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放逐された転生ヒーラーは精霊の愛し子だった

作者: あるる

 転生もの、特にゲーム転生ものの多くは主人公がいわゆるアタッカーが多く、剣士とか勇者、戦士、狩人、忍者、ととにかくダメージを与えるのがメインのジョブが多い中、僕はヒーラーをずっとやって来ていた。

 ゲームによってヒーラーは回復とバフ、デバフ解除のみだったりするけど、ものによっては自分自身も少ないながら攻撃手段を持ってたりする。でもやっぱりヒーラーの醍醐味は絶対にダメージを食らう攻撃を受けた直後に差し込みで一気に回復できる所だと思っている。


 SNSで一時期流行った「タンクがいないと攻略が始まらず、ヒーラーがいないと攻略が進まず、アタッカーがいないと攻略が終わらない」と言うフレーズは真理だと思う。

 結局バランスが大事で、各ロールが自分の役割を果たしたからこそ迎えられるクリアが熱いんだ。


 そんなゲーマーだった時の記憶を思い出したのは、僕が10歳になり洗礼と呼ばれる初期ジョブ付与が教会で行われた時だった。


 今日は毎年1回10歳になる子供を集め、教会にて洗礼が行われその子の特性が見極められる日だった。

 僕が生まれ育ったこの国は所謂中世ヨーロッパ的な文明ではなく、どちらかと言うとスチームパンク的な世界だ。ガスや電気はある程度ありつつも、銃と剣は切っても離せない関係で軍はどちらも配備している。

 更にそこに魔術も加わり、軍事的には魔術は遠隔で広範囲殲滅、メイン戦場では銃と剣と言った感じだ。また魔術は魔道具としてガスや電気以外の生活に必要な便利な道具として用いられている。


 そしてこの国は大陸の中央近くに位置する小国で、南側の山脈の向こうに魔王の治める魔国があり常に侵略の危機に瀕していた。そんな国の辺境の子爵家の次男である僕は本来は戦闘職を求められるのだろうけど、宣言されたのは「治癒士」だった。

 ヒーラーにも様々な種類とランクがあるけれど、その最下位というか1番最初のジョブだ。治癒士から成長して行き、どの方向に成長するか選んで行く可能性の塊のはずなのだが… 周りの反応を見るにどうも僕の理解と不一致があるようだ。


 この世界で受けた教育の中で、治癒士>回復士と成長して行きここで分岐の1回目が入り、教会の教義を受け入れて神官になるか、精霊の祝福を受けて精霊士になるかを選択。神官になった場合は神官>司祭>枢機卿>聖人へと至る。

 精霊士の場合は精霊士>精魔道士>賢者へと辿る道と精霊士>聖霊士>神聖霊士となる道がある。なので、僕としては全ての選択肢が残されている「治癒士」は願ったり叶ったりなのだけど、父上のしかめっ面を見るとどうやらハズレのようだ。


「父上…」

「せめて神官であったなら使い道があったものが…。カーマイン家の恥さらしめ」

「申し訳、ありません」


 そう答えつつも、自分でどうこうできるものじゃないんだけどな…と理不尽には思ったが仕方ない。

 実際治癒士は初期ジョブのため、大して回復も治療もできないが、成長と共に回復量は増えるしレベルも上がりやすいのでそんなに苦労しないで成長できるはずなんだ。本の知識でしかないけれども。

 とはいえ、父上の反応を見ると僕はきっと廃嫡されるんだろう。兄である長男は剣士だし、僕の下にまだ妹と弟がいるから僕がいなくてもカーマイン家は困らない。そんな息苦しい雰囲気のまま僕は不機嫌な父上と逃げるように帰路に就いた。


 案の定、帰宅するなり多少の路銀と共に愛用の剣とダンジョンでの修行などで使っていた装備やマント等防寒具とテント等最低限必要なものを貰って家を出された。

 父上であるカーマイン子爵からは除籍するのでカーマインを名乗らないように忠告されたが、前世が日本人の記憶を取り戻した今となっては貴族の気取った口調はちょっとアレなので助かった一面もある。まあ、強がりだけど。

 改めて僕こと、アルフレッドの独り立ちと冒険は10歳で家から除籍で始まると言うハードモード。なんとも世知辛い世の中だよね…。とは言え、立ち止まっている暇もないか。はあ。

 とりあえず、冒険者ギルドへと向かうことにする。この世界も冒険者はギルドがあり、登録すると身分証明書と仕事が斡旋して貰え、ちゃんと実績を積んでいくことでランクが上がる。


