04 対比
その男を縛り上げた後の僕はと言えば、その人の見方がいるかもしれないと思って早々にその場を立ち去ることにした。
まだその人には息はあったけどどうしても人を殺すということに関しては気が進まず、とりあえずは縛り付けての放置ということに落ち着いた。
「さて、君はどうするかね?」
そう尋ねた先にいるのは、小さないぬっころの様な奴。
ただ、その耳がある部分にはファンタジックなことに葉っぱの様な何かがついて離れないのだ。
あぁ、これを属性というのならば間違いなく草タイプだろう。
「キュー?」
まあ問いかけたとしてまともな答えが帰ってくるとはそもそもからして思っていませんでしたが。
「だからといってここに放置していくのもな…」
縛り付けた男のこともある。
ここに置いていけば第二、第三の刺客に襲われかねない。
「ま、ついてきたければついてきて、そうでなけりゃ放置でいいか」
野生であればそのままどこかに行くだろうし、僕のほうについてくるのならば世話をするのもやぶさかではない。
「さて、ちーちゃんもういくよ」
そういって足元に置いておいた荷物と一緒にちーちゃんを抱える。すると、その子犬(草タイプ)も私も私もとばかりに体を上ってきた。
「お、ついてくるか?」
そう尋ねるともちろんよと言わんばかりにほっぺを舐めてきた。
なんて情熱的なのだろうか、これは今晩のお誘いととらえていいのだろうか。
ー閑話休題
「さて、とりあえずはここらへんでいいかな」
夜にひと騒動あったとはいえ、それはほんの数分の出来事だったのだ。
いまだに空は暗く、明けは遠い。
そして、僕の眠気さもマックスなのだから仕方がない。
そのまま寝ようと思ったのだが夜の砂漠の冷えること冷えること。
思わず砂を掘ってその中で眠りについてしまいましたとさ。
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「…なあ、あの子はバカなのか?」
「私に聞かないでよそんなこと…」
それは、砂漠のとあるところでかわされた会話。
互いに声を潜めていたがその雰囲気にはいかんとも隠し難いあきれの気持ちが漂っていた。
彼らの目の前には一人の人間の寝顔が転がっている。
見えるのは顔だけだが何もそれは彼が首だけで生きているからではない。
砂の中に体を潜らせているのだ。
「悪い子ではないとはわかるんだが…」
彼らの気配にその寝顔をさらしている子供は気づく気配がない。
しかし、その彼の知覚で眠っていた二匹は別だ。
彼らに敵意がないことを知っているためか、飼い主(仮)を起こすことはしないがその一挙手一投足に目を光らせている小さなドラゴン。
知っている顔でも見つけたのか、あそんであそんでとその足元にまとわりつく子犬(草タイプ)
その飼い主は言わずと知れたこの物語の主人公だ。
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「ふぁーーーあぁ、よく寝た…、あれ、ここどこだっけ…?って、あ、そうそうおもいだした」
目が覚めると近くに水場があったそこではなくて一本不自然に立っていた木のそばだった。
さすがに火が昇れば熱くなるだろうからと、近くにいい感じの気が合ったのでそこの根元で昨日は寝たんだったの思い出した。
「おはようございます」
「え、あぁおはようございます」
隣で料理をしていていた人がいたので挨拶を返す。
いい匂いがしてきていたのでそれが僕の空腹をくすぐり、ぎゅるぎゅるとおなかを鳴らしてしまう。
「もうすぐできますので、少し待っていてくださいね」
「あ、はい。…って、あれ?あの、どちら様ですか?!」