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マーシャル・ファンタジー  作者: リクヤ
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プロローグ

初投稿です。拙いところがいろいろ目に入るとは思いますが、生暖かい目で見てやってください。よろしくお願いします。

 


 

 

 現代日本に武を極めた男がいた。その男の名前は椿勇つばきいさみ。ありとあらゆる技の極意を納め、一説には世の中にあるすべての技が使えたのでは?と噂されるほどの男だった。

 彼は数々の偉業を成し遂げた。享年100歳にしてこの世を去るが、死ぬまで現役だったという。彼には弟子はおらず、妻子はおらず。孤独な人生を送っていたらしいと後世に語り継がれる。






 気が付くと少年はどこかの川辺に倒れていた。


「――様!――ウス様!」


 声が聞こえる。まだ目の焦点が合わないができる範囲で声の主を探す。


 呼びかけているのはどうやら可愛らしい少女のようだ。


 体を動かそうにも、いうことを聞かない。少女は少年に問いかける。


「ユリウス様!大丈夫なのですか!?」


「ユリウス?何を言って――!!」


 突如激しい頭痛が少年を襲う。少年は再び意識を手放してしまう。


「――!!――ユリウス様!」


 少女の悲痛な叫びがこだましていた。






 良く晴れた、まだ冬の寒さが残るそんな初春の日だった。


 空は青く澄みわたり、ひとたびその日のしたで寝転んでしまえば、その瞬間にも眠ってしまいそうな程気持ちの良い日だった。


 ただそれは上を見上げた時だけの現実逃避的な安らぎでしかなく、視点を下げて見れば、また現実に戻される。


「…はぁ」


 ここは王国ガーランド。世界有数の大国であり、様々な分野でその国力を発揮している。そのある街道を馬車で揺られながらため息をつく少年がいる。


 見た目はこの国においては特徴的な、前髪がかかるかかからないかぐらいの長さの黒髪に黒目で、身長も170cmいくかいかないかのこの国においてはやや小柄で童顔な少年だった。動きやすそうな長ズボンと長袖のシャツを着ていて、すれ違う女達が振り返るほどの美形ではないがそこそこ見れる顔つきをしている。


 しかし、その身にまとう不憫オーラ? というかどんよりした空気が台無しにしていた。


 彼の名前はユリウス・カミーリア。歳は十二。伯爵家であるカミーリア家の庶子で正真正銘の貴族であるが、そのため息の理由もまたそのためであった。


 そして、その隣で少し呆れた顔をする美しい少女がいた。


「ユリウス様。またため息をついて、あんまりため息ばかりつきますと幸せが逃げていきますよ」


 苦笑混じりにそう言う彼女の名前はサヤ。ユリウスの二つ年上で幼い頃から彼に仕えていた侍女であり、所謂幼馴染みというやつである。


 肩にかかるぐらいのサラサラで綺麗な金髪で茶色がかった瞳をしていて、まるで人形のように可愛らしい。膝まである白いスカートとベージュのセーターを着ている。


「幸せなんてとっくの昔に僕から逃げて行ってしまったよ……」


 ネガティブになりまたため息をつきそうになるが、サヤの茶色の瞳がだんだんとジト目になっていくのを見て慌てて思いとどまる。


「ご、ごめん。気をつけるよ」


「まったくもう。そんなウジウジ後ろ向きなことばかり考えていてはいけませんよ。セントラルに行けば新しい生活が始まるのです。今までのことなんか吹っ切って前向きにいきましょう!」


「なんでそんなにポジティブになれるのか僕は不思議だよ……」






 事の始まりは3日前にさかのぼる。


 ガーランド王国の東端に位置するカミーリア伯爵領の屋敷でそれは起こった。伯爵領は王国でも有数の穀倉地帯であり、隣国のフロム国に対する重要な拠点であり、そこそこ大きな領地でもある。


 その日の朝ユリウスは父であるマグナスに呼び出されていた。


「おはようございます父上。今日もいい天気ですね。僕に何か御用ですか?」


「……おはようユリウス。実はお前に重要な話をせねばならん」


 その言葉を聞いてユリウスは嫌な予感を覚えた。なぜならマグナスは普段ユリウスのことをユウという愛称で呼ぶのだ。それが今はユリウスと呼んでいるからだ。


 その嫌な予感は見事に的中する。


「ユリウス、お前ももう十二歳で、あと三年とすれば成人だ。私はお前をセントラルのアルトガル魔法学校に入学させることに決めた。明日までに荷物をまとめておいてくれ」


 ユリウスはマグナスの言ったことキョトンとしてしまう。


「…はい?父上?何を仰っているのですか?僕が魔法の適正が低いのはご存知でしょう?」


 この世界には魔法が存在する。しかし、魔法が使える魔法使いは十人に一人となく、様々な面で重宝される。


 魔法とは己が内部の魔力を使い世界に対して干渉することである。故に魔力の保有量が多ければ多いほど魔法を扱う上で優秀であるということだ。


―――なに、心配するな。学費は出してやる。―――


 ユリウスの言う魔法の適正とは魔力の保有量のことでありそれは生まれつきの魂が持つエネルギーの量であり、精神力や気力のようなものである。


 遺伝の影響を受けることが多々あり、大体が貴族に現れることが多い(一説には過去の王家の血筋ではないかと言われている)。


 そういった意味ではより優れた家というのはより優れた魔法の遺伝子であるということであり、優秀な魔法使いが生まれることが多く、政治的にも利用されることが多い。


―――なにも一人で行かせようというわけではない。サヤも共に入学させよう。―――


 魔法の適正は下級、中級、上級と3段階に分けられている。貴族が遺伝子を独占しているということで人々のほとんどは下級以下であり下級に届くものもいるにはいるのだがほんの一握りである。


