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第4章:過去の影

 ルミエール村での英雄としての歓迎は、僕の心に温かい光を灯してくれた。ミリナは、僕の【翡翠の魔核】の力について、詳しく教えてくれた。

「ロゴさんのスキルは、古くから伝えられる『魔核使い』の力と酷似しています。魔核は、世界の魔素のバランスを保つ重要な存在ですが、過去にはその力を悪用し、大規模な戦争を引き起こした者もいました」

 ミリナの話に、僕は息を飲んだ。僕の力が、世界を壊すことにもなりかねないのか。力を持つことへの喜びと同時に、責任の重さを感じた。僕は、自分の力をどう使うべきか、深く考え込んでいた。

 その日の午後、村に不穏な気配が漂い始めた。遠くから、聞き覚えのある声が聞こえてくる。まさか、と嫌な予感が僕の胸を締め付けた。

「おい、この村の聖地にあるという翡翠の魔核はどこだ? 勇者である俺が、その力を回収してやろう」

 レオンだった。金色の髪をなびかせ、輝く鎧をまとった勇者レオンが、サリアを伴って村の広場に立っていた。村人たちは、彼らの威圧感に怯え、後ずさりする。レオンは、僕の姿を見つけると、嘲るような笑みを浮かべた。

「おお、ロゴではないか。こんな辺鄙な村で何をしている? まさか、魔核の力を手に入れようとでもしているのか? 貴様のような役立たずには、分不相応な力だ」

 レオンの傲慢な言葉に、僕の胸には怒りがこみ上げてきた。しかし、僕は感情に流されない。冷静に、毅然とした態度でレオンに立ち向かった。

「レオン、この魔核は村の守り神だ。貴様のような者に、私利私欲のために利用させるわけにはいかない」

「ほう? 威勢だけはいいな、ロゴ。貴様の地味なスキルで、この俺に勝てるつもりか?」

 レオンは聖剣を抜き放ち、僕に切りかかってきた。僕は、【翡翠の魔核】を発動し、翡翠の盾でレオンの攻撃を受け止める。ガキン、と金属音が響き渡り、レオンの聖剣の刃が、僕の翡翠の盾に弾かれる。

「なっ……!?」

 レオンは驚愕の表情を浮かべた。彼の攻撃は、僕には全く通用しなかった。僕は、翡翠の刃を生成し、レオンの懐に飛び込む。レオンはかろうじて後方に跳び退き、僕の攻撃をかわした。

「貴様、いつの間にこんな力を……!」

 レオンの顔に、焦りの色が浮かんでいる。僕は、何も言わずに彼を睨みつけた。サリアは、レオンの異変に気づき、戸惑った表情を浮かべていた。ミリナは、僕の隣で静かに僕を見守ってくれている。彼女の視線が、僕の心を強くする。

 僕は、レオンを殺すつもりはなかった。ただ、彼に僕の力を認めさせたかった。僕は、軽く小競り合いを続ける中で、レオンを翻弄した。彼は次第に冷静さを失い、焦りから攻撃が単調になっていく。

「ちくしょう! 貴様のような奴が、なぜ……!」

 レオンの叫びが、村に響き渡る。僕は、翡翠の刃を彼の喉元に突きつけ、動きを止めた。

「レオン、僕はもう、あの時の僕じゃない。貴様の相手をしている暇はないんだ」

 僕は、翡翠の刃を消滅させると、レオンに背を向けた。レオンは、屈辱に顔を歪ませながら、僕の背中を睨みつけていた。サリアは、何も言わずにレオンの傍らに立ったまま、僕を見つめていた。

 「ざまぁ」という言葉が、頭をよぎる。しかし、僕の心は、ただ静かだった。僕の旅は、ここからが本番なのだ。

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