野菜の王国
ぽっかぽっか。
あたたかな春の日差し。
マイさんは、森で迷っていました。
ひらひらと飛ぶきれいな青い色のチョウチョを追いかけていると、いつの間にか森の中に来ていました。
(困ったな…)
と、思っていたら、また、青い色のチョウチョがヒラヒラと飛んでいるのが見えました。
チョウチョを追いかけていくと、森の出口が見えました。
その向こうには、畑が見えました。
走って畑の方へ行ってみました。
広い畑には、お野菜がたくさん育っていました。
畑のそばには、ひざくらいの高さの小さな家があちらこちらにあります。
グー。
お腹がすいてたまらないマイさんは
「あのーすみません」
と、声をかけてみました。
「はい、はい。なんでしょう」
ゾロゾロ。
小さな家から小人たちが出てきました。
みんな、緑色で、まるまるしていました。
びっくりです。
髪の毛も、肌も、服も緑色でした。
そういえば、畑の野菜もみんな、緑色です。
しかし、びっくりよりお腹がすいていたマイさんは
「あのーお腹がペコペコなんです。何か食べさせてもらえないでしょうか?」
と、勇気を出してきいてみました。
「はい、はい。いいですよ」
緑色の小人たちは、ニコニコと畑へ行きました。
「よいしょっ!」
ゴロゴロ転がりながらとっていきます。
春キャベツ、レタス、アスパラガス…。
畑の横の井戸水できれいに洗いました。
「さぁ!どうぞ」
と、マイさんの前に出しました。
「ありがとう…これは野菜ですか?」
「はい!この野菜の王国で、私たちが育てた野菜です」
パクッ!
シャクシャク。ごっくん。
「おいしい!」
パクパク。
マイさんは、全部食べてしまいました。
――あれれれ。
マイさんの手も服も緑色になっています。
小人さんと同じように、頭の先から足の先まで緑色です。
「たいへん!どうしよう」
「ここは、緑の野菜村といって緑色のお野菜しかありません」
「だからみんな緑色なの?」
「それはわかりませんが、そういえば、小川を渡ったところの村には、こことは違う色の野菜があるそうです」
「色の違う野菜を食べると元に戻るかな?」
マイさんは行ってみることにしました。
小川を渡りました。
ジリジリと夏のように暑い日差しです。
畑のある村が見えました。
小さな家からぞろぞろと小人たちが出てきました。
「緑色の人がきたぞ。どうした。どうした」
みんな、赤色で、ペラペラでした。
びっくりです。
髪の毛も、肌も、服も赤色で、紙のように薄いのです。
マイさんは、勇気を出してたずねました。
「隣の村で緑色の野菜だけを食べたら、緑色になりました。この村には他の色の野菜はありますか?」
「赤色の野菜ならありますよ」
「食べてもいいですか?」
「はい、はい。いいですよ」
赤色の小人たちは、ニコニコと畑へ行きました。
「よいしょっ!」
薄い体でスルスルと野菜の間に入り、とっていきます。
トマト、パプリカ、スイカ…。
畑の横の井戸水できれいに洗いました。
「さぁ!どうぞ」
と、マイさんの前に出しました。
「ありがとう」
パクッ!
モグモグ。ごっくん。
「おいしい!」
パクパク。
マイさんは、全部食べてしまいました。
――あれれれ。
マイさんの手も服も赤色になっています。
小人さんと同じように、頭の先から足の先まで赤色です。
「今度は赤色になっちゃった!」
「そういえば、草むらを超えたところの村には、こことは違う色の野菜があるそうです」
「色の違う野菜を食べると元に戻るかな?」
マイさんは行ってみることにしました。
草むらを越えました。
またジリジリと夏のように暑い日差しです。
畑のある村が見えました。
小さな家からぞろぞろと小人たちが出てきました。
「赤色の人がきたぞ。どうした。どうした」
みんな、茶色で、手だけがひょろりととても長いです。
びっくりです。
髪の毛も、肌も、服も茶色で、手だけが長いのです。
マイさんは、勇気を出してたずねました。
「隣の村で赤色の野菜だけを食べたら、赤色になりました。この村には他の色の野菜はありますか?」
「茶色の野菜ならありますよ」
「食べてもいいですか?」
茶色の小人たちは、しょんぼりと顔を見合わせました。
「夏の季節は、まだ育ってないのです。秋になったら、ごぼうやれんこんが育ってます」
「そうですか…」
マイさんがしゅんとしていると
「そういえば、岩を越えたところの村には、こことは違う色の野菜があるそうです」
と、茶色の小人が声をかけました。
「色の違う野菜を食べると元に戻るかな?」
マイさんは行ってみることにしました。
岩を越えました。
リーンリーンと秋の虫の声が聞こえました。
畑のある村が見えました。
小さな家からぞろぞろと小人たちが出てきました。
「赤色の人がきたぞ。どうした。どうした」
みんな、黄色で、足だけがひょろりととても長いです。
びっくりです。
髪の毛も、肌も、服も黄色で、足だけが長いのです。
マイさんは、勇気を出してたずねました。
「隣の隣の村で赤色の野菜だけを食べたら、赤色になりました。この村には他の色の野菜はありますか?」
「黄色の野菜ならありますよ」
「食べてもいいですか?」
「はい、はい。いいですよ」
黄色の小人たちは、ニコニコと畑へ行きました。
「よいしょっ!」
ヒョイッヒョイッと長い足で遠くの畑の野菜もとってくれました。
かぼちゃ、さつまいも、人参…。
畑の横にあるストーブ上のお鍋に入れて蒸しています。
しばらくすると、ふんわり、おいしそうなにおいがしてきました。
「さぁ!どうぞ」
と、マイさんの前に出しました。
ゆげが出ていてアツアツです。
「ありがとう」
パクッ!
ホクホク。ごっくん。
「おいしい!」
マイさんは、パクパクと全部食べてしまいました。
――あれれれ。
マイさんの手も服も全身が、赤色と黄色になっています。
「今度は赤色と黄色のシマシマになっちゃった!」
「そういえば、土手を超えたところの村には、こことは違う色の野菜があるそうです」
「色の違う野菜を食べると元に戻るかな?」
マイさんは行ってみることにしました。
土手を越えました。
ヒュウーッと冷たい北風が吹いてきました。
畑のある村が見えました。
小さな家からぞろぞろと小人たちが出てきました。
「赤色と黄色のシマシマの人がきたぞ。どうした。どうした」
みんな、白色で、とてもとても小さいのです。
びっくりです。
髪の毛も、肌も、服も白色で、親指くらいの大きさしかありません。
マイさんは、勇気を出してたずねました。
「他の村の野菜を食べたら、赤色と黄色のシマシマになりました。この村には他の色の野菜はありますか?」
「白色の野菜ならありますよ」
「食べてもいいですか?」
「はい、はい。いいですよ」
白色の小人たちは、ニコニコと畑へ行きました。
「よいしょっ!よいしょっ!」
とてもとても小さな小人たちなので、大人数で力を合わせてとってくれました。
大根、かぶ、カリフラワー…。
畑の横にあるストーブ上のお鍋に入れて茹でています。
しばらくすると、ふんわり、おいしそうなにおいがしてきました。
「さぁ!どうぞ」
と、マイさんの前に出しました。
マイさんの眉間にしわがよりました。
(どうしよう…)
白色の小人たちは、キョロキョロとお互いの顔を見合わせています。
「どうしましたか?」
(…苦手で食べれない野菜ばかり。どうしよう)
マイさんが困って黙ってしまいました。
白色の小人たちが、オロオロと心配そうに見上げています。
(でも一生懸命とってくれていたし…)
小さな小さな白い小人たちが力を合わせてとっていた姿を思い出しました。
(味がしなくて苦手なだけだし…えぃ!)
マイさんは、ギュッと目をつぶって食べました。
「あれれ!甘くておいしい!」
ホカホカ。ごっくん。
マイさんは、パクパクと全部食べてしまいました。
――あららら。
マイさんの色が元に戻りました!
手も服も全身が元の色です。
「戻った戻った!わーいわーい」
白い小人たちも喜んでくれました。
一人の白い小人が、ずぃっと前に出てきました。
「あの…ひとつお願いをきいていただけますか?」
マイさんは、迷わず答えました。
「はい、もちろん。私にできることなら」
「あの丘を上がったところに、ちょうどあなたくらいの人にピッタリの大きさの家があります。私たちには大きすぎて、怖くて近づけないのです。何の家か確かめてほしいのです」
「わかりました。行ってみましょう」
丘を上がっていきました。
暑くも寒くもなく心地よい風が吹いています。
大きな古い家がポツンと建っていました。
マイさんは、そっと近づいて行きました。
トントン。
扉をノックしてみましたが、返事はありません。
「こんにちは――」
マイさんは、ゆっくり扉を開けてみました。
中は、埃だらけで長く使われていないようです。
中を見て、閃いたマイさんは、掃除をはじめました。
部屋の中も建物の外もピカピカに掃除しました。
そして、トントンと看板をつけました。
『野菜の料理店』
マイさんは看板を眺めてニッコリ笑うと、白の野菜村へ戻りました。
そして、黄の野菜村、茶の野菜村、赤の野菜村、緑の野菜村と戻っていきました。
小人たちに『野菜の料理店』を開店したことを伝えました。
「わーい。わーい。いろんな野菜が食べれるぞ!」
みんな大喜びで、畑でとれた野菜をたくさん持って来ました。
丘の上の『野菜の料理店』では、毎日、小人たちが訪れています。
赤色、黄色、緑色、茶色、白色――。
マイさんも楽しそうに、色とりどりの料理を作っています。
そして、いろんな色のお野菜を食べても、小人たちの元の色は変わることもなく、楽しく食事をしているそうです。
マイさんがひとつだけ野菜の王国に持ってきたものがありました。
イネ村に住んでいたマイさんは、ポケットの中に米の種もみを入れていました。
米の種もみを丘の横で水田を作り、育てました。
その年の秋、はじめて食べるホカホカのご飯に小人たちも大喜びです。
今でも毎日、ご飯と色とりどりの野菜の料理を仲良く食べているそうです。
おわり




