オメガ・ライン ― 実力
それは、これまでとは異なる“もう一つの力”の訪れを告げるものだった。
仲間たちが踏み入れるのは、魔術とも科学とも異なる、新たな領域。
剣山の山間は朝が近づき、気温が上がり靄が滲み始める。
一行はオメガワンの格納庫に併設された移動ラボと仮設リビングの前に立っていた。
格納庫にはキャタピラとホバーを内蔵した小型施設が二つ並び、鈍い黒銀のメタリック外装にQRコードと魔法陣の文字が淡く点灯している。
「ほほう!これは凄い設備じゃのう。」
金長が目を丸くして呟く。
「こちらへどうぞ。」
アリアがラボへ導いた。
ラボの窓越しに、いくつかの影が動いている。
全員、戦いの匂いを纏っていた。
「我らの隊員は皆、何かしらオルド・アークとの因縁を持つ者で構成されています。」
アリアの瞳に悲しみが灯る。
重々しい扉が鈍い音と共に開き、全員が中へ入る。
中央に鎮座する円筒型の装置――黒と銀の配色、表面にはΩの紋章とQRコード状の呪符が発光し、周囲にはホログラフィックパネルと浮遊する魔術式が舞っていた。
「これが、このラボ……いえ、オメガ・ラインの根幹とも言える**ジェネシス(Genesis)**です。」
アリアが指さすジェネシスは、中央に『元素抽出コア』を備え、青白い光を放っている。
その光は中心核で脈打ち、まるで呼吸する生き物のようだった。
「スーマ様が基本設計を担当し、魔法陣の理論を応用した有機AIを搭載。大気中の元素を抽出し、物体を生成する次世代3Dプリンタです。」
「無論、既存の物質も材料として利用可能。」
アリアの声に誇りが滲む。
「これは凄いですね……魔術を科学で進化させたような……。」
セシルが息を呑む。
アリアが続ける。
「そしてここで生成される『QRボット』。これが我がオメガ・ラインの装備の根本理念とも言える発明。」
「スーマ様のQR呪符技術理論を移植したナノマシン。自働増殖し、各種センサー機能、カメラ、通信、結界作成、解除が可能。」
「おい、ルクジム……何の話か分かるか?」
ヌエが問いかける。
「いや、半分も分からねー。」
ルクジムの返答に、アカとアオトも静かに頷く。
アリアの目は本気モード。
「このボットをコーティングすることで、耐熱・耐圧・耐衝撃の耐性が劇的に向上し、自動修復も可能。さらに魔術・呪術の壁も突破できる。」
見かねたスーマが割り込む。
「つまりだ、俺たちオメガ・ラインの通常装備――このベレッタM92FなんかにQRボットコーティングすりゃ、銃身の破損や摩耗を気にせず、火薬も装弾もガンガン使えるってわけだ。」
「しかも弾丸は特殊スチール銀製のメタルジャケット貫通弾。呪文刻印付きで魔界印獣でも通用するぜ。」
「他の装備も同様の処理がされていると?」
セシルが尋ねる。
「そうだ!それにより魔界由来の力にも十分対応可能だぜ。」
スーマが画面をグリーンに染めながら返す。
「ともかく、このセシルが納得するのであれば、わしらも認めざるをえんのう。」
金長から微かな笑みが零れる。
「それでは、我らに護衛を任せていただけると?」
アリアが迫る。
「まあ、わし等もいる事じゃし、なんとかなるじゃろう。」
セシルの顔を見ながらそう言う金長の表情は穏やかだった。
「つまり……すごいってことか?」
ルクジムの一言に、ヌエとアカ、アオトが同時に頷いた。
ラボの奥で、警報灯が一瞬だけ赤く点滅した。
『元素抽出コア』の異常な稼働か、あるいは外部からの新たなシグナルか、その意味を知る者はまだいない。
――オメガ・ライン、その力は未知数。
だが、確かに新たな戦いの幕が開こうとしていた。
「剣山 ― 新たなる旅路の掲示」へ続く。




