第9章:勇者との決戦
黒曜の魔核を手に入れた僕とミリナは、レオンの追撃を振り切り、魔素の源流たる「天の塔」へと向かった。レオンは、僕たちが全ての魔核を集めたことを知り、その力を奪うために、僕たちを追ってきたのだ。天の塔は、雲を突き抜け、天空へと伸びる巨大な建造物だった。その頂上からは、膨大な魔素が世界へと流れ出し、世界の魔素の循環を司っている。
塔の頂上に辿り着くと、レオンが待ち構えていた。彼の顔には、狂気と憎悪の表情が浮かんでいる。
「ロゴ、その魔核を俺に渡せ! 俺こそが、真の勇者なのだ!」
レオンは、そう叫び、聖剣を構えて僕に突進してきた。彼の聖剣からは、まばゆい光が放たれ、塔の空間を照らし出す。
「レオン、貴様の愚かな野望は、ここで終わらせる!」
僕は、これまで手に入れた四つの魔核——翡翠、紅玉、蒼玉、黒曜——を、全て掌に集めた。四つの魔核が、僕の手の中で統合され、一つの大きな輝きを放ち始めた。
その瞬間、僕の体から、宇宙の光を凝縮したかのような、圧倒的な魔素の波動が迸った。僕のスキルは、【至高の魔核】へと覚醒したのだ。
僕の全身が、まばゆい光に包まれる。レオンの聖剣が、僕の体を切り裂こうと迫るが、僕は、ただ腕をかざしただけで、彼の攻撃を弾き飛ばした。
「な、なんだと……!? 貴様、一体……!」
レオンは、驚愕の表情を浮かべた。彼の瞳には、僕の姿が映し出されている。僕の力は、もはや彼が理解できる範疇を遥かに超えていた。
僕は、翡翠の魔素で生成した剣を構え、レオンへと向かっていく。一閃、二閃。僕の剣は、レオンの防御を容易く突破し、彼の鎧を切り裂いた。レオンは、まともに攻撃を受けることもできず、次々と打ちのめされていく。
「くそ……くそおおおっ! 俺は勇者だぞ! 俺が最強のはずだ!」
レオンは、血を吐きながら叫んだ。彼の聖剣は、すでにボロボロになり、輝きを失っていた。僕は、彼の首元に剣を突きつけ、動きを止めた。
「レオン、貴様の傲慢さが、貴様をここまで貶めたのだ。勇者とは、力を誇示する者ではない。人々を守り、世界を愛する心を持つ者だ」
僕の言葉は、レオンの心に突き刺さったようだった。彼の瞳から、狂気の光が消え、深い絶望と、そして微かな後悔の念が浮かび上がった。
「ロゴ……俺は……」
レオンが、何かを言おうとした。しかし、僕は、彼に背を向け、剣を消滅させた。
「貴様の道は、貴様自身で見つけろ。僕には、貴様を導く義務も、権利もない」
僕は、そう言い放ち、ミリナの元へと向かった。ミリナは、僕の勝利を喜び、静かに微笑んでくれた。
レオンは、僕の背中を呆然と見つめていた。彼の表情には、もはや傲慢さの欠片もなく、ただ虚無感が漂っていた。彼は、敗北を認め、改心の兆しを見せているようだった。しかし、僕は、彼に甘い言葉をかけるつもりはなかった。彼が、自分自身の力で、過ちと向き合い、新たな道を見つけるべきだと思ったからだ。
天の塔の頂上で、僕たちの長い戦いは、ついに幕を閉じた。