表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナイトコードΩ 【残響の封印】  作者: 神北 緑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/120

怨恨、そして ― 厄催

夜空を裂いた閃光の余韻が、まだ大地に残っていた。

静寂の奥で揺らぐ影は、確かに次の脈動を孕み、

その先に待つ“もう一つの戦い”へと、世界をそっと導いていく。


SNSのタイムラインが目まぐるしく更新される。

無関係な場所から切り取られた映像と共に――**「人工衛星の墜落?」**の文字が躍っていた。


広範囲に引き裂かれた雲海は、静寂の時を取り戻していく。

閃光が咆哮となり轟いた大地では、耳鳴りと共に音が戻り、焼き付いた網膜に色が滲み始める。


霞む視界で状況を確認しようとするセシルとルクジム。

通信はまだ回復していない。


紫の巨体――ヨハンス・ギーツが横たわっているのが見えた。

微かに腹部が上下している。


「先ほどの岩石は、やはりトロルでしたか……あの体で無茶をしますね。」

セシルが呟く。


「ううっ……奴は、カリースはどうなった!?」

ルクジムが辺りを見渡す。


風の舞う音が強くなる。

耳鳴りのせいか――いや、違う。

地を這う稲妻が集まり、黒いシルエットが形を成していく。


カリース・ヴァングレア。

彼女は先ほどの大激突を耐え抜き、先に立ち上がっていた。


「おのれ……」

セシルの背筋に冷たい戦慄が走り、絶望が過る。


「なら今度は俺が!」

戻らない感覚のまま、金色のオーラを吹き上げるルクジム。


緊迫が時間を止めた瞬間、通信が回復した。


「やめろワン公!勝算ってのは作ってから実行がセオリーだぜ!」

スーマの声が二人を諫める。


カリースは動かない。

その表情は荒い息をし、額から鮮血を垂らしていた。

「子虫ふぜいが……やってくれたな。」

虚ろな瞳が痙攣し、雷が静かに集約されていく。


「モニター越しにも分かる。奴は苦痛を感じている。ダメージを負ってる。」

スーマの声が弾む。


「どうやらバイパーと同様、パワーに全振りしてるタイプか……再生が遅え。」

だが、カリースの頭上には再び雷雲が形成され始めていた。


「今決着をつけないと、チャンスは無い!」

ルクジムが叫ぶ。


「待て!さっきのナイトコード còig は消耗させるのが狙いだ。それは果たした。あと20秒……いや15秒、我慢しろ!」

スーマの声が遮る。


「スーマを信じよう。心を静めろ、ルクジム――最大の攻撃のために。」

セシルが見つめる。


…13

(水面を揺らすな。一滴の波紋になれ。その流れは無限に広がる。)

ヌエの言葉を思い返し、ルクジムは深く息を吸い込む。

…11

カリースは嵐の拳を再構築していく。

その表情には焦りの色が滲んでいた。

…9

「スーマ、頼むぞ。」

セシルが奥歯を噛みしめる。

…7

カリースの左右7~8メートル、二つの影が走り寄る。

…5

「間に合った!」

スーマが叫ぶ。

…3

「ザザンッ!」

二つの影――エドとミラ!

息を切らせながら駆け付けた二人は、オメガブレードを大地に突き立て、スイッチを入れて飛び退く。

…1

「これで終わりだ!」

カリースの手に嵐の拳が形成され、スパークする。

…0

「バリバリバリ――ッ!」

轟音と共に放たれたはずの雷は、カリースの眼前で左右に割れ、空中に吸い込まれていく。


「何!」

カリースが目を見開いた。

指先から放たれた必殺の雷光が、意思を失った蛇のように軌道を逸らした。

自身の絶対的な力が「物理法則」に屈した瞬間、彼女の支配に初めて致命的な穴が開いた。


その真下で、オメガブレードが蒼白く発光していた。

柄の先から細長い光の筋が揺らめいている。


「なるほど……読めた!ナイトコード ceithirキーヒリ!」

セシルが高らかに叫ぶ。

瞬間、時が静止する。


雪と氷の水分が急激に奪われ、乾燥の加速でセシルの唇が裂け血が滲む。

前方で急激な温度差による歪みが生じ、霧状の光が集約されていく。


ルクジムの肌がピリピリと引き連れ、喉が焼けるように渇く。

セシルの魔術が周囲の水分を根こそぎ喰らい、極寒のアイスランドに一瞬だけ**『死の砂漠』**が出現したかのようだった。


叫びと共に射出された ceithir は、カリースの頭上の雷雲を直撃した。


「シューッ!」

急激に冷やされた空気は上昇気流を失い、嵐はただの風に変容する。


「ルクジム!」

セシルの声と同時に、ルクジムが動いた。


「月影の呪牙ハレーションナイト――極!」

残像だけを残し、金狼がカリースの対角線を駆け抜ける。


「パパパパパーンッ!」

衝撃音が響いた時、ルクジムはすでにカリースの背後に立っていた。


だが黄金の輝きは失われ、琥珀の瞳が銀に戻る。

膝から崩れ落ち全身の力が、地面に吸い取られていく感覚だけが残った。


振り返るカリース。

笑みは無い。


だが、その体から徐々に打撃痕が光を放ち、形を現す。

一つ、二つ……九つ!


「ふふ……よく思い出したわ。」

そう呟き、カリースは大地に崩れ倒れた。

雷が、思うように応えてくれない――その感覚だけが、妙に鮮明だった。


「ズズズーンッ!」

その轟きは、遠い過去へと響いていく。


「大丈夫か?」

ミラとエドが駆け寄る。

後方にジョーの影も見える。


「ルクジムも無事みたいだぜ。」

エドが安堵の顔で話す。


ふとオメガブレードに目をやると、光の筋が細い線であることに気付いた。

その先に、不自然な歪み――QRのステルス機能。


「やっと気付いたか。誘雷用の電界センサー+サージアブソーバ搭載ドローンだ。」

スーマの通信が入る。


「大地に差したオメガブレードのスイッチで電界変動を発生させ、地表へアースする。

まあ、特性の避雷針だ。オッサンが速攻で気流を遮断して嵐を消してくれたから、スムーズに行ったぜ。」

少し力の抜けた声でスーマが呟く。



ギャオを照らすオーロラが過去から流れ、今を繋ぎ、未来へと旅立っていく。

疲弊の頂点に居る友たちの顔を、淡い光が静かに照らしていた。


しかし――断層の裂け目が形を変えるほどの衝突の影に、もう一つの戦いが続いていた。


「ギャオ ― 呪縛解放」へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