 カーマイン子爵家があるのは領都マイルだが、流石に家族のすぐそばで平民として生きるのはきついので徒歩で1時間くらい離れている隣街のダズルへ向かった。貴族の次男と言っても特別裕福でもない家だし、ダンジョンとかにも行っていたから体力は問題ない。今着ている服も貴族の礼装ではなく訓練用の平民が着るのと変わらない服装だから気にせず歩いてダズルにある冒険者ギルドに入り受付を目指す。

 このカーマイン子爵領は辺境で魔国との間に横たわるリーミナ山脈の近くで、山脈から魔物も湧くのでその間引きなどで冒険者は需要がある。

 また魔物の魔気により薬草などが育ちやすいため、平民だとジョブを貰う10歳超えたあたりから冒険者登録する者は多いので僕が訪れても違和感はないはずだ。


「こんにちはー」

「あら、こんにちは。初めて見る子ね?」

「うん、今日洗礼受けたから冒険者の登録に来たんだ!」

「そうなのね、じゃあこれから暫くは初めて見る子が増えるかもね。

 文字の読み書きはできる?」

「うん、商会のお手伝いしてるからできるよ。

 ただ、僕は治癒士だから早く独立しろって言われてるんだ」

「そうなの、算術士とかだったら良かったのにね」

「うん、でも仕方ないから。お姉さん、治癒士はここにいるのと王都に向かうのとどっちの方がいいかな?」


 受付の女性は少し考えると、いくつか書類をまとめたファイルをめくって確認すると困ったような笑顔で答えてくれた。


「治癒士はそのままだと厳しいのは知っているよね?

 今のままだとどちらもお勧めしにくいんだけど、君は剣も使うようだからここで治癒士のランクを10まで上げることをお勧めするわ」

「なるほど、ありがとう!じゃあ、登録お願いします!」

「はい、これに記入してね」


 申込用紙は非常に単純なもので、氏名とジョブ、それと亡くなった場合の連絡先だ。

 名前には「アル」とだけ記入してジョブは「治癒士」、連絡先は一瞬悩むが、うち…カーマイン家が主に取引をしていた商会の商会長にした。一応ね…。


「はい、大丈夫よ。次はこの金属に魔力を注いでくれる?

 指先でぎゅっとつまんで、温かくなったら大丈夫よ。これでこのタグはあなただけのものになったわ」

「ありがとう!へーこれが冒険者タグなんだね!」

「ふふ、初回は無料だけど無くすと再発行に銀貨5枚かかるから気を付けてね?」

「ええっ?!たっか… 大事にします」

「それがいいわね、はいこれはプレゼントよ。丈夫な皮ひもだからここの通して首にかけておくのが定番よ」

「わあ~!ありがとうございますー!」

「いえいえ。それで今日はどうするの?」

「うーん、僕街の中は分かるけど外は分からないんです。地図とかこの街の周りの情報ってどこかで見れませんか?」

「慎重ね、いいことよ。ここの奥に階段があるから、上がって2階がギルドの資料室になっているわ。

 資料は全て持ち出し禁止で、こっそり持ち出そうとしても盗難防止魔術で無理だから試さない方がいいわよ。

 それと同じ階にギルドマスターの執務室があるから静かにね」

「はーい!じゃあ、早速行ってみます!」


 笑顔で受付のお姉さんと別れると、教わった通りすぐに階段が見つかり登ると案内が書いてあって資料室はすぐ見つかった。

 家では国の歴史や各地の特産などは学んだけど、自領の詳しい情報はまだこれからだったのでちょっとワクワクしている。



 資料室は図書館などと同じように紙とインクの独特な匂いがなんとなく懐かしい。

 ざっと見渡すとちゃんと本棚が分類されているようだ。それに僕とあまり大きさの変わらない魔法人形(オートマトン)が資料の整理をしていた。

 魔法人形は手に持っていた資料を本棚にしまうと、僕の方へと向かってきた。


「タグノ提示ヲシテ下サイ」

「えっ、あ、これでいいかな?」


 冒険者タグを服から引っ張り出すと、魔法人形の目が光りタグに何か文様が浮かび上がった。


「冒険者アルサマ。資料室ヘハドノヨウナゴ用デスカ?」

「この街の周辺の地図と生息する魔物、採取可能な植物について知りたいんだけど」

「承リマシタ。ゴ入用ノ資料ハコチラノ棚ニアリマス。」

「ありがとう、助かったよ」


 早速目的の地図と魔物についての資料は見つかった。

 まずは地図で位置把握をしつつ、生息する魔物や動物を確認して僕でも倒せるかを確認しないと。地図をみるとやはり北側は防御も厚くしていて山脈に近くなるから生息する魔物も強そうだった。

