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神眼のトラブルトラベラー   作者: sasa
1 大森林 ~サバイバル編~
5/65

05 怪現象

表現力が欲しいと切に願うTT

 薪や料理に使えそうな香草なんかを適当に収穫しながら崖下に戻ってきた。


 「本当はゆっくりしてからにしたいんだが、待ってくれそうも・・・無いな。」


 仔犬の今にも飛び掛かろうとしている姿に、思わず苦笑が漏れる。

 こんな状況で先に休憩するのはおろか、ゆっくり調理なんてしていたら、待ちきれずに飛び掛かってきそうだ。

 とはいっても生肉を食べるつもりは無く、じっくり熱を通したい自分としては、調理をする時間が欲しいのだが。


 「まずは時間稼ぎだな。」


 狼の腹を裂き、今回の料理には使わない内臓を取り出して仔犬に与えた。

 仔犬は警戒してすぐには食べようとしなかったのだが、一口かじりついてからは激変した。

 最初の警戒はどこにいったのかと思うほど、一心不乱に食べるさまはすさまじく、みるみる減っていく様は恐怖を感じる程だった。


 「野生動物は内臓から食べるのは知っていたけど、がっつき過ぎじゃないか?」


 内臓だけとは言え、相手は大型の魔物であり、結構な量があったのだが、食べつくされるまでそれ程時間は残っていないだろう。

 食べ終わる前に次の料理の準備をと、急かされるように火をおこし、次の料理、狼肉のスペアリブを焼いたり、薄い岩を熱して、ステーキを焼いたりと目の回る忙しさで次々調理していった。

 ここが魔法の存在するファンタジーな世界でなかったら、そして、各属性の魔素を多少なりとも制御する技、魔術が使えなかったらとても間に合わず、不興をかって下手したら噛まれていたのではないだろうか。

 火を起こしたり、鉄板代わりの岩を熱するのに火属性を、香草の味や香りを浸透させる際には水属性を、焼き加減や熱を調節する時には風属性を、そして鉄串代わりに使った骨を硬化し、丈夫にさせるために地属性をと、各属性の魔術を休む間も無く使いまくった。 下手すると本日の戦闘で使った魔力以上に使っていたんじゃないか?


 そんな目が回る作業も狼の巨体が半分近くになったところでやっと、ゆっくりできる時間ができたが、合間につまみ食いするように食べていたので、もうそれ程お腹は空いていない。

 無駄に残すのはもったいないので、残りは蒸し焼きにでもしておくかな?

 ちなみに蒸し焼きはインドネシアだったかの原住民の方法を真似て、香草で包んだ肉の塊を焚火の下に埋めておくだけなので、明日には出来ているはずだ。


 「てか、ほとんどお前が食ったんだよな?」


 仔犬はやっと満足したのか焚火の横で寝そべりながら毛づくろいしている。

 その癖、撫でようと手を伸ばすと牙を向いてくるというツンデレ振り。

 そのうち飼いならそうと、密かに意欲を滾らせながら別の課題について考える事にしよう。


 「お前がパートナーになってくれたらな・・・。」


 今回のように、相手の一部でも任せられるパートナーが居れば戦闘も楽になるし、何より独り身では寂しすぎる。

 寂しさのあまり、ついつい独り言をつぶやくよりも、答えてくれなくても相手がいる方が良いよな?

 まあ、この様子を見ると、仲良くなって連携が取れるようになるまでしばらくかかりそうだが。


 「パートナーはともかく、武器が無いと厳しいか。」


 パートナーが居なくても、武器があれば攻撃をそらしたり、けん制したりと相手のタイミングをずらす事ができるだろう。

 ただ、この世界に来てすぐの頃に丈夫そうな木を木刀の様に使ったり、石斧を作ってみたのだが、自分の力が強すぎるのか、相手が硬すぎるのか、すぐに折れてほとんど使い物にならなかった。

 それにこんな密林のような障害物が多い空間だったら、あまり振り回す武器は使いこなせないだろう。


 「遠距離用の武器は・・・ダメだな。」


 まず、遠距離用として弓を考えたが、矢を大量に準備しておかないとあまり意味が無い。

 そもそも奇襲や狙撃といった攻撃か、数を揃えて先制攻撃といったこちらから攻める時に武器だ。

 今、求めているのは群れを撃退するための武器であり、それを単身で群れに向かって攻撃してどうする。

 他の武器をと考えても魔法か銃しか思いつかず、どちらも今は無理なので、遠距離は諦める事にする。


 「中距離も限られるけどいけるか?」


 中距離用の攻撃として、今は小石を弾く指弾を使っているが、他の手段も用意しておきたいな。

 他に使えそうな中距離用武器って鞭、投擲、そして槍位か?

 鞭はともかく、槍、それも短めの手槍ならいけるか?

 基本的に穂先か石突で真っすぐ突くか、けん制に使えばそこそこ持つだろうし、いざとなったら投擲にも使える。


 「短距離はどうだ?」


 最後に短距離用だと剣とかナイフは無理だとすると・・・ブラックジャック?

