう。
「瘴気の元を確認しに行くだけのはずだったんだけどな。」
泉だけにトラブルが次々沸き起こるなんて困った物だと思いつつ、エルフさんの目覚めを待つしかないのだった。
9話目にして未だに登場人物の名前を登場させるタイミングを逃してしまっていたTT
早く機会を作らないとと思っているのですが・・・orz
それにしても、脇役の名前ってどうやって決めたら良いのでしょう?