始動 ― その名はオメガ・ライン
予兆もなく訪れた爆風が、戦いの余韻を一瞬で塗り替えていく。
その中心に現れた影――
星座に寄り添う靄が開け、かりそめの飽和を風が奪う。
静まりかけた空間に、突如として爆風が巻き起こった。
音響の正体が土埃を巻き上げ、境内に舞い降りる。
何か巨大なもの――だが、その姿は確認できない。
前方の空間が、不自然に歪んでいた。
「封印、龍の心臓の守護は私たちに任せて。」
聞き覚えのある声が、轟く。
「何事じゃ!」
金長が眉間に皺を寄せる。
セシルとルクジムは、その声に確かな記憶を呼び起こしていた。
歪んでいた空間が復元し、透明なスクリーンが開けていく。
やがて目の前に、光沢のない黒を纏った巨大な影が姿を現した。
「航空機……? 輸送機か……。」
セシルが呟く。
静かにタラップが下りてくる。
「その姿を、お目にかかるのは初めてよね、セシル。」
女性の声がタラップから響いた。
赤いレザージャケットが濡れた夜闇と同化し、その瞳だけが研ぎ澄まされた刃のように輝いていた。
「……誰でしたかな……。」
セシルが目を凝らす。
「ミラ! なんでここに!!」
目の良いルクジムが、大声で叫んだ。
「……ミラ?」
わずかに喉が鳴り、セシル自身がその音に驚いた。
「相変わらずいい男ね、ルクジム。」
ミラが微笑みながら降りてくる。
「誰なんだ、あのご婦人は?」
ヌエの問いに、アカもアオトも頷く。
「彼女はミラ・カステリ。ICPOの捜査官で顔見知りになる。」
セシルが答える。
「以前は蛇の姿で失礼をいたしました。」
セシルが皮肉を込めて言う。
「守護を任せろとは、インターポールが護衛してくれるのかね?」
ミラは皆の前に歩み寄り、静かに告げる。
「違うわ。インターポールにそんな権限も力もない。私たちは――『オメガ・ライン(Omega Line)』。」
「再会は嬉しいが、話が分からないのだが。」
セシルが問いかける。
「また会えたのに、何がどうなってるんだ、ミラ。」
ルクジムも声を荒げる。
「そこからは俺様が話すぜ。ご苦労さんだったな、ミラ。」
スーマの声に、いつもの軽さとは違う硬質な響きが混じった。
困惑が一同を包み込み、いつしか疲労が忘れられていった――。
「オメガ・ライン ― 新たな力」へ続く。




