第10章:新たな均衡
天の塔でレオンを打ち破り、全ての魔核を統合した僕、【至高の魔核】の力を宿す者となった僕は、世界に満ちる魔素の暴走を完全に鎮めることに成功した。世界は、再び穏やかな光に包まれ、魔物たちの活動も鎮静化していった。世界の均衡は、僕の手によって取り戻されたのだ。
僕とミリナは、共にルミエール村へと戻ってきた。村人たちは、僕たちの帰還を、まるで救世主を迎えるかのように歓喜の声を上げて迎えてくれた。村の広場では、祝宴が催され、村人たちの笑顔が、僕の心を温かく満たした。
「ロゴ様、本当にありがとうございます!」
「ロゴ様のおかげで、村は平和を取り戻しました!」
村人たちの感謝の言葉が、僕の耳に心地よく響く。かつて「役立たず」と追放された僕が、今、彼らの英雄として称えられている。この感覚は、僕が今まで感じたことのない、かけがえのないものだった。
祝宴の途中、ミリナが僕の隣に静かに座った。
「ロゴさん、本当に素晴らしい力を手に入れましたね。貴方は、間違いなくこの世界の救世主です」
ミリナの翡翠色の瞳が、僕を見つめる。その瞳には、僕への深い信頼と、そして温かい愛情が宿っていた。
「僕だけの力じゃない。ミリナがいてくれたから、ここまで来れたんだ」
僕は、ミリナの手をそっと握った。彼女は、僕の可能性を信じ、常に僕を支えてくれた。彼女がいなければ、僕はきっと、途中で挫折していただろう。
「ロゴさん……」
ミリナは、はにかむように微笑んだ。
後日、王国から僕に「勇者」の称号が与えられるという話が来た。しかし、僕はそれを断った。
「僕は、勇者じゃない。ただ、僕にできることをしただけだ」
僕が求めていたのは、名誉でも権力でもなかった。僕が求めていたのは、自分の存在意義を見つけ、誰かのために力を使うことだった。
「僕たちは、まだ旅を続けるよ、ミリナ」
僕は、ミリナに言った。
「魔核の力を完全に理解し、世界の平和を維持するためにも、僕たちの冒険は終わらない」
ミリナは、僕の言葉に嬉しそうに頷いた。
「ええ、ロゴさんとなら、どこへでも」
僕は、ポケットから翡翠の結晶を取り出した。それは、僕が最初に力を覚醒させた、翡翠の湖の魔核の欠片だった。この結晶が、僕の旅の始まりであり、そして、僕たちの未来を照らす光なのだ。
僕とミリナは、ルミエール村を後にし、新たな冒険の旅へと向かった。未来は、まだ見えない。しかし、僕の隣には、僕を信じてくれるミリナがいる。そして、僕の体には、【至高の魔核】の力が宿っている。
僕たちは、翡翠の結晶を手に、希望に満ちた未来を見つめながら、新たな世界へと足を踏み出した。