第3章:スキルの覚醒
翡翠の湖の魔素の暴走は、僕の想像を遥かに超えていた。湖畔には、魔素に汚染された魔物たちが跋扈し、村に迫ろうとしていた。ミリナは、僕の能力が鍵だと信じて、静かに祈りを捧げている。彼女の信頼が、僕の背中を押した。
「ミリナ、僕はやるよ!」
僕は、【魔素吸収】を最大限に発動した。湖の中心にある巨大な翡翠の結晶が、僕のスキルと共鳴し始める。体中に膨大な魔素が流れ込み、まるで僕の血管を駆け巡るかのように熱くなる。
その瞬間、僕の体から、眩いばかりの翡翠色の光が放たれた。それは、以前の【魔素吸収】とは比べ物にならないほど強力なものだった。光が収まると、僕の意識の中に、全く新しいスキルが刻み込まれていた。
【翡翠の魔核】。
そう、僕のスキルは進化を遂げたのだ!
ただ魔素を吸収するだけだったスキルが、魔素を結晶化し、意のままに操る力へと変貌した。僕は、右手を前に突き出す。すると、掌から翡翠色の結晶が生成され、鋭い刃の形を取った。次に、左手で防御の姿勢を取ると、瞬時に強固な翡翠の盾が現れる。
「これが……僕の本当の力……!」
驚きと興奮が、僕の全身を駆け巡る。しかし、喜んでいる暇はない。魔物たちが、雄叫びを上げて村へと向かってくる。
「ロゴさん、村が!」
ミリナの声が、僕を現実に引き戻した。僕は翡翠の刃を構え、魔物の群れへと飛び込んだ。
翡翠の刃は、魔物の分厚い皮膚を容易く切り裂いた。魔物たちの攻撃は、翡翠の盾によって完璧に防がれる。僕は、まるでダンスを踊るかのように、流れるような動きで魔物を切り伏せていく。一撃、また一撃。翡翠の光が乱舞し、次々と魔物を撃破していく。
かつてレオンに「役立たず」と嘲笑された僕が、今、圧倒的な力で魔物を一掃していた。村人たちは、呆然とした表情でその光景を見守っている。
全ての魔物を倒し終えると、僕は静かに翡翠の刃を消滅させた。村人たちが、歓声を上げて僕の名前を呼んだ。
「ロゴ様!」「ありがとうございます、ロゴ様!」
僕は、英雄として迎え入れられていた。ミリナは、僕の傍に駆け寄ると、その翡翠色の瞳を潤ませながら、僕を見上げていた。
「ロゴさん……貴方は、本当に『真の力』に目覚めましたね」
ミリナの言葉は、何よりも僕の心を癒した。レオンに追放され、絶望の淵にいた僕が、今、この村で、ミリナに、そして村人たちに認められている。僕の心に、温かい光が灯った。この力は、誰かのためになる。この力で、僕は世界を変えられるかもしれない。僕は、ミリナと目を合わせ、静かに頷いた。