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2 異世界転移をしたら、早速いいことがありました

 千世が目を覚ますと、見慣れぬ街であった。建物を見る限り明らかに日本ではない。


 そこにはあの天使であり幼女の姿は無かった。まぁ流石に着いてくるわけないか。にしても放ったらかしは酷かろう。何の説明も無かったじゃないか。一人でどうしろって言うんだよ。


 ...ふと思いたつ。そういえばもう『性癖が見えるスキル』が使えるんじゃないか?

 暇だし、お試しで早速使ってみるか。ぐへへ。

 なんて千世が意気込んでいると──。


「あ、危なぁぁぁあああああいっ!!!!!」


 上の方から声が聞こえる。上? なんで上?

 おかしいよな、上から声が聞こえるって。

 その声は次第に接近してくる。千世は良からぬ気を感じた。

 空を見上げてみる。


 そこには雲一つない青空と...見覚えのあるツインテール。

 視力の悪い俺でも認知できる距離に彼女はいた。現在落下の真っ只中であった。


 この状況が意味する事はひとつ──何秒としない内に、俺とこいつは衝突する。


「ストォォォォォォォップ!!!!」

「いやああああああああっっっ!!!?!?」


 ドン!!

 鈍い音が響く。あまりの衝撃の強さに千世はぶっ倒れる。


 頭部に衝撃が伝わったが、千世は気絶せずに済んだ。


 しかしこの場合、気絶していた方が良かったかもしれない。


 千世の顔には幼女のパンツがのしかかっていたからだ。落下の勢いでコロナツインテが千世の顔に尻を乗せてまたがっていたからだ。


 視界一杯に幼女のパンツが広がる。純白。真っ白だ。ガラは無い。ベタなパンツだが、それが良い。

 いや、堪能している場合では無い。これでは息が出来ない。早くどいてくれ!


「はー、いてててて...」


 本人は全く気づいていない。千世は必死に抵抗する。


「んー! んんー!!」

「そんなに悶えてどうしたの...」


 視線を下に向ける。幼女はようやく自分の置かれている状況に気づく。


「んぎゃーー!! なにやってんの!?」

「違う、これは君がだな...!」

「うるさいうるさい!! 最悪、この変態! 悪魔!!」

「ぐはっ!?」


 コロナツインテは千世をポカポカと殴る、千世にまたがったままで。彼女が揺れる度に自分の顔に吸い付くようにパンツが擦れる。体温を、温もりを感じる。不思議と痛みは感じない。...むしろちょっと気持ちいいような。痛みが快感へと変わっていく...。


「はぁ、はぁ...」

「おい。どうして止めるんだ」

「え?」

「足りん、もっとだ! もっと俺を殴ってくれ! もっと昂らせてくれ!」

「いや。私そういうのは趣味じゃないから。どちらかというと...」

「どちらかというと?」

「な、なんでもない!」


 コロナツインテはようやく立ち上がった。

 しかしどうも落胆気味でがっかりしていた。


「いやいや...しかし、また会えるとはな。もう会えないと思ってた」

「はぁ...。私も君と再会してしまうなんて思ってもなかった...」

「ん、どゆこと?」

「天使は異世界に来る必要は無いの。なのに...何を間違えたのか私も、こっちに...。はぁ...本当に最悪」

「そんな落ち込むなって。俺と異世界ライフを楽しもうぜ」

「うぐっ...楽しめるか!」


 やがて幼女の瞳は潤んできた。目に涙を浮かべる。


「嫌だ! 戻りたい! こんな世界やだ!!」

「まさか...泣くんじゃないだろうな。やめろよ、おい!」

「──うわぁぁぁん!! 帰りたいーー!!」


 泣いてしまった。


 ここは街中である。通行人の視線は一斉にこちらを向く。そして、誰もが『あの男が子供を泣かせた』と誤解をする。

 何か無いか。この幼女をどうにか泣き止ませるアイテムは無いか!

 ポケットを漁ってみると──飴があった。レモン味のキャンディー。これだ。


「ほ、ほら。飴あげるから! これで我慢して!」

「ううっ...あめ?」

「レモン味だよ」

「...わかった。がまんする」


 ...それでいいのか!? あっさりと泣き止んだ。


「...みっともないところを見せてしまった...これじゃ天使の威厳もあったもんじゃないわ...あ、この飴美味しい」


 こいつ、思ってる以上に子供だな。天使のくせに。


「しょうがない。戻る方法も見当たらないし、この飴に免じて我慢するよ」

「ふふ...それが良い」

「ただし! 次、私に何かしようとしたら直ちに殺すから」

「殺す!?」

「あんたなんか一秒で終わりよ」

「シャレになんねぇなおい...」


 物騒な会話。しかし、千世はニヤニヤが止まらない。ようやく実感が湧いてきたからだ。この幼女と共に送る異世界ライフが。ハーレムなんぞいらない。この娘と未来永劫幸せでいられたら、何も要らない。


「なぁ、お互いの呼び名を決めようぜ。今後の為にもさ。君も幼女ちゃんとは呼ばれたくないだろ?」

「...うん、そうね。お互いのというかあなたが私の呼び方を改めてくれればそれでいいわ」

「...じゃあ、『ナツ』。コロナツインテを略してナツ」

「人の名前を略すな」

「だって言いにくいじゃんコロナツインテって。長いし」

「...否定はできないけど」

「二択だ! 幼女ちゃんか、ナツ。お前の呼ばれたい方を選べ」

「他のは無いわけ?」

「考えられないな」

「じゃあ──ナツで」

「それじゃ...」


 千世は片手を差し出す。


「よろしく、ナッちゃん」

「なにちょっとアレンジしてんのよ!」

「いいから。握手だ、ナッちゃん」

「ったく、私は天使なのよ? 馴れ馴れしいのよ」


 何だかんだ言いつつ、コロナツインテ──改めナツは千世の片手をしっかりと掴む。


「はい。よろしく、チヨちゃん」

「チヨちゃん!? 今チヨちゃんって言った!? すっげぇ興奮する! もう一回言ってくれ!」

「げっ、言わなきゃ良かった」

「早く早く!!」

「や、やめなさい! ちょっ...どさぐさに紛れていろいろ触ろうとするな!!」

「きゃー、こわーい」

「あぁ、もう...早く天に帰りたい...」

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