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割れた卵  作者: 徳光 小唄
2/7

01ーリレー

やあ、久しぶり。元気にしてたかい?

いつ以来かな、君にこうして話しかけるのは。


うん、いつかは忘れてしまったがそれでもこうして親しげに話しかけてたのは覚えている。

今日はその続き、えっと、前回はどこまで話したかな。


・・・


そうそう、僕の部屋の中で彼が卵を抱えて死んでいるところまで話したのだったかな?


…え、そうだっけ?


部屋の中で倒れていたのは女性で、卵を抱えていたのは僕だった?


んー、やはりそこら辺の記憶はアヤフヤだからご勘弁をいただきたい。

しかし、ご指摘を受けた通り、確かになんだか気味の言った言葉のほうが正しいような気がしてきたよ。


さて、では挨拶と、前回のあらましもそこそこに、今日の物語を始めようか。


そう、これは物語なんだ。

物語にはヒロインがいて、ヒーローがいて、そして明確な悪が存在するもの。


楽しみにしてくれたまえ。

希望通り、定石通り、例に倣ってこの物語にもその三役は必ず存在する。


安心したまえ、きっとこれはハッピーエンドだ。

誰もが笑って、誰もが幸福に包まれる物語だ。


笑いたまえ。これは物語だ。

主人公で会った僕の愚かでみっともない姿を安心して見ているがいい。





絶望したまえ。これは物語だ。

物語とは続くもので、終わりのないものだ。

求められる結果が得られなかったとき、そして主人公が再起不能になった場合どうなるか。

では、僕が死んだあとはそれはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




そうそう、確か彼女が倒れているところまでは話したのだったかな。


当時、僕はいわゆるアニメオタクというやつでね。

僕の部屋の中にはブラウン管のテレビが一つ、DVDカセットをつないだ状態でおかれていたんだ。


そのとき、またまた摩訶不思議なことにテレビがぱっとついたんだ。

そう、誰もリモコンもスイッチも押したわけでもないのに。


僕の部屋にあるテレビはアンテナにはつながってなくて、なにかROMをれないと灰色の砂嵐しか流さないはずなのに、その時はなぜか普通のチャンネルが流れていた。

物語の始まり、プロローグともいうべきところでもいったが、初めはニュース番組が流れていた。

その後僕は様々なチャンネルに変えてみたけれど、彼女が死んだというニュースはどのチャンネルでも放送されていなかった。

それはそうだ、だって彼女は今さっきその瞬間で死んだはずである。

テロップはなぜか朝の時間を表していたからもしかしたら機能のことかもしれないがテレビでそのニュースを見るにはまだ早すぎると今の僕ならよくわかるのだが、とにかく当時の僕はいわゆるパニック状態だったのかもしれない。

ひたすらにチャンネルを回し続け、ニュースで報道されないか、もしかしたらもう周囲は警察に囲まれているのではないかと恐慌状態にあった。


そして次の瞬間、スイッチもチャンネルも触っていなかったのに、勝手にテレビの画面が切り替わった。

さっきまでの、時折画面が切れていたのとは違って、まるでフルカラー写真の様な景色が現れた、


雨の景色が流れていたんだ。


それはどこか神秘的な森の景色。

一粒一滴の雨が木々の葉っぱに降り注ぎ、その表面を洗い流していた。

奥のほうは霧でよく見えないが、何か大きな建物があるような気がした。

心臓がバクバク言っていたはずなのに、いつの間にかそんな鳴りを潜め、僕はその景色を食いみるように、穴が開いてしまうのではないかと思うぐらいにじっと見つめていた。


そして、特出すべきはその森の中。

カメラがズームアップするかの如く森の中へと視点が移動した。


そして、そこに誰かの背中が見えた。

それは、どこかで見たことのあるような、頼りなくて、でも、どこか親しみを持てるような後ろ姿。



ー気が付いたら、そう、ぼくはその森の中にいたんだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「え、こ、ここはどこ・・・?」


