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ナイトコードΩ 【残響の封印】  作者: 神北 緑


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降臨 ― 人工天使

光の奥から迫る“何か”は、

まだ名も姿も持たぬまま、確かな意志だけを帯びて落ちてくる。


グリーンランド海上を進んでいた船舶のGPSが、突如として座標を喪失した。

航行データは数秒間、現実とは無関係な数値を示し――次の瞬間、正常へと復帰する。


船員たちが見たのは、ただ一つ。

頭上を一瞬で通過していった“何か”が放った、目を灼くような光源の残像だけだった。

それは音も衝撃も残さず、まるで「通過した」という事実だけを刻みつけるように、消えていた。


― オメガ・ライン本部 ―

「ベースキャンプ、聞こえる?」

リリアンの声が管制室に響く。

「カーロスの義足、補修と再調整が完了したわ。稼働に問題はない。」


その背後で、スーマがアリアに低く指示を出していた。

「……ルベインホルト・バスターク二世。アラン・リックマン。」

「各国の諜報機関が血眼になっても掴めなかった、オルド・アークのトップの名だ。」

「アリア、これをレルバドール財団経由で、先に国連へ渡していたファイルの“追加資料”として打診してくれ。」


「分かりました。」

アリアは即座に立ち上がる。


スーマは独り言のように呟く。

「後は大義名分をかざせる証拠と理由さえ出来れば、力の国を豪語するあの国は動く!」

「…SSファイル…実証できる証拠を何とか…」

その声は、セシルたちへ迫る脅威を感じ取ったまま、静かに途切れた。


アイスランド

ゴールデンサークル ― アルマンナギャオ

封印《天使の涙》が眠る聖地に、偽りの神の使いが降り立っていた。


網膜を焦がすほどの光。

視界が歪み、空気そのものが圧迫される。


合流を急いでいたヌエも、その異常に足を止める。

「……何だ、あれは。」

「妖気……いや、それとも……狂気か?」

「敵でも味方でも、武でも獣でもない……。」


眩い光は二つ。

だが、その重なりは一つの“意志”として感じ取れた。

ヌエは歯を食いしばり、断層へと駆け出す。

「急げ……!」


「見えた……!」

ベースキャンプで光体を確認したカーロスが、無理に起き上がろうとする。

「俺も行く! 早く……足を起動してくれ!」


ギャオ最深部。

カリースと“天使”が、静かに対峙していた。


「……カリース・ヴァングレア。」

天使の身体に組み込まれた通信装置から、冷たい声が響く。


「パクトユニットは、本時刻をもって解体とする。」

「お前も用済みだ。神の裁きを受けよ。」


「……老害どもが。」

カリースは感情を削ぎ落とした声で吐き捨てる。

「よりにもよって、“神”を名乗るか。」


その後方。

ルクジムの体毛が、天使の光に呼応するように強く輝き始めた。

同時に、ジョーの胸の傷跡が、脈打つように光を放つ。


二人の表情には、敵意と恐怖、そして抗いがたい“理解”が螺旋のように絡み合っている。


「……間違いない。」

セシルの声が震える。

「ルクジムとジョーの共鳴……。」

「あの身体には……カリースの言った通り、ヴェイルの血が使われている……。」


光は増す。

だが、それは希望ではない。


「……こんな存在を……どうしろって言うんだ……。」

エドの声は、ほとんど絶望だった。


「ルクジム……。」

ミラが、震える彼の肩にそっと手を置く。


人工天使の光は、絶対的な“拒絶”としてギャオを覆い始めていた。

膝が重くなる。

思考が鈍る。

世界そのものが、力を失っていく感覚。


――しかし。

その中で、ただ一人。

ヨハンスだけが、封印の前へと歩を進めていた。


百年守り続けた境界。

生と死、現世と冥界を隔てる要石。

「……ここは、渡さぬ。」


裂けたオーロラの下、人が神を模した“天使”は、ついに完全な形で世界に降臨した。


そして――

世界は、静止する寸前まで追い詰められていた。



「偽りの神罰―輝くほどに漆黒に染まりし者」へ続く。

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