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Blood✝Moon  作者: MaYuRi
5/6

5話

イヴは空に浮かぶ月を見ていた。

どんな想いで見ているのかは、クレイには分からなかった。


「イヴ様、どうかしたのか?」


尋ねると、イヴは首を横に振った。


「何でもありません。…ユエ様はいつこちらに?」


ユエのことが気になっていたのか…とクレイは苦笑いする。

ユエの容姿に見惚れたというわけではないだろう。

彼女はただ純粋に、此処に連れられた理由を知りたいだけだ。


ユエの想いをまだイヴは知らない。

手強いだろうなとクレイは他人事のように思った。


「深夜…だろうな。ユエ様は明るい光に弱いから。カーテンは閉めたほうがいい」


そう言ってクレイはカーテンを閉める。

外を眺めていたイヴは窓からクレイに目を動かす。


「この場所に…明るい光は届かないのですね」


「暗い世界のほうが居心地が良いからな。とくにユエ様は光に弱いから、城も真っ黒に染まっている。なので、外には出ようとしないな」


「でも…あの夜は外に出ていました」


イヴがユエと出会ったあの日。

ユエは確かに外に出ていた。

夜だとしても、月の光も弱いはずなのに…


「どれだけ光が弱くとも…人の血、なければ我々は生きてはいけない。イヴ様もご存じだろう?」


「…えぇ」


人の血が吸血鬼の生きる源だということは知っていた。

だけど…吸血鬼は人から虐げられている。

イヴがいた村人は大半が吸血鬼のことを良く思っていなかった。


「吸血鬼は人から嫌われていても、生きるために危険を冒し、血を求める。ある意味、呪われているとユエ様は時々呟いている」


吸血鬼は永久の時を生きると聞いたことがある。

ユエも…クレイも…グレイも…悲しみを千年以上胸に秘めているのだろうか。


「だが…イヴ様は違う。人と吸血鬼…異形な者でも同じように接するのだな」


「………」


クレイの言葉にイヴは黙ってしまった。

イヴの表情からはなにも感じ取れない。


クレイが何か言おうと口を開くと―――


コンコンッと扉が叩かれる。

クレイはその扉の向こうに声をかける。


「どうぞ」


「…失礼する」


クレイは部屋に入ってきた彼に向かってお辞儀をする。

この城の主でクレイの主君でもある、ユエ

ユエはクレイに軽く片手を上げる。


「顔を上げろ。悪いが、二人きりにさせてもらいたい」


「承知した。何かあればお呼びいただきたい」


クレイは顔を上げ、ふっと微笑む。

部屋を出る途中、ふとイヴを見た。

イヴはユエと目を合わさないように下を俯いている。

そんなイヴの姿に肩をすくめながらクレイは部屋を出た。


クレイが部屋を出た後、ユエは足音を立てずにイヴに近づく。

イヴはゆっくりと顔を上げて、ユエを見た。


「何故…私を此処へ?」


「……帰りたいのか?」


ユエは話を逸らす。


(また…話を…)


ユエの部屋でもそうだった。

結局話を逸らされて、何も聞けなかった。


イヴは知りたかった。

此処に連れてきたわけを。


「帰りたいとかそういうわけではありません。ただ…理由を知りたいのです」


此処に残るか去るか、理由を聞いてから決めたかった。

クレイの頼みを受け入れたものの、少し不安になってきたのだ。

いつまでいればいいのだろう…と。


ユエはゆっくりと口を開く。


「…血が欲しいから連れてきた。それの理由ではダメなのか?」


「…冗談はお止めください。貴方は…そういう方ではないでしょう?」


イヴは知っている。

彼は…優しい。

初めて出会って時から感じていた。


此処に連れてきたのには理由があるとイヴは思っていた。

だが、ユエは答える気がないようだ。

ただ、イヴを見て笑みを零している。


「答えてくれないのですね」


どうしても知りたかった。

ユエに話す気が無くとも、教えてほしかった。

イヴがここにいる理由を…


「貴方は…何がそんなに不安なのですか?」


イヴの言葉にユエの瞳が微かに揺らぐ。

そんなユエの動揺をイヴは見逃さなかった。

追いつめるかのように、ユエに一歩近づく。


「その不安を…私に話してはくれませんか?役に立たないかもしれません。ですけど…貴方の力になりたいのです」


「お前は…優しいな」


ユエはふっと穏やかな笑みを見せる。

出会ってから初めてみる、穏やかな表情

イヴの胸は一瞬、トクンッと高鳴った気がした。


「少しだけ…話そう」


ユエは椅子に座るように勧める。

イヴは少し離れたところにある椅子に座り、話を聞いた。



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