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アリス  作者: 永据 やえか
3/5

私の好きな人

 「先輩、また見てるんですか?」

いつのまに横に来たのか1つ下の後輩た智南(ちなみ)が、私の顔を覗きこんで言った。目が笑っている。

 「え…あ…うん。まぁ、ね」

私は窓から離れながら答えた。

ここは音楽室。4階の端っこにあるこの教室の向かって左の窓からは、ちょうどグラウンドが見渡せる。放課後になると、サッカー部の練習風景が映し出されるのだ。

 「先輩の好きな人って、キーパーの人でしたっけ?」

智南は窓から身を乗り出して今にも飛び出していきそうで、私は慌てて言う。

 「そうやけど、ちなみちゃん危ないよ!止めなさい」

 「うーん…ここからじゃ顔がよく見えないですねー…」

智南は近眼で、眼鏡をかけてはいるが、最近また度が進んだらしい。諦めて窓から身を引っ込めた。ホッと安堵する。

 「ちなみちゃんは陸上部の淳くんが好きなんよね?なんか進ん

 だ?」

 「それがですねー…実は来週の日曜日、一緒にお祭り行くんで すよ!」

智南は目をキラキラさせている。

 「えー!すごいやん!良かったねー」

後輩の恋の進展に、私も嬉しくなる。

 「…まぁ、6人で行くんですけどね」

 「いいやん。がんばってアピールよアピール!ちなみちゃん気

 が利くし、頭いいし、かわいいんやけん大丈夫よ」

 「はい!プライベートで出かけられるだけでも嬉しいんで、他

 の人おってもがんばってアピールします」

智南は興奮気味に頬を赤らめながら、私を見た。眼鏡の奥の丸くて黒い瞳と、線の細い柔らかな黒髪が愛らしい。私が男なら好きになったかもしれない。

 「その意気よ!」

と後輩に微笑み、さぁそろそろ練習再開しないと…と楽器の所に戻ろうとした瞬間、

 「先輩は、どうなんですか?」

と、智南に質問された。さっき私が聞いたからだ。どうって…

 「どうもこうもないよ。何も進展なし。…さ、練習しよ」



 野崎賢介(のざき けんすけ)中学3年生。サッカー部所属。現在のポジションはキーパー。私とは小学生のころからの幼なじみで、口は悪いが根は優しい奴。身長は 175センチ。中学1年生までは私より小さかったのに、最近随分伸びた。ちょっと変な感じ。ちなみに今は違うクラス。

以上、私の好きな人の情報。

 「でも長いよね~アリスは。小学生の時から好きなんやろ?も う何年?」

休み時間は恋バナ率百パーセント。仲の良い友だちと惚れた腫れたの話で盛り上がる。中高生の大半の女子はきっとそうじゃないだろうか。

 「えっと…5年かな」

 「てことは、小5の時から好きやったんや?」

 「うん」

 「告らんの?」

 「いやー…まだ…もうちょっと…」


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