03 後始末
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「ふう、酷い目にあった。」
巨大スライムを何とか無効化したが、本体を抜き取った残りの物って抜け殻って言うのか?が崩れてきた。
周りを全て囲まれており、出来ることもほとんど無い、ということで結局核を放り投げた。
幸い、周りの高さも低くなっていたので、暴発しても被害があまり来ない様に遠くに投げて第二ラウンドの危機は回避した・・・そっちの危機は回避出来たんだが。
「服も体もベトベトで気持ち悪い。」
結局、自分は逃げ出せず、崩壊にのまれて海水浴ならぬスライム浴をする羽目になった。
某小説ではスライム浴は体の汚れを綺麗にしてくれて、気持ち良さそうな物だったが、残念ながら現実はそんなに甘くなかった。
それどころか衝撃が吸収される性質は残っており、水を掻くようにしても体はほとんど進まず、溺れかかりながら散々もがいたので、体も服もベトベトで気持ち悪い。
しばらくはこいつとは戦いたく無い、少なくとももっと特徴やら効率の良い対処法を見つけるまでは。
「でも、やっぱりあれはどうなったか確認しておいた方が良いんだろうな。」
遠くに投げた核は幸い暴発はしなかったようだが、そのまま放置していたらどうなるか分かった物ではない。
とは言え、このスライムの抜け殻もそのままにしておけないよな?
でもこんな大容量を、しかも容器も無しに除去するなんて普通は出来ないよな?
そんな時にはこいつがある!
「パラパパッパパーン♪次元収納〜♪」
元の世界であだ名の一つでもあった青いネコ型ロボットの様に収納の魔法?スキル?を開いてスライムの抜け殻を吸い込み始めた。
この『次元収納』と名付けた能力は魔法の練習の際に偶然見つけた。
魔法の練習には魔素や魔力の属性や強さもそうだが、流れを整える必要があった。
流れを滑らかにしないと必要な魔力を集める事も、安定させる事も難しかった。
最も、流れを滑らかにしても魔法に失敗する奴がいう事では無い気もするが。
ともかく、流れを確認している時に、ある部分で流れが途切れている事に気づいた。
そのくせ感覚的には詰まっていたり乱れている様な感じはせず、更に観察すると、ある場所に吸い込まれるように消えていき、少しずれた場所から再び現れて流れに戻っていた。
その流れが途切れて見える点は縫合跡のように並んでおり、意識しているとその長さや位置がある程度自由に動かせた。
更に意識をして、傷口を開くように流れの途切れている場所を広げてみると、空間にぽっかりと穴が開いた。
「この穴の中って本当どうなっているんだろうな。」
チートのお陰で普通では見れない物まで見れるようになった『眼』をもってしても、全く何も見えない空間に開いた穴。
光すら通さないのか、ただの黒い円盤状に見えるが、裏から見ると何も見えず、穴があるようには見えなかった。
とりあえず中を確認しようと、足元の焚火から火のついている燃えさしを穴に差し込もうとすると・・・燃えさしは手元から急に消えた。
穴は暗いままで、その後、何度試しても穴に近づけると吸い込まれるように消えていくのみだった。
その癖、入れようとしなかったり、持っている自分の手は何も無いかのように穴を突き抜けてしまう。
「しかもこれだけ入れてもまだ入るんか。」
辺り一面に広がっていたスライムの抜け殻を全て吸い込んでもまだまだ収納出来そうで、どれくらいの容量があるのか未だに分からない。
正直、仕様が分からない物を使うのは怖いので、今までは無くなっても良い物しか、入れてこなかったが、落ち着いたらもうちょっと調べておきたい。
ちなみに収納はなんでも出来るのではなく、昆虫や動物、魔物の類は生きているうちは収納出来ず、その癖花や木などの植物やその種は周りの土や微生物ごと収納出来るという謎仕様。
収納したものは取り出そうと手を近づけると穴から出現し、収納している物もイメージ出来るのでとりあえず困ってはいない。
「って、あの核もここに入ったんじゃね?」
スライムの状態ではともかく、取り出した核は動かず、植物の種のようだったので収納出来た可能性は充分にある。
収納出来たのであれば暴発のリスクも無かったし、今頃奴が復活する心配もしなくて済んだのだが、今更過ぎた事を後悔してもしょうがない。
今回は暴発とかしなかったが、まだ安心するのはまだ早い。
あんな魔力の塊なんて、火のついていない爆弾のようなものだ。
それにこの世界の生物は例外なく、体内に魔力を保持しており、その魔力が多い物ほど強く、厄介な傾向にある。
巨大スライムの場合は厄介だったが、動きが遅かったのでまだ対処できたが、もし素早い魔物があの魔力を取り込んだ場合、それこそ対処どころか逃げることも出来なくなるんじゃないか?
「幸か不幸か落ちた場所は分かっているんだけどな。」
普通なら密林に奥に放り投げた珠を探すのはほぼ不可能だろうが、幸いチートな視力、『俯瞰視』がある。
俯瞰視というのは上空から見下ろす視線の事だが、自分の場合、ただの視線では無く、レーダーマップに近い。
ゲームとかで通常の視野とは別に自分を中心に周囲の様子を確認出来る奴だ。
しかも慣れてくると視野の拡大や縮小、視線の角度や位置をある程度操作する事まで可能な便利仕様だったので、落下地点については既に補足済みだ。
「だけどどんな便利なものにも欠点はあるって事か。」
この俯瞰視は自分が居る場所や行った事ある場所、そしてその周辺の直接見た範囲ならば自由に視点を移動できる便利な物だ。
だが、未踏地の場合はグレーアウトされ、詳細が判別出来ないというゲームの様な仕様だった。
更に地形によってエリアが分かれているようで、エリアの端っこであっても隣接する未踏地エリアは見れない事がある。
先ほどの崖もそんなエリアの堺目だったようで、直接覗く為に崖から身を乗り出していたところで転落してしまった。
「結局急がば回れって事か、っていつまでも放置は不味いよな。」
落下地点についてはスライムの抜け殻を回収前から俯瞰視で探索したので、場所もその周囲も分かっている。
なので回収もそれ程手間でも無いが、それでもすぐに行こうという気になれないのには理由がある。
投げた場所が悪かったのか、落下地点を確認すると近くに魔物がおり、更に他の魔物が数匹近づいているのが分かったからだ。
もしかしたら確認出来ていない範囲からも近寄っているのかもしれない、と考えると、時間が経てば経つほど状況は悪くなる一方だろう。
だが、回収に向かえばほぼ確実に魔物との戦闘に、それもこの疲れている体での連戦を、となればどうしても躊躇してしまう。
「やっぱり行くしかないよな・・・」
本日何度目か分からない覚悟とため息と共に回収に向かった。