第6章:紅玉の試練
最初の魔核、紅玉を求めて僕とミリナは、灼熱の火山地帯へと足を踏み入れた。一歩足を踏み入れるごとに、足元から熱気が立ち上り、空気を焼くような硫黄の匂いが鼻を突く。視界の全てが赤と黒に染まり、燃え盛る溶岩の川が、まるで生き物のように蠢いている。ここは、まさに紅玉の魔素が過剰に満ちた場所だった。
「ロゴさん、この地の魔素は非常に荒々しいです。火属性の魔物が多く生息していますから、注意してください」
ミリナが、僕に忠告してくれた。その言葉通り、僕たちの行く手には、全身から炎を噴き出す巨大な魔物が次々と現れた。
「【翡翠の魔核】!」
僕は、スキルを発動し、翡翠の刃を生成した。炎の魔物は、その熱で僕の体に触れることすらできない。僕は、炎の攻撃を翡翠の盾で防ぎながら、魔物の懐に飛び込み、一刀両断に切り伏せていく。
しかし、この地の魔素は、僕の想像以上に強大だった。翡翠の刃で魔物を倒すたびに、体内の魔素が消費されていくのが分かる。このままでは、いずれ限界が来る。
「ロゴさん、この魔素の過剰な状態を利用できないでしょうか?」
ミリナの言葉に、僕はハッとした。そうだ、僕の【翡翠の魔核】は、魔素を操るスキルだ。過剰な魔素を、僕の力に転換できれば……!
僕は、全身の魔素を集中させた。すると、周囲に満ちる紅玉の魔素が、僕の呼びかけに応えるかのように、僕の体へと流れ込み始めた。それは、まるで熱い溶岩が僕の血管を巡るかのような感覚だった。
「うおおおっ!」
僕の体から、翡翠と紅玉の光が混じり合った、新たな輝きが放たれた。翡翠の刃に、炎の力が宿る。僕は、その刃を振り下ろすと、これまでとは比べ物にならない威力の攻撃が、炎の魔物を消し飛ばした。
「すごい……ロゴさん、紅玉の魔素を制御している!」
ミリナが驚きの声を上げる。僕は、新たな力の使い方を習得した喜びを感じながら、さらに奥へと進んでいった。
その時、僕たちの背後から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「見つけたぞ、ロゴ! その紅玉の魔核は、俺がいただく!」
レオンだった。そして、彼の隣には、サリアの姿もある。彼らは、僕たちが魔核を集めていることを知ったのだろうか。
「まさか、貴様らがここまで来るとはな」
レオンは、僕の姿を見ると、再び傲慢な笑みを浮かべた。サリアは、以前とは異なり、僕の力を警戒しているようだった。
「お前たちが魔核を悪用するつもりなら、渡すわけにはいかない」
僕が言い放つと、サリアが前に出た。
「ロゴ、レオン様は魔王を倒すために魔核の力が必要なんだ。貴様のような役立たずには、理解できないだろうがな」
サリアの言葉に、僕は怒りを覚えた。彼女はまだ、僕を「役立たず」と見下している。
「サリア、貴様はレオンの腰巾着だな。レオンが何を企んでいるか、本当に分かっているのか?」
僕の言葉に、サリアの顔色が変わった。僕は、一瞬の隙をついて、サリアのローブの裾を掴んだ。すると、その手から、小さな宝石が地面に落ちる。それは、魔核の力を感知するための道具だった。サリアが、僕たちの後を追って情報を流していたのだ。
「サリア、お前……!」
レオンが、サリアを睨みつける。サリアは、顔を真っ青にして僕を見つめていた。僕の言葉と行動は、彼女の裏切りを暴き出したのだ。
「レオン、貴様の本性は、もう俺には見えている。魔王討伐など建前だろう。貴様は、魔核の力を独占し、世界を支配したいだけだ!」
僕は、レオンに真っ向から問いかけた。レオンは、図星を突かれたかのように顔を歪め、逆上した。
「黙れ、ロゴ! 貴様ごときに何が分かる!」
レオンが、聖剣を構えて僕に突進してきた。僕は、冷静に翡翠と紅玉の力を宿した刃を構える。
「残念だったな、レオン。僕の力は、貴様の想像を遥かに超えている」
僕は、瞬時にレオンの背後に回り込み、彼の首元に刃を突きつけた。レオンは、完全に僕の動きについていけていなかった。彼の顔には、驚愕と屈辱の表情が浮かんでいた。
「くっ……! ロゴ、この借りは必ず返す!」
レオンは、悔しそうに歯を食いしばり、サリアを連れて撤退していった。サリアは、僕に申し訳なさそうな視線を向けていた。
僕は、再び勝利を収めた。紅玉の魔核を手に入れ、魔素の新たな使い方を習得した。そして、レオンとの因縁は、より一層深まった。