 逆に南側は湖や草原地帯も多く、魔物も小物が多く初心者向きだった。これはもう迷うまでもなく南側に行き、他の町や村にも足を伸ばして実績を作るのが最適そうだ。後は実家に迷惑をかけないように早めに去った方がいいんだろうが、地図に1ヶ所どうにも気になる書き込みがあった。


 それは前世を思い出したからこそ読める文字。そう、日本語で街の北東、山脈のふもとの森林の中にひっそりと『精霊の郷』と書いてあったのだった。

 罠だろうか、それとも何かのフラグだろうかと悩んだが、一旦今行ける場所ではないので忘れることにした。

 ただし、メモは残しておく。回復士にジョブを上げ、ランクがカンストしたらここにまた戻って来よう。


 その日は冒険者ギルドに併設されている宿に泊まり、翌朝に備えた。改めて前世の記憶がある僕が、自分の手で生き物を殺すと言うことが重くのしかかって来る。

 生命を奪うのは経験済みだから、きっと大丈夫。そう思いつつもやはり不安が残った。


 ヒーラーなのに命を奪うこの矛盾に乾いた笑いが出る。

 でも、僕も死ぬ気は無いから、殺さなきゃ死ぬなら、僕は殺す。

 ちゃんと現実を見た上での判断だ。

 それでも、出来るなら避けたいとも思っているのも本当だ。奪わなくていい命は奪いたくない。きっとこの世界において僕の考えは甘いことは理解しているが、やはり日本人としての記憶が戻ってしまった影響は大きい。

 ただ、同時に間違っているとは思わない。状況は、ちゃんと考える必要があるけど。


 幸い貴族から外れて平民となった僕が責任を負わなければいけないのは自分自身のみだと思うと気が楽になる。

 やはり貴族だと、例え小さくても領があり、領民がいて家臣がいて、その皆を護るために家がある。そうなると大を救うためには例え個人的に失い難いと思っていても小を切り捨てないといけない時と場合があることは僕も理解している。

 それを、その苦渋の判断をしないといけなくなる可能性から、僕は免除されたんだ。

 今の僕が気に掛けないといけないのは、僕自身のみ。何が起きても、一番最悪なケースは僕自身の死のみだ。

 そう考えると気は楽だし、本当に貴族は苦労が多いなと思う。


 徐々に気持ちがあっちこっちに行き、そのまま眠ってしまった。

 一気に色々あった一日だったし、不安ももちろんあるし、僕まだ10歳じゃん。頑張った……よね?


 翌朝から僕は南側の草原での討伐と採集クエストを受け、午前中の内にこなす。午後は治療院やギルドの治癒室で治療のお手伝い。治癒士なので中々回復はできないけど魔力だけは人一倍あるみたいで時間はかかるけどそれなりに治癒も回復も出来たのは朗報だった。

 この治療もバイト代みたいなものは出るので、僕にとっては修行でお金をもらっている感じだ。

 定期収入が出来た事で安心して宿にも泊まれるし、貯金もできるだろう。



 そんな毎日が3日ほど過ぎた頃、自分の中で変化が起きた。ちょうどギルドでの治癒のお手伝い中、何かが割れるような、心臓がドクッと強く響いた感じだった。


「えっ…」

「アルくん、どうかしました?」


 しまった、治療中だった!と焦るが治療室の室長が治療中の患者を確認してくれた。


「ふむ、いつも通り丁寧な治療ですね。もう大丈夫ですよ、お代は受付でお支払いください」

「ああ、坊主助かったよ。ありがとな」

「はい!お気をつけて!」


 治療していた男性冒険者は軽く手を上げると受付の方へ歩いて行った。


「それでアルくん、どうしたんですか?」

「いえ、その……なんか、胸がドクッとして…」

「ああ、なるほど!それは心配ないですよ。確かアルくんはつい先日洗礼を受けたのでしたね。では、初めてのランクアップおめでとうございます」

「ランクアップ?」

「ええ、冒険者タグを確認してみてください。きっとランクが2に上がっていますよ」

「はい!」


 冒険者タグを取り出して確認すると、ジョブである「治癒士」の横に「2」の文字が書いてあった!


