つるぎ町 ― 龍の心臓・守護者
封印の石が龍の鼓動を放つ堂内。
金長狸、アカ、ヌエ――土着の妖たちが姿を現す。
異界か、異国か――。
目を覚ました空間は、文化も匂いも異質で、まるで別の法則が支配しているようだった。
大気は湿り、淡く色づき、肌にまとわりつく。
奥の祭壇の奥、封印の石に、龍の鼓動のような脈動が走る
セシル、ルクジム、スーマの三人の前に、異形の存在たちが立ちはだかっていた。
「いきなり術で陥れるような真似をして、すまなんだな。異国の妖さんたちよ」
老いた狸の顔をした獣人が、穏やかな声で語りかけてくる。
「わしは金長という。四国の妖どもを束ねる役を仰せつかっておる。」
その声には老獪さと品があり、敵意の影はなかった。
セシルは周囲を警戒しながらも、静かに応じた。
「どうやら、我々を敵とは見なしていないようですね。」
セシルが体の埃を払いながら、静かに言葉を返す。
「貴様らが“封印”――龍の心臓を目的にここまで来たことは、承知している。所在の確認だけならまだしも、強奪や持ち帰りの類なら、力ずくで帰ってもらう」
鳥類の顔を持つ獣人が、鋭い眼差しで言い放つ。
「俺たちは、ある組織に封印を集めさせないためにここまで来た。あんたらにそれができるなら、何もする必要はない。だが、その力がないのなら――俺たちに預けてほしい」
ルクジムが鋭い眼光で言葉を放つ。
「あいつら、“契約者”を相手にできると思ってんのか!?」
スーマが画面を点滅させながら、横から口を挟む。
その時、後ろにいた赤い体色の大男が、憤怒の形相で吠えた。
「我らでは龍の心臓を守れぬと言いたいのか?」
「バギン!!」
突如、赤い男が床板を踏み抜き、ルクジムに襲いかかる!
ルクジムは体さばきだけで、その猛攻をかわす。
「こいつ……!」
振り向きざまに、反対の拳が振り下ろされる。
「ガシッ」
その拳を、ルクジムが受け止めた。
ルクジムの爪先が、微かに床板を軋ませる。
アカの熱と質量を、月の光を纏った毛皮が、静かに呑み込んでいた。
「ほう……アカの拳固を顔色一つ変えずに受け止めるか。それに、その前の身のこなし――残空を使えるのか?」
鳥の獣人が興味深げに問いかける。
「なんの話だ? 残空って何だ?それと、こいつに匹敵する拳は他にも知ってるからな」
ルクジムが睨みながら返す。
残空……どこかで、聞いたことがある。
スーマの頭脳が、世界の古い伝承や魔術文献を一瞬で走査する。
「よそ見をするな!」
赤い大男――アカが激怒し、暴れ出す。
「アカ、俺と変われ」
鳥の獣人が割って入る。
「俺はカラス天狗のヌエだ。手合わせ願おう」
ヌエが構えを取る。
「何でもいいが、そんなに時間はないんだ」
ルクジムが先手を打つ。
「!!」
ヌエの姿が、突如として消えた。
「上だ!」
スーマが画面を赤くして叫ぶ。
ヌエは堂の天井付近で浮遊していた。
「限られた空間内で飛翔しますか……なら、私が代わりましょう」
セシルが印を切り、飛び上がる。
重力を無視するように、左右に舞いながらヌエに接近する。
「面白い。残空を見せてやろう!」
ヌエがセシルに照準を合わせた――その時。
低く、地を鳴らすような声が堂内に響いた。
「やめぬか!!」
「剣山 ― 封印守護の意味」へ続く。