 魔法使い自体の人口が少ないのでその中でも優秀な魔法使いというのはさらに少ない。

 

 大体ピラミッド状になっていて、下級の魔法使いが多数を占め、その次に中級、上級などになるとほとんどいない。過去には戦略級として名をはせた者もいるとは言うがそんな人たちは伝説上の者である。


 ちなみに魔法使いとして成功を収めるには中級程度以上の適正が必要であり、そこに届かない下級の魔法使いは副業として魔法を使用するというのが今の世の中である。


―――もうすでにサヤの了承は得ている。―――


 話を戻すがユリウスの魔法適正が低いのは彼が庶子であるということにつながる。父であるマグナスは上級魔法使いであり、伯爵まで上り詰めたその実力は折り紙つきで、王家からの信頼も厚い。


 正室であるアンとの間に嫡男が生まれ、側室も身籠り、順風満帆であった。


 しかし、彼は女癖が悪く、そして仕えていた東洋系の侍女に手を出してしまいそうして生まれたのがユリウスである。彼の母親は出産の際にこの世を去ってしまった。


 故に貴族の血が薄く、魔法適正も低いということなのだ。加えるなら、魔法学校は名前からして魔法を専門に学ぶところという印象を受けるが、その実は冒険者の育成所となっており、そちらがメインとなる。魔法も高度な魔法を教える部門もあるがごく一部である。


 優秀な生徒は学内で早くから冒険者として身を立てるものも多く、大体の卒業生はそのまま冒険者として生きていく。つまり、貴族にとっては体のいい庶子の追い出し口なのである。


 ようするに、マグナスはユリウスに魔法学校で冒険者として学び、成人したら頑張って生きてくれと遠回しに言っているのだ。


 そのことに気づきユリウスは愕然とする。


「…父上…僕を勘当するということですか」


 ユリウスは絶望とも悲しみともとれる表情で父に問う。


「ユリウス…いや…ユウ君、私とて君にそんなことはしたくない。あいつとのつながりはもう君しかいない。だが、アンとの子ではない君を役職につけることはできないし周りも許さんだろう。勝手なのはわかっている。しかし、こうするしかないのだ…」


 マグナスはひどく悲しそうにそう言う。ユリウスはなんとも言えず従うしかなかった。






 そして今に至る。


「この森を抜ければ目的のセントラルです。ワクワクしますね。行ったことがないのでどんなところなのか楽しみです。」


 サヤは明るく振る舞う。

 

 彼女は捨て子だった。それをマグナスが拾い侍女として育て、ちょうど生まれたばかりのユリウス付きとした。


「サヤも悪かったね。僕なんかに付き合わされて。こんな没落貴族みたいなことになってさ。サヤも自分の人生なんだから無理してついてこなく「ユリウス様!」……ごめん」


 サヤが思わず声を上げる。


「ユリウス様。確かに旦那様は私をユリウス様につけるよう仰ったかもしれませんが、同行を最終的に決めたのは私自身です。そんなことは二度と言わないでください」


 彼女は目頭に涙を溜めながら悲しそうに言った。


「ごめん……いや、ありがとう」


 少し微笑みながらそう言うと、彼女もまた少しだけ微笑み返してくれる。


「お二人さんもうすぐ橋を渡る。そうすればすぐ目的のセントラルだよ。」


 御者の男性がそう言った。中年くらいであろうか、少しぽっちゃりとした体形をしていてそれも合わさり穏やかな雰囲気を纏っている。


「そうですか、ありがとうございます。」


「……貴族の坊ちゃん、そう簡単に庶民に頭を下げるものではないですよ。今は周りの目がないからいいけれども……」


「いえ、僕は貴族でも勘当された身ですから、一般の方々とそう変わりはありませんよ」


「坊ちゃんがそれでいいていうならこれ以上は言いませんがね」


 そう、これからは貴族としてではなくおそらく冒険者として生きていく羽目になるのだ。


 ユリウスはそれを再確認し、不安を胸に抱く。





 馬車が森の中央付近の川を渡ろうと橋にさしかかったころ。ガンッ! と音がして馬車が揺れる。


「なんだ!?」


 御者は驚いて声を上げる。そのまま馬車は横転し、馬車の外へ二人は投げ出されてしまう。


「うわ!」 「きゃあ!」


 二人は地面と接触して呻き声を上げた。


「うっ……サヤ! 大丈夫!?」


「……大丈夫です。いったい何が?」


 起き上がって周りを見渡すと、それはいた。


 2メートルはあろうかという巨体、緑色の一切の体毛のない肌、ギョロついた目―――オークだ。それも3体。


 こいつらが馬車を横転させたのだろう。御者の姿は見えない。すでに殺られてしまったのだろうか。


 全部で六つの目が二人を捉えている。


「ひっ!!」


 サヤは言葉にならない悲鳴を上げる。


「サヤ!」


 ユリウスはサヤを後ろに庇い三体を睨みつける。しかし、不幸なことに後ろは川であり流れも速い。


 だんだん距離が詰まっていく。


―――ブンッ


 一体が拳を振りかぶりユリウスに向けて放つ。後ろにはサヤがいるので避けられない。


 震えながらユリウスは嘆く。


―――どうして……僕に力がないから?……サヤ……ごめんね―――


―――ゴッ!!


 ユリウスは殴り飛ばされ、後ろで庇っていたサヤ共々川に落下してしまう。


「がああああ!!!」「きゃああああ!!」


―――せめて!サヤだけでも!!―――


 最後の力でユリウスはサヤを抱きしめ、下流へ流されていった。




若干手直しをしました。多少は見やすくなったかなと思います。

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