 『ブラックジャック』というのはどこかの名医の事では無く、皮の袋の中に小石などを詰め込んだ打撃武器の事だ。

 中の小石は指弾にも使えるし、幸い今回戦った狼は地属性が強く、皮も丈夫そうなのであれを加工したらすぐ作れそうだ。


 「早速作ってみるか。」


 狼の皮を切り取り、袋状にしたものを用意する。

 本当は皮をはいだ後、なめしたりする必要があるのだろうが、そこは魔術で代用できた。

 続いて中の小石だが、より威力を出せるように、これも魔術を使い、石を圧縮と硬化を思いっきりかけた特製石玉を作った。

 こいつは結構魔力を使っただけあり、小さいくせに重く、硬くて丈夫に作ったのだが、どれくらい硬いのだろう?

 とりあえず、手槍の刃先も同じ材質で作っておくかな。


 突然話は変わるが、「もし無人島に一つだけ物を持っていくとしたら?」という有名な質問があるが、これを心理テストではなく、まじめに考えたら何を持っていくだろう?

 自分だったらほぼ間違いなくナイフを選ぶだろう。

 ナイフは武器としてはもちろん、物を切ったり、削ったり、穴を掘るのにも使える汎用性の高い道具なので、あると一番便利だろう。

 ちなみに次点では火付け道具だ。

 調理にはもちろん、野獣対策、殺菌など、こちらも用途は多い。

 こういう考えだったからなのか、この世界に転生した際、何故か昔使っていた折り畳み式ナイフと、オイルライターが手元にあった。

 正確に言うと、形状は昔使っていたごく普通の物だが、実態はファンタジーな不思議な物だった。


 まず、オイルライターの方だが、使い心地も、感触も安物のオイルライターだが、未だに火つけに重宝している。

 そう、オイルを補充していないにも関わらず、普通に火がつくのだ。

 オイルライターなんて使ってなくても自然にオイルが気化してしまうので、3日前後しか持たないはずなのに、未だ現役だ。


 もう一方のナイフだが、使い古しの錆びだらけで刃もなまっていたボロナイフだったのが、錆び一つ無く、刃もやたらと鋭くなっていた。

 それこそなんでも切れるのでは無いかと思うほどで、ある時、手を滑らせて岩の上で落とした時、まるで豆腐の上に落としたかのように柄まで突き刺さったのを見た時は我が目を疑った。


 「こいつで切れると楽なんだけどな。」


 ナイフはいざという時のために、普段は使っていないが、今回は硬さを確かめるためにも使う事にしよう。

 早速、岩を圧縮して作った特製の刃先を鋭くするため、慎重にナイフの刃先をあてがってみた。

 今込められるだけの魔力を込めて固めた岩だから、さすがにまともには削れないだろうと期待していたのだが、それはあっけなく裏切られた。

 硬く固めたはずの岩は、少し抵抗があったものの、軽く切れ、がっかりするやら、ナイフの切れ味にあきれるやら・・・まあ、おかげで加工が楽だから良しとするか。


 「ん?何かあったのか?」


 気を取り直して顔を上げ、仔犬の方をみると、やたらと辺りをキョロキョロしていた。

 声を掛けたものの、こちらには一切構わず、落ち着かなさそうにしているままだ。

 自分も辺りを見渡してみたが、特に異常らしいものは何も感じもしない。

 強いていえば、今まで魔術を色々使ったせいか、ただでさえ濃かった魔力濃度が少し上がったくらいだろう。

 いや、魔力が集まっている範囲が狭くなっている?

 そしてその中心は・・・


 「そこをどけ!痛た!」


 一番魔力が集まっているのは焚火の横、仔犬のすぐ傍で、今ではかなり濃密に集まった魔力が、魔力視でなくても見れそうなほどの濃度になっていた。

 慌てて仔犬を押しのけようと手を伸ばしたのだが、あまりにも慌て過ぎたのかナイフで指を切ってしまった。

 おまけに差し出した手に驚いた仔犬にその手を噛まれてしまった。

 幸い仔犬に噛まれたところは何ともなかったが、ナイフで切った指の方は見事に流血している。


 「こうやってみると、普通の体なんだよな。」


 この世界に来てから強い体になったおかげで、未だに怪我らしい怪我も無く過ごしていたのだが、こうやって傷が出来、赤い血が流れるという事は決して不死というわけでは無いのだろう。

 傷口を見つめながらそんなことを考えていたら、仔犬が心配そうな顔をしながら手をなめてきた。


 「お前のせいじゃ無いから良いよ。それより驚かせてごめんな。」


 仔犬を安心させるように、怪我をしていない方の手で思わず撫でてみたが、今度は牙を向いたりせず、撫でられるままにされていた。

 これが本当の怪我の功名なのか、少し心を開いてくれた仔犬に嬉しくなり、ちょっと涙が出そうだった。


 「って、実体化する?」


 もう少し癒しの時間を堪能したかったが、魔力溜まりの方に変化があったので自重した。

 魔力溜まりは更に収縮し、その分更に濃密に集まった箇所がうねうね蠢く何かが実体化しようとしていた。

 こんな現象見たことも聞いたことも無い・・・いや、ゲームや小説だったら該当しそうなものが一つあったか。

 幸い集まっている魔力の量ならば、なんとでもできそうだし、最後まで観察してみるか。


 「今度こそ厄介ごとは最後にしてくれよな。」


 自分の興味に巻き込まれさせるわけにはいかないので、仔犬をかばうように位置取り、本日何度目か分からないため息を吐いた。


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