オルド・アーク ― 黒い暗躍
それぞれの胸に去来する想いが沈黙を満たす中、
遠く離れた場所では、別の歯車がひそやかに動き始めていた。
世界の広大さが垣間見える成層圏に、一本の雲が線となって刻まれていく。
ステルスモードのオメガワンは、飛行機雲の痕跡だけを置き去りにしていた。
セシルが話し終えた機内には、悲しい沈黙が包んでいた。
ミラは目を赤くし、窓の外を見つめる。
通信に声を出す者もいない。
スーマとアリアは、小型機への搭乗を手配し始めていた。
ヌエはジッと目を閉じ、シートで禅を組む。
(志を貫き、己を律する……まごうことなき武人。わが友の決意に涙を見せるわけにはいかぬ。)
ルクジムは無を睨みつけ、思いを馳せる。
(俺はセシルに会うまで、自分を疎んで世界から隠れ続けた……そんな自分が恥ずかしい。
もう俺は、父と母からのバトンを離さない!世界の構造は変えさせない。)
各々の思いを乗せて、オメガワンは北を目指す。
その頃――オルド・アーク本部。
会議室内、黒曜石の壁は怨念を吸い、刻印文字を不気味に灯らせていた。
カウンシル・オブ・アーク――三名の幹部による最高意思決定機関。
そのうち、休眠状態のカリースを除いた二名が静かに議論を交わしていた
「……例の実験体は順調なのか?」
「ああ。そう報告を受けておる。」
「ふむ。そろそろパクトユニットの解体準備を進めるか……。」
「カリースのおかげで契約者製造は劇的に進んだが、あの日――遺跡襲撃でヴェイルの血を絶った後、奴は悪魔の自我を取り戻した。」
常に遠くを見ている思索系の男の声が冷たく響く。
「本来、契約者は意思を持たぬ傀儡のはずが……以降、奴の儀式で生まれた契約者は、すべて悪魔の意思を宿している。」
窓際の男が続ける。
「バレンはともかく、ネイビー、ラデム、バイパー……契約者部隊パクトユニットは、実質トップのカリースの命令しか聴かぬ。」
実務的・軍人系のもう一人が答える。
「実験体が実用段階に入った以上、使い勝手の悪い駒は排除せねばな。」
「それに――魔界のトップ『ノクト・アビス』を実体化させる必要も、実験体があれば不要だろう。」
窓越しに呟く男。
「ノクト・アビスを実体化させても、地上を魔界に変えるだけ……代償がでかすぎる。」
後ろから低い声が返る。
「カリースはそのために我々に従っているだけだが……目覚めと共に引導を渡してやるか。」
「駒は出そろってきたしな。」
不敵な笑みを浮かべる二人の顔には――デビルズより邪悪な表情が張り付いていた。
「ゴールデンサークル(アルマンナギャオ) ― 天使の涙」へ続く。




