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4 (異世界)初夜を迎えようとしていますが、お金がありません

 無事にクエストもクリアした。根っこも取った。

 しかし千世の心はすっきりしなかった。てか怒っていた。あの口の悪いお姉さんに対して──。


「ちょっと、俺達にも倒せるって言ってたよね!? めちゃくちゃ強いじゃないですか!」

「いやぁ、ちょっと計算見誤っちまってたわ。すまねぇ」

「すまねぇ、じゃねぇ! 死ぬかと思ったわ!」

「まぁそうキレんなって。倒せたし根っこも入手したんだし、良かったじゃねぇか。ほら、これ報酬の50G。やるよ」

「...ありがとうございます」


 千世にはまだ言いたいことがあった。しかし、千世より身長の高い彼女の威圧感は半端なく...口を閉ざすしか無かった。


「しっかしやるなぁ。そんなヒョロい体して倒しちゃうってんだから、見た目によらねぇなほんと」

「...いえ、倒したのは俺じゃありません。あそこに隠れている...彼女が倒してくれました」

「ん? ──あんなガキが?」

「しかも片足で、一発で」

「...マジ?」


 私を話に巻き込むなと言いたげな視線で千世を見つめるナツ。隠れたってもう遅い。お姉さんは話を聞こうと体を乗り出している。


「なぁ嬢ちゃん」

「は、はいぃっ!!」

「嬢ちゃんがあの食虫植物を倒したってのは本当か?」

「...そうよ」

「ふーん。そりゃすげぇや。もしかしたら冒険者の才能あんじゃね、あんたの娘さん」

「...娘?」


 千世は困惑した。お姉さんは誤解している。


「彼女は娘ではありません。なんてか...仲間です。パーティーの一人です」

「本当か? ──まさか誘拐とかしたんじゃねぇだろうな?」

「してねぇわ!」

「ははっ、まぁ知ったこっちゃねぇけど。それより、もう遅いしさっさとそれを売りに行ったほうがいいんじゃねぇの?」

「あ、そうだ! 行くぞナツ!」


 報酬をしっかりと右ポケットに仕舞い、急いで薬草屋へと向かう。薬草屋は割とそこら中にあった。店構えがしっかりしている薬草屋へと入る。


「すいません、これいくらで売れますか」

「うむ...これは。『イーター』の根っこではないか! 最近在庫が手薄になっておったから助かるわい。しばし待て。すぐに鑑定する」


 おじいさんは根っこを大切そうに受け取り、カウンターの奥へと消えていった。


「あの言い方、あの扱いよう...期待出来そうね」

「今日は良い宿に泊まれそうだな」


 しばらくしておじいさんが戻ってくる。渋った顔をしている。


「おいくらですか」

「うん。ざっと見積もって100Gじゃな」

「「100G!?」」

「1000Gで売れるって聞いたんだけど...」

「そんなのはほんの一握りじゃ。こいつの相場は100Gから300Gくらいじゃ」


 確かにお姉さんは1000Gで売れる『場合もある』と言っていた。言ってる事は間違ってない。が、騙された気がしてならない...。


「100Gでも高くしてやったほうじゃ。これより上げようってんなら帰れ」

「...じゃあそれでお願いします」


 結局手元に有るのはたった150G。想定の約10分の1。これではどこにも泊まれない。


「がっかりね。あんなに苦労して、カミングアウトしてまで頑張ったのに...」

「...今日は野宿だな」

「えぇー。ふかふかのベッドで寝たーい...」


 グルルルル...と空腹を知らせる音が鳴る。


「お腹も空いたし...。ねぇ、どうせ野宿なら150Gで何か食べない?」

「そうだな...お前、肉は好きか?」

「大好きよ」

「丁度あそこに何かの肉が売ってある。あれにしようぜ」


 近づいてみると焼き鳥みたいに肉が棒に刺されていた。鳥の肉では無いようだが、飢えた彼らにとっては肉であれば何でも良かった。

 一本70G。二本買って余ったのは10G。

 千世は貴重なその味を噛み締める。


「──うまい!!」

「ん〜! 塩コショウが効いてて最高! ビールがあれば尚最高ね」

「おっさんかお前は。ん、お前ビール飲める歳じゃないだろ」

「天使には関係ないのよ。あー早く飲みたいわー。ウーロンハイとか、芋焼酎とか」

「ビジュアル的に問題あるからやめろ!」


 串刺しされた四つの肉塊はあっという間胃袋へと吸い込まれていった。当然満腹にはならない。呆然としていた。


「さて、野宿場所を探すか」

「はぁ...嫌だなぁ」


 千世は噴水を見つけた。


「あのへんで寝るか」

「うわぁ。寝づらそう...」

「快適な野宿など無い! 忍耐あるのみ!」


 噴水の石で出来た囲いに身体を寄せてよっかかる。


「ゴツゴツしてて痛い...」

「ははっ。ドMのお前にはぴったりじゃないか」

「ちょっ、バカっ! 声がでかいわよ!」

「誰も見てないから、大丈夫だって」

「でもぉ...」


 いつもはツンツンしている。どちらかと言うと攻撃的なくせにドM。それを隠したがっている姿勢。千世はそんな彼女を愛でるよりも虐めたい衝動が心の奥底から湧いてきた。反応が可愛い。


「そうだ。もういいだろ、スキルの手順教えてくれても」

「駄目駄目」

「だって教えたくなかった理由って、お前の性癖が俺にバレるのが嫌だったからだろ?」

「なっ...よく分かったわね」

「もうバレちゃったんだから良くない?」

「...じゃあヒントを与えてあげる。食虫植物退治に力を貸してくれた訳だし、そのお礼ってことで」

「ヒントかよ。まぁいいや、教えてくれ」

「ヒント! 相手がいないと成立しない行為です。1人では出来ません!」

「...ちっとも分かんねぇ」

「あとは自分で考えることね」


 千世の脳裏にはとある四文字が浮かんでいたが、多分それではない。だとしたらヒントすら与えてくれないはず。

 うーん...さっぱり分からん。


「ふぁ〜あ。なんだか眠くなってきちゃった」

「おう、おやすみ」

「...寝ないわよ、あんたが寝るまでは。私が先に寝たらあんた...良からぬ悪戯をするでしょ」

「しないしない」

「怪しい。顔がそう語ってんのよねぇ」

「そんな勇気無いからホント」

「とにかく私はあんたより先には寝ないから」

「俺はかなり夜型生活だったから、夜には強いぞ?」

「ふん、それが何よ。根比べなら負けないわ」


 10分後。


「Zzz...」

「寝やがった!」


 時刻は時計台を見ると午後11時。ナツくらいだったら寝ても仕方ない時間帯だ。

 薄ら笑いを浮かべ、美味しそうなものでも頬張っているような表情で寝ている。幸せそうな顔である。


「はぃぃ...私は変態です...」


 寝言! 自重しろ!

 これもうとっくに他の天使にドMだってバレてたんじゃねぇの?

 

「...」


 しっかし。じっと見てると本当に可愛い顔だ。本人が良からぬ悪戯をされないか心配するだけの美貌だ。


 千世の幼女の理想像をほぼ満たしている彼女、千世にとって手を出したくない訳がない。

 白いワンピースの上にうっすらと浮かぶ、貧しいがしっかりと曲線を描いている胸のシルエット。少しはだけている肩紐。見える鎖骨。色気のあるうなじ。風でなびくツインテール。

 それでもってM属性なんだから、ちょっかいを出したくない訳がない。


 ──でも、そのような干渉は相手の合意があってこそ。無理矢理なんてものは絶対あってはならない。彼女と仲良くやっていくため、ここは自分を抑えなければならない。


 千世はあえて彼女のいない方向を向いて寝る体勢に入った。なんだかんだ疲れて眠い。


 こうして二人は異世界一日目の夜を迎えた。

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