剣山 ― 星を受け取った者
ルクジムとヌエは傷を癒し、再び立ち上がる。
父の犠牲と仲間の献身が重なり、守護者の覚悟が宿る。
山岳が霊気を孕み、静かに騒めく。
星の明かりしか差さない闇の中、大地に残る微かな温度が靄へと姿を変えていく。
アオトは言葉を添えず、穏やかな表情で星を差し出した。
「良いのか?これはあんたの命だろ?」
ルクジムはアオトを見つめて呟く。
アオトは何も言わず、静かに頷き、もう一つをヌエに差し出した。
「アオト……」
ヌエが言葉に詰まる。
もう一つを差し出そうとしたアオトに、アカが呟く。
「俺は大丈夫だ。回復しても、この二人の速さに付いていけねえ。ここでお前を守るくらいの体力は残っている」
アオトはニコリと笑った。
ルクジムとヌエは目を合わせ、頷いて星を握った。
…
星々が大空を行き交う。
命が芽吹く。
大地は呼吸する。
朝と夜が繰り返し続いていく――。
…
二人の身体を起点に、指先から水玉の光がほとばしるように広がった。
光は筋肉の裂け目を埋めるように流れ、肉を縫い戻すかのように傷口を閉じていく。
ルクジムとヌエの傷とダメージが、見る見る癒えていく。
胸の中が高揚と充実感に満たされていく。
ルクジムの頬を、自然と涙が伝った。
(父さんは、世界のために岩になった。アオトは、俺たち仲間のために命を削っている……俺はもう、逃げも隠れもしない!)
その光景を優しく見守るアオトの甲羅が薄く透け、皿の水が音もなく引いていく。
アカの目が潤む。『アオト…』と誰かが呟く。
「この思い、必ず報いる!」
立ち上がるルクジムの全身に力が漲っていく。
「アカ、アオトを頼む。ルクジム、お前の露払いは俺に任せろ!」
ヌエは炎のような瞳で叫ぶ。
アカが答える。
「アオトは任せろ!長達を頼む。アイツらに吠え面かかしてやるぜ!」
一陣の風が吹き抜ける!
舞い上がる木の葉が震えている。
「退路は俺が作る。お前は後ろに続け、温存しろ!」
ヌエの声は短く鋭く、発した瞬間に彼は疾風のごとく猪群へと突っ込んだ。
「残空・八双飛燕!」
猪たちが一直線になぎ倒されていく。
「ドガガガガッ!」
「まだ礼は言わねえぞ、ヌエ!」
その後を、ルクジムが烈火のごとく駆け抜けた。
二人の後を風が舞い、静と動が入れ替わる。
残った猪たちの瞳が、アカとアオトを捉えていた。
「このアカ鬼様を見くびるなよ!手負いでも、お前らなんかにゃ負けねえぜ!」
曲がった棍棒を構えて、アオトの前に出るアカ。
山鳴りが山びことなって消えていく――希望をつないだ風に乗って。
「最後の砦 ― ファントムの力」へ続く。