さっきまでは確かに僕は僕の部屋にいたはずだ。

普段使い慣れたベットの上で本を読みながらだらだらとしていて、眠気が襲ってきたから目を閉じでそのまま眠ってしまおうとしたその矢先だ。


横になっていたはずの体はいつの間にか起立した場内にあって思わずたたらを踏んでしまう。

周囲を見渡すも、そこには僕の狭くもいとおしい部屋ではなく、うっそうと生い茂る、どこか怪しげな雰囲気を醸し出す森の姿があった。


「なんじゃこりゃ・・・」


明らかに雰囲気がおかしい現状。

空気は確かに部屋のものではなく緑のにおいがつよく、どこか懐かしいような気分もしてくるが、

こんなところ今まで生きた中で来たことどころか、テレビでも見たことがない。


一番近いのはアマゾンの熱帯雨林かもしれないが、今僕の周りにある森はそれともどこか雰囲気が違った。


まず、第一に木々の高さがすさまじく高い。

いや、すさまじくと言ったら語弊があるが、熱帯雨林にあるような木々では少し程度あり得ない高を持っている。

それこそ、シベリアの木のほうが木質としては似ているかもしれないが、しかしその根元には南方でしか育たないような草花がそのつぼみを今咲かせようかと実らせている。

木々の間には意図的か、はたまた自然的に課はわからないが、とげのある植物が通っているのでその間を通り抜けることはできなさそうだ。


はて、これは夢か何かかと思うのがまず最初のことだろう。

しからば、まずすることはこれ一つ。

右手を頬の知覚に持って行き、親指と人差し指でそっとつかむ。


さあ皆さんご一緒に


「い、いたい…」


どうやら夢ではないようだ。

幸か不幸か、痛みが頬を走り思わず話してしますほどにはリアルだったとだけ言っておこう。


「さて、何度かこういった本は何度か読んだことがあるけど…こういったのはたいていまず説明か何かがあるもんじゃないのか?」


自信がお宅であったため、この手の本は読んだことがある。それも、自分もこうして異世界に行ってみたいなどと思いながらだったからそれほど慌てずに済んでいるが。

しかし、それでもやはり心のどこかがざわつくのだ。

ここは危険だ、今すぐ離れるべきだ、と。


その声がいったい何なのかはわからない。

自分の心の声か、はたまた神様のお告げ的な、それても第六感、スペシャルな能力そのいずれかそれ以外か。


ただ、とりあえずこの場を離れたほうがいいような気がするのは間違いではない。

それに、ここにずっと突っ立ていたからといって何かが前転するとも限らない。

ならば、とりあえずは歩を進めてみることこそが正解なのではないだろうかと思う次第だ。


「んじゃ、取り合ずぜんしーん」


声を高らかに、とってもそれほど大きくなく、むしろ自分を勇気づけるような心持で声を上げる。

こういったことを楽しみにしていたけれどもいざ現実に直面してみると思うのは困惑と不安と、そして一つまみの期待しかない。


霧の中をただひたすらゆっくり歩を進める。

息を切らさぬよう、疲れすぎぬよう、何かがあったらすぐに逃げられるように。


幸いにして、その建物にたどり着くまで特にこれといったことはなかった。

せいぜいあったことといえば数個の赤い実を見つけた程度だが、それは今僕のポケットの中で眠っている。


そして、その建物、

森の不自然に道が整備されたところをひたすら前に進んでいると大きな建物が見えてきた。


それはまるで古城。

中世ヨーロッパで作られた、まるでそのようなお城だった。


「これは入れってことなのかな…」


不自然に開け放たれている扉を前に腕を組んで考える。

明らかに誰かに入ってもらうことを前提に扉には閉まらないようにおもりを置いてあるのだが、はてしかし勝手に入ってよろしいものか。

もし中に誰かがいたら。

それが善良な人だったら良いがしかし。


外の景観からするとしばらくだれも使っていないような雰囲気もあるが、しかし実のところ山賊、いわゆる余禄ない人たちが使っている可能生も無きにしも非ずだ。


「も、もしもーし、だれかいらっしゃいますかー?」


と、いうわけでそっと扉の影から中をのぞいてみる。


「…あれ?なんか想像してたのと違うな」


てっきりエントランスホームか何かがあると思ったのだが、そこにあったのは大きな協会の内装のそれだった。


正面のステンドグラスはところどころわれている箇所も見受けられるがそれほど大きな被害を受けているような気配もない。

そして、その下にはいったいの大きな女神像といえばいいのだろうか、それがあった。


いくつも並んでいた椅子の一つに腰かけ、その姿をじっくりと眺める。


部屋の中は特に荒らされた雰囲気もなく、そもそも山賊とて教会を根城にするような罰当たりなことはしまい。それに使っているならもう少し何か人の跡があってもおかしくないとのことでとりあえずつかれた四肢を休息させようとの考えだった。


その像は左下を眺め、背中には翼と思われるものもあった。


いわゆる聖母、というやつなのだろうか。


割れたステンドグラスも、もとはさぞ豪華なものだったのだろうと思わずに入れないほどだ。


そして、ふと気が付いた。

その像の足元に一冊の本が落ちていたのだ。


「これは、呼んでいいのかな?」


場所的に聖書であるかもしれない。

しかし、今現状としては希望的観測のもとここを異世界と仮定しているがその文字を見れば最低でもここが国内かどうかがわかる。


「…って、絵しかねえのかよ」


しかし、残念ながらその本の中には一文字も書かれておらずすべてのページに何かを表した絵が何枚も続けて書かれていた。


「これは、ドラゴン…?」


ぱっと開いたそのページに書かれていたのは一匹の白銀の竜だ。

そして、順にページをめくっていく。

そこに書かれていたのは誠様々な動物の姿だった。


物は普通の動物から始まり、果ては摩訶不思議な動物にまで及んだ。


トリ、魚、竜、亀、トラ、犬、カエル、ペガサス、豚に牛に、なんだかわからない、チョ〇ボの様な動物。

大小さまざま、哺乳類から爬虫類、本当に様々な動物が並んでいた。


共通してたことといえばせいぜいすべてが銀色で塗られていたことだろうか。


そして、その近くには必ず一人の人間が、いや、人と呼べるものがいた。

それもまたいわゆるエルフから始まりドワーフ、普通の人間がいれば、猫耳が生えたものもいれば羽の生えた人、半透明な人がいれば岩に包まれて一瞬人かどうか判別がつかないようなものまでありとあらゆる人がいた。



「ほかにはどんなのが書いてあるのかな」


そう思ってページをめくってみるが、何かが書かれようとしていた白いページから先が何も書かれていなかった。

どうやらこの本は子供のお絵かき長みたいなものなのだろうか。

確かに絵は上手ではあったが、どこか子供が描くような雰囲気も醸し出していた。





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