剣山 ― 激闘の後
戦いの余熱がまだ大地に残る中、仲間たちはそれぞれの想いを胸に息を整える。
だが、夜はまだ終わらない。
先刻までの雨が嘘のように晴れ、星の瞬く夜に、新月が欠け始めていた。
戦いの終劇に日常が溶け、山間の息吹が静かに戻り始める。
「けっこうギリギリだったぜ……。」
スーマの画面が緑に戻り、安堵の色を帯びて呟いた。
セシル、ルクジム、ヌエ、金長はその場に座り込み、肩で息をする。
安堵の笑みの裏に、深い疲労が隠せない。
セシルの指先は小刻みに震え、血を拭ったまま固まっていた。
ルクジムは和装束の袖を握りしめ、呼吸が乱れるたびに黄金の瞳が弱く揺れた。
「しかし……ルクジムがコードを使うとは思わなかった。」
セシルが静かに言う。
「考えてることは基本、同じなんだよ。オッサンとワン公は。」
スーマが軽口を叩く。
ヌエが鋭い視線を向ける。
「お主は残空を覚えるべきだ! あの姿、慈無様に瓜二つだ。」
「いや!あの力、あの決意。もはや慈無様の息子ではない。慈無様の魂を受け継いだ者だ。」
「いや、いきなり言われてもな……この旅が終わったら考えるよ。」
ルクジムが苦笑しながら答える。
「今回の戦、真に厳しかったのう……。」
金長がしみじみと漏らす。
その言葉に、一瞬の沈黙が一同を包む。
最後の湿気を纏った風が吹き抜け、自然に汗が滲む。
その時――傷だらけのアカが、アオトを抱えて帰ってきた。
「オーイ!」
「カッパー! 大丈夫だったか!」
スーマのスピーカーが割れんばかりに響く。
「なーに、このぐらいじゃまだ死なねえよ、携帯の。」
強がるアオトの甲羅は薄く、皿は渇きかけていた。
ルクジムはアオトの側へ行き、静かに頭を下げた。
「アオト、ありがとう。お前のおかげで勝てた。」
アカの目には怒りでも恐怖でもない、“みんなが生きていることへの安堵”が滲んでいた。
全員、ボロボロ。疲労のピークだった。
セシルが真剣な眼差しで口を開く。
「龍の心臓の所在地は、奴ら――オルド・アークに知られている。……。」
「オルド・アークは……龍の心臓を諦める連中じゃない。」
「無論、我らが守り抜く……と言いたいところじゃが、そうも言いきれん……。」
金長の顔に汗が滲む。
「我らは慢心していた。今回は運が良かっただけかもしれん。我らは無力だ。」
ヌエが肩を落とす。
アカとアオトが黙って俯いている。
「その前に、俺たちがもう一つの封印を手に入れればいい。」
ルクジムが拳に力を込める。
「楽観的だな、ワン公は。」
スーマが笑みを浮かべる。
――その瞬間。
「ブオォォォーーーンッ!」
境内に爆風が吹き荒れ、スーマの画面が一瞬ノイズで白く染まり、全員が反射的に顔を覆った。
その正体は――。
「始動 ― その名はオメガ・ライン」へ続く。