「ほんとだー!」

「ふふ、そうしていると年相応だね」

「えっ?」

「君は貴族子息だよね、立ち居振る舞いで君が貴族なのは隠せない。言葉遣いも丁寧で、頭も良い、ちゃんと教育されている。洗礼を受けたばかりと言うことは10歳でこの街に近いのはこの子爵領のカーマイン家の子息か、隣の男爵領になるが、ちょうどカーマイン家の次男は10歳でアルフレッド様と仰る。

 ここまで情報が揃えば、私たち平民も君が子爵家から除籍されたアルフレッド様だとは簡単に分かってしまう…でも、君は腐るでもなく自分で自立しようとしている。だからね、ギルド関係者や宿、治療院の人間は君に味方しようと思ったんだ。よく、頑張られましたね…」

「……あっ」


 気付いたら僕は泣いていて、止められなくて、室長に抱きしめられてえんえんと泣いてしまった。


「ご、ごめんなさい…」

「謝る事はありませんよ」

「あ、あの、僕はもう平民でみんなと一緒なんで、敬語やめて、欲しいです。いつも通りが嬉しいです」

「はい、ではそうしましょう。折角なので、アルくんは今後どうして行きたいか聞いても?」

「あ、はい!

 …あの、そんな難しい事は考えてなくて、僕はこのままギルドで簡単なクエストと治癒院やここのお手伝いを続けてランクをあげて回復士をカンストさせたいんです。その後は精霊士か、それとも他にルートがあるか確認したいなって、本当にまだこれしか考えてなくて……」

「なるほど、堅実ですね。ご実家はいいんですか?」

「はい、兄も弟妹もいるからカーマイン家は安泰です。僕は家に迷惑かけないよう、でも実は家を出てちょっとだけ自由を満喫もしているんです。だから、僕はただのアルとして生きて行きたいです」

「立派ですよ。でも、君は無理し過ぎそうなので、1つ提案があります。私の弟子として私の家に来ませんか?」

「えっ、で、でも…」

「私はこれでも精霊士でして、アルくんが必要になる知識はあるかと思います。いかがですか?」

「僕はすごい助かっちゃうんですが、室長に迷惑じゃ…」

「いいえ、アルくんがこのまま戦力になってくれると助かります。ただ、一人暮らしの家なので広くはありませんが、君の部屋くらいは用意できますよ」


 こうして僕は師匠となる冒険者ギルドの治療室室長、ロイド先生の家に居候する事になった。

 後からギルドの受付をしているリンダさんからも、いくら10歳になったからって保護者も兄弟も一緒じゃない子供が一人で来ることは平民でもあまりないらしい。孤児なら数人まとまって来るだろうし。

 そして、孤児ならそもそも字なんて書けない…その時点で扱い注意としてチェック対象となるらしい。ギルドとしても子供にそんな死んで欲しくないし、訳アリの場合難癖つけられては敵わない。幸い、僕は特に問題も起こさず、勤勉で、実家からのアプローチも無かった。

 ならば、将来有望な冒険者として教育していく方針が取られたのだそうだ。そして、ロイド先生が速攻手を上げて、僕の保護者に立候補してくれたらしい。




 ◇◇◇◇◇◇



「師匠ー!もう時間ですよっ!!」

「うーん…」


 あっという間に2年が過ぎた。僕は1年で回復士に上がった。ジョブの変更には教会の洗礼式を行った場所で、担当の神官より祝福、なのかな?

 まあ、某有名RPGみたいな感じで割と機械的に次のジョブを伝えられてサクッと回復士になった。特に変わった事は無くて、使えるスキルが増えたくらいかな?あと、ランクが上がった時に魔力量も上がっている気がする。


 ロイド師匠との生活にも慣れた。師匠は、灰色の髪をして眼鏡をかけた優しそうな男性でモテそうなんだけど、恋人も作っていない。一度聞いた時、師匠は困ったように「相手に迷惑をかけますから」と言って、詳細は一切言わなかったから話したくないんだ、とそれ以上僕は聞かなかった。



 閑話休題(それはさておき)



 今日は師匠と僕の2回目のジョブ変更だ!

 もちろん、師匠と同じ精霊士を選ぶつもりだけど、選択肢を提示されてからじゃないと選択ができないから僕はこの日が楽しみだった。…だと言うのに、師匠が起きない!と言うことで、僕は最終手段を使います。


「…師匠の好きなオムレツ、冷めちゃいますよ」

「っ!!それはダメです!」

「じゃあ、早く来てください。コーヒー淹れときますから」

「……がんばります」


 5分もせずに、まだ半分寝ている師匠がぐずぐずな感じで2階から降りて来て、ふにゃふにゃとオムレツを食べ始める。僕はミルクを多めにして少し冷ましたコーヒーを渡すと嬉しそうに師匠が顔をゆるめる。


「うん、美味しいです。アルくんのコーヒーとオムレツはいつも絶品ですね」

「全く…今日は早く起きてってお願いしたのに」

「すみません、でも、ちゃんと時間には間に合いますから!」

「ぶー。じゃあ、僕は洗い物してるから師匠はゆっくり食べててくださいね」

「ありがとうございます」


 ロイド師匠は能力全振りの家事は全滅タイプだったので、この家も最初は汚家だった。とはいえ、ゴミだけは捨ててくれていたので恐ろしいものは見ないで済んだのだけは救いだったなぁ…。師匠に引き取られて最初の1週間はずっと掃除していた気がする。

 次の一週間で洗濯や模様替えをして、そこは師匠にも手伝って貰って、3週目でやっと安定した。そして僕はこの家の家事全般やる代わりに、食材や日用品のお買い物は師匠がしてくれる。

 なにせ、師匠はトースターで焼くトーストさえも炭にしてしまう才能の持ち主なので…勿体なすぎる。でも、師匠はいつも「ありがとう」「美味しいよ」と言ってくれるから実は家事は苦じゃない。


 洗濯ものを干し終えるのとほぼ同時に師匠が呼びに来てくれた。


「アルくん、おまたせ。じゃあ行こうか、今日は隣街の大き目の教会に行くから馬車をギルドでお願いしておいたよ」

「はい、ありがとうございます!」


 ギルド前に行くと馬車が待っていて、御者っぽい人と顔見知りの冒険者が一緒に待っていた。僕たちに気付くと手を振ってくれる。


「よう、アル坊!」

「カイルさん!どうしたんですか?」

「うん?決まってるだろう、お前らの護衛だよ。うちのギルドきっての精霊士と未来の精霊士を守れってな」

「わあ!嬉しいです!あ、でも、お昼足りるかな……サンドイッチ作ってきたけど、ちょっと足りないかも」

「おお、アル坊の飯は旨いからな!足りない分はちゃんとオレも御者も自分が用意したのがあるから気にしないでいいぜ」

「そうですか?」

「ああ、むしろそんな気を使ってもらってビックリしたぜ。普通御者の分とか気にしないから、坊主、気を付けるんだぞ」

「えっ、はい…」

「アルくん、君はその言動から良いとこの坊ちゃんだと思われやすい、そしてそれは悪い奴に狙われやすい、という意味ですよ」

「あ、そっか… はい!気を付けます!」


 カイルさんは剣術士から戦士にジョブ変更したBランクの冒険者で、僕が以前に治癒してから気に入ってくれて何かと声をかけてくれる。ギルドでも評判の良い冒険者の一人だけど、パーティーは組んでいないみたいだった。でも、ソロでランクB冒険者として活動できているから、本当に実力がある人だ。

 そんなカイルさんと話しつつ、御者のジムさんに途中の場所についての話を聞きながら、あっという間3時間ほどかかり隣街に着いた。


「じゃあ、オレらはここで待ってるぜ」

「ええ、よろしくお願いします」

「カイルさん、ジムさん、いってきます!」

「おう、気をつけてな坊」


 師匠と並んで見知らぬ街を歩くのは全てが新鮮に見えて面白かった。市場も置いているものはそんなに変わらないだろうと思うんだけど、違って見える。

 その中でも特に魔道具の店は面白そうで、帰りに寄る約束をしたくらいだった。

 そして、ようやく目的の教会が見えてきた。


「アルくん」

「はい」

「ちょっと動かないでくださいね」

「綺麗…師匠、このブローチは?」

「これは私個人の紋章が入っているもので、君が私の庇護下にあると証明するものです。同時に護符になります」

「すごい!かっこいい…!」

「それは良かった、では行きましょうか」

「はい!」


 緊張して並ぶ中、ようやく自分の名前が呼ばれロイド師匠と共に神官について行く。

 個別の部屋で、神官が呪文を唱えると変更できるジョブが神官の持っている神に書き記されていく。この仕組みも非常に気になるところだけれど、問題はどちらかと言うとその内容だった。


「えっ?!」

「……これほどですか」


 師匠をも唸らせたその内容とは…


 ――――――

 神官× 許可しない

 精霊士

 精霊魔導士

 聖霊士

 精霊の愛し子

 ――――――


「し、師匠…これって……」

「……セラフィーナ、お願いします」


 次の瞬間、聞こえていた音が一切消えた。


「師匠!!」

「流石アルくんですね、まさか動けるとは。それにしても、ある程度予期はしていたんですが、これは不味いですね…。」

「えっ…」


 はっとして、目の前の神官を見ると呪文を唱えている姿のまま微動だにしなかった。できの良すぎる人形のようで怖い。


「セラフィーナ、グランドマザーに最後の一行は消すようにお願いします。愛しい子がこの国にすり潰されるのは嫌でしょう?」

「……」


 僕は何も言えず、僕はただ今の状況が良くない事しか理解できなくて師匠だけが頼りだった。


「大丈夫です、アルくんの自由は侵害させませんよ」


 そして、リストから「精霊の愛し子」が元から書いてなかったように消え、音が戻ってきた。


「素晴らしいご子息ですな」

「ええ、自慢の弟子でもあります」

「そうでしょう、さあ少年、君はどのジョブを選ぶ?」


 ――――――

 神官× 許可しない

 精霊士

 精霊魔導士

 聖霊士

 ――――――


「え、えと、師匠…」

「アルくんは随分と精霊に愛されているようだけど、私は精霊士から順番にやって行くのを勧めるよ。どちらにも行けると分った事だしね」

「そっか、うん、急に色々知識が入っても分からないかもだから、神官様、精霊士でお願いします」

「堅実でよろしいですな」


 そう言って神官は微笑むと僕には理解できない言語で呪文を唱えると、僕に光が注がれた。冒険者タグを引っ張り出すとちゃんと「精霊士」になっていて、ホッとした。


「それでは神のご加護のあらんことを」


 教会を出た後、師匠は約束を破ってすまないが急いで帰ると言われ、食料だけ購入して急いで、でも不審がられないように街を出るまでは慎重に進んだ。

 馬車は何事もなく街を出ることができて、師匠はやっと息をついた。


「カイル、ジム、申し訳ありません」

「いや、いいが、何があった?」

「ここでは、まだ。リーミナの森で野営を、街への帰還は明日でお願いします」

「分かった」

「…師匠」

「不安にさせてすみません、アルくん。説明はもう少しだけ待ってくださいね」

「はい。僕は師匠が一緒なら、大丈夫です」

「いいこですね」


 師匠に抱きしめられて、頭を撫でられている内に、僕は緊張していて疲れていたのかそのまま眠ってしまった……。




「アル坊は寝たか?」

「はい」

「そうか。こいつはやっぱり、大物だったか…」

「ええ、特大に厄介なものに好かれていますね」


 アル、アルフレッドは精霊士の目には眩しいほどのオーラを持っている。そして、常に精霊が彼の周りには多くいるが、幸いなことに精霊士もしくは精霊を見る事のできる者は街にはロイドとカイルくらいしかいなかった。

 アル自身、流石に貴族なだけあって愛嬌のある綺麗な顔立ちに、濃紺の癖のない髪と氷のような薄い蒼の目が印象的な少年だ。


「15まで、15歳まで必ず守ります」

「そうだな、16歳で成人すれば神や精霊の好きにはできないからな」

「ええ」





 ふっと、目が覚めて見回すと僕は馬車で毛布にくるまれて寝ていた。でも、外は見えるようにしてくれていて、視線を上げたら師匠がカイルさんと焚火の準備をしていた。意外だけど、手慣れていた。そこで、急激に目が覚めた。


「あっ、やば!」


 急いで毛布をたたんで、側に置いてあった靴を履いて師匠たちの元へと走る。


「師匠!カイルさん!」

「おう!起きたかアル坊!」

「大丈夫ですか、アルくん?」

「はい!ご飯の仕込みですよね、お手伝いしますね~ 師匠、僕の鞄はどこですか?」


 苦笑しながら渡してくれた僕の鞄を受け取って、カイルさんが用意しくれていた肉に特性のスパイスを塗り込んでいく。後は街で買った干し肉と保存用の干し大根的な根菜を合わせてほぐして、大麦も一緒に入れて水を張った鍋も火にかける。

 ちょっと時間はかかるけど、肉を焼くのも時間はかかるので肉を食べている間に出来上がるだろう。出汁の変わりは根菜がしてくれるから、味を調える程度にスパイスと塩で最後に整えればいいだろう。


「旨そうな匂いがしますね」

「ジムさん!そろそろ肉は焼けるので、カイルさんと師匠も先にどうぞ!」

「では、遠慮なくいただきますね」

「アル坊はどうすんだ?」

「もうちょっとでスープができるので、僕はあとでいいですよ」

「ほんじゃ坊、俺も食わせて貰うな」

「はい!カイルさんも焦げちゃう前に!」


 3人が口々に美味しいと言いながら食べている姿にほっこりしつつ、スープを仕上げる。

 大麦の食感も良い感じで、これが腹持ち良くしてくれるから大事だ。ここに焼いた肉を入れても合うだろうな、やってみようと思いながら器に盛って行く。


「おまたせしました」

「おお!楽しみにしてたんだ」

「いい匂いっすね」

「アルくん、こちらにどうぞ」


 師匠の横に座り、僕に取っておいてくれた肉を齧ると、思ったより柔らかくて食べやすい。味は…うん、いい感じだ。


「アルくん、食べながらでいいので聞いてくださいね。カイルとジムも、今後も協力がいるので聞いてください。

 今ここは私の契約している精霊に頼んで結界を張っています。人にも魔獣にも見つかりません」


 そう前置きをした師匠の話しは僕の想像を遥かに超えていた。



 この世界で神と呼ばれている存在と光の精霊王とは同じものだ、と。では神官と精霊士は同じかと言うと厳密には違うらしい。

 師匠曰く、光の精霊王は非常に嫉妬深く、一旦手に入れたものは死んでも離さないし、自分以外を敬うことも力を借りることも許さないくらい、心が狭く独占欲が激しい…と。

 なので、神官の道を選ぶと使える魔法は「光のみ」そして称えて良いのは光の精霊王である『女神ハオール』のみと言う縛りをその身に課せられる。


 それに対し、「精霊士」は様々な属性の精霊と契約、加護を受けることができる。精霊にはゲームなどでは一般的な6種類の属性、火・水・風・土・光・闇があり、それぞれの属性の精霊王が種族のトップとなっている。 そして精霊全体のトップとしては交代制で『グランドマザー』が立つことになっている、らしい。

 また精霊は気に入った人間が生まれた時、この魂を持つものは自分の「愛し子」だとマーキングする事がある。これは特に光の精霊王が良くやり、選ばれた者は聖女または聖人として教会で保護され、大切に大切に育てられる。


 今回僕は複数の精霊から、光の精霊王に取られまいと「精霊の愛し子」とアピールされたとの事だった。ある意味、他の精霊から光の精霊王へ「手を出すんじゃねーぞ!」って先に叩きつけた感じだ。



「精霊の愛し子はもう何百年も出ていないんです。今となっては伝説として書物に残っているだけなのですが、その力は圧倒的だったとか…。

 あの神官が見る前に私の精霊に時を止めてもらいましたが、光の精霊王は見ている事でしょう。彼女は自分に従わない者へ容赦はありませんし、アルくんに風と水、そして光の精霊の加護を受けています。他の属性の精霊にも好かれていますが、大きくはその3つですね」

「光もですか?」

「ええ、精霊王ではなく大精霊の方ですが… ほかの精霊王たちがアルくんを光の精霊王が囲うことを許しませんでしたからね」

「おい、それってアル坊の立場やばくねぇか?」

「ええ、なのでグランドマザーにリストの修正をお願いしたんですが、光の精霊王はとにかく厄介なのでアルくんを敵視するか是が非でも手に入れようとするか… この国は教会の力が強い方なので、早く出た方がいいかと思い一旦街を離れた次第です。それに教会から国にバレた場合、アルくんを軍事兵器として確保しようとするでしょう」


『軍事兵器』として自分が使われる…そんな未来は想像もしたくなかった。敵国の兵士だけならまだしも、国民をも僕が殲滅するって事を考えて、血の気が引いた。そんな話は小説や漫画で前世にいくらでも読んだが、大体人質を取られて最後はみんな殺されていたイメージしかない。

 最悪の想像に身を震わせる僕を師匠が抱きしめて、「そんなことにはさせないよ」と囁いてくれる。


「なるほどなぁ… 今回の馬車は魔馬(まば)にしといて正解だったか。坊、あいつらは気は優しい方だがれっきとした魔獣だから下手に手は出すなよ?」

「はい、普通の馬とは違ったんですね」

「おう、オレはテイマーでな、魔獣を従えることができる。あの2頭は長く一緒に居て人にも慣れているが、戦闘になったら怖えぞ」

「あまり怖がらせないでくださいね、これから魔国に向かうんですから」

「魔国に行くんですか?」

「そうですね、ここで襲われて全滅したように見せかけた上で、リーミナの山を越えましょうか」

「あ、あの、師匠!僕、魔国に行く前に行きたい場所があるんです、この森の奥にある場所なんですが…」



 今後の予定をざっくり決めた後、アルは馬車で先に寝かした。

 その間にジムは魔馬を走らせ、ダズルで必要なものを買い揃えに行った。もう日も落ちているが、ギルドであれば開いてるし、ギルドにそれとなく消えることを匂わせておく。ギルドは国に属さない独自機関だが迷惑が掛からないようにする必要はあるからだ。


「ロイド、教会はどうするんだ?」

「もう私のセラフィーナが光の精霊を通して既に警告に行ったよ。アルは去る事、アルの家族に手を出したらアルは二度と国に戻らない事をハッキリとね。

 あの子は家族になにかあって冷静でいられるような冷徹になれる貴族的な子ではないからね。非常に優しいけど、家族が傷ついた姿なんて見たら心が壊れてしまうような子だよ。本当に貴族らしくない…」

