剣山 ― 新たなる旅路の掲示
激闘の余韻がまだ大地に残る中、仲間たちは新たな気配と向き合うことになる。
剣の山系に朝日が染まり、昨夜の舞台があらわになる。
魔界印を背負いし猪たちの亡骸は、朝日を受けて灰へと帰っていった。
アリアとミラは、龍の心臓の前に立つ。
台座に融合するかのように、大岩と一体化した封印は赤く脈打っていた。
「これが……龍の心臓。」
アリアの額に驚きの汗が流れる。
「あの石が……ルクジムのお父さん……。」
ミラが静かに呟く。
無言の沈黙が、しばし続いた。
やがてアリアが振り返り、長たちへ告げる。
「オメガ・ライン一個小隊、二十名を此処の守護警備のため直ちに配備いたします。到着まで、しばらく猶予をください。」
「うむ。わしも結界の再構築に、もうひと頑張りするかのう。」
金長が頷く。
ミラはルクジムの背後から言葉にできない感情を隠すように、そっと左腕を組み合わせた。
「なんだよ、ミラ。」
ルクジムが不思議そうに言う。
「いいから!笑顔、笑顔。」
ミラの視線は、封印と大岩に注がれていた。
「この態勢なら問題なかろう。ヌエ、お主はセシル達と一緒に行け。」
金長の言葉が響く。
「長、何を言います!」
ヌエは突然の発言に戸惑いを隠せない。
祭壇を照らす行燈の明かりが蒼白く揺れ、地脈が和んでいるのが分かる。
「お前が以前から異国の武道に関心を持っているのは分かっておった。」
金長の言葉がヌエの胸に響く。
俯いたヌエが小さく漏らした。
「……慈無様と互角に戦ったラクザム殿の武勇を聞いた時より、好奇心が大きくなっていきました。」
「ヌエ、お主の好奇心は時に災いを招くが――今回ばかりは、役に立つやもしれんぞ。」
複雑な表情のヌエに金長が告げる。
アカとアオトは複雑な表情で見守っていた。
岩に囲まれた空間は、温かな湿度を帯びていた。
「しかし、まだ俺は予知夢を見ていない。最後の封印の場所は、まだ分からない。」
ルクジムの声には焦りが滲む。
「ルクジム。」
セシルがそっと肩に手を置く。
「それはクリアできるかと思います。」
アリアが静かに告げる。
「どういうことですか?」
セシルが問い返す。
アリアが一同を見渡した。
「オメガワンには封印検知センサー――Omega Sensorが装備されています。」
セシルとルクジムの瞳に驚愕が走る。
スーマがすかさず補足する。
「アリアの血液サンプルを解析して、封印との共鳴パターンを抽出。ミラの潜入情報と解析データを基にAI処理を構築したんだ。」
「ワン公の予知レベルには届かねえが、予兆レベルの検知は可能だ。」
「それは……ミラがインターポールの捜査で行っていたアイスランドのことですか?」
セシルがスーマに問う。
「まいったな、オッサンには。推測で言い当てやがった。」
スーマの画面が上下に揺れる。
アリアに、少しの笑みが戻った。
「まだ全ての準備が整うまで、しばらく時間が掛かります。その間にジェネシスで生成した治療ユニットで、河童さんの回復をいたしましょう。」
アカが驚きながら口を開く。
「あんた、そこまで出来るのか。」
「しかしユニットは人間用ですから、どこまで回復できるかは分かりません。でも、しないよりは良いと思います。」
アリアがアオトを見つめる。
「俺りゃー、綺麗な水に浸ってたら、いつか元に戻れるんだぜ。」
アオトは精一杯の強がりを言った。
しかし、その声は微かに震えており、甲羅の薄い部分から、生命力の減退が見て取れた。
――激闘後の夜明けが訪れ、次なる旅路の掲示が示されていく。
「オメガワン ― 大空へ」へ続く。