「そうか、念のためカーマイン家にはオレの手のものを入り込ませておこう」

「お願いしますね」




 翌日早く、僕たちはリーミナの森の奥を目指していた。2年前ギルドの図書室で見つけた『精霊の郷』に向かって。荷物はコンパクトにして、魔馬の2頭が9割を持ってくれているから、僕たちは徒歩で森の奥へと進んで行く。

 途中休憩を挟みながら半日ほど歩き、ようやく中間地点になる湖へとたどり着いた時には慣れないボクはへろへろになっていた。


「うう、情けない…」

「はい、アルくんお水飲んでください」

「ありがとうございます、師匠。すみません、僕が足を引っ張ってますよね…」

「アホ、お前くらいの年なら十分だろ」

「カインさん」

「ほら、そこの湖で魚を釣ってろ。それも大事な仕事だ」

「はい!頑張りますね!」


 細い枝に糸と針を付けた釣竿だったけど、人があまり来ないせいか面白いように魚が釣れた。大小10匹ほど釣れたので腹を開いて湖で洗ってから棒を刺して戻ると、完全に野営の準備ができていた。


「アルくん凄い、大量ですね!」

「えへへ、今日はこれと食べて大丈夫な薬草とキノコを見つけたのでスープを作りますね」

「坊の飯は旨いからありがてぇ」

「魔馬は野菜と肉類どっちの方が好きですか?」

「ん?こいつらは好きに狩ってくるから放っておいていいが、あげるなら果物の方が喜ぶぞ」

「ほんとですか!じゃあ湖の近くに野苺を見つけたので朝採ってきますね!」


 この平和な時間が楽しくて、僕はもう少しこうしていたいな、と思いながら眠りについた。




 翌朝起きたら、辺り一面真っ白の靄で何も見えなかった。

 すぐ近くにいるはずの師匠の寝床にも誰もいなく、カイルさんもジムさんも見当たらない。完全に一人だった…。


「あ、あーっ。声は出るな。…師匠ーーー!カイルさん!ジムさーん!!」


 僕の声に応える声はない。


 どうしよう…こういう時は動かない方が良い事は知って入る。焚火の跡はあるし、火もまだ完全には消えていない。火が燃えれば他の3人が見つかるかもしれないと、ボクは木を足してそっと息を送り込んでみると、徐々に炎が大きくなっていった。

 少しだけ周りが見えるようになったが、3人の姿は見えない…。


「大丈夫、3人は強い、大丈夫。」


 自分に言い聞かせるように、呟きながら周りを調べる。火の回りには3人の荷物がそのままある、と言うことは何かが起きて3人は居ない事になる、つまり戻ってくる可能性が高い。魔馬がいたありまで進むが、ギリギリまだ火は見えている、そして魔馬を繋いでいたロープだけがあった。

 ジムさんという可能性が高いだろう、と理性は言うが、心が不安を訴える。


 その時、気になるモノが視界を掠めた。


「えっ?」


【まっていたよ】そう、白い靄が日本語で書いていた。


「僕、だよね…」


【うん、君をずっと、ずっと、待ってたんだ】


「え…でも、僕…なにも分からない」


 何故か会話が成立している、この異常な状態に不安は募るが同時に一人じゃない安堵感もある。師匠が居てくれればとそっと周りを見るがやはり見当たらない。


【大丈夫、ちゃんと全部教えるよ】


「で、でも、師匠もカイルさんもジムさんもいないんだ!」


【3人は無事だよ】


「3人はどこ?!」


【ここにはいない、でも無事だよ】


「っ!!ぼ、くは……どうすればいいの?」


 3人はきっと、僕のせいでどこかに囚われたのだ、と悟ると同時に諦めた。僕に誰かを犠牲にしても逃亡する気概はない、そうじゃなくても既に心細くて死にそうになっていたんだ。

 なら、せめて自分を餌に3人を救わなきゃ、そう思った。でも、最後まで従うつもりはないけど。


【この文字に、着いてきて】


「分かった。鞄だけ、取ってきたいんだけどいいかな」


【もちろん、ここで待つよ】


 駆け足で火元に戻り、愛用の鞄だけを持つ。中にはスパイスやら愛用の()()道具などが入っている。

 そして、誘導されるままに靄で真っ白な森の中を歩いて行った。




 どのくらい歩いただろうか、文字が誘導するままに延々と森の中を歩き、ようやく【ここを抜ければゴールだよ】と伝えてくれた洞窟の終わりが見えた。外はもう日が昇っているようで眩しい日差しが見えた。


「ここは……」


 洞窟を抜けたら、高台で一面の草原が目の前に広がっていた。

 空は蒼天で気持ちのいい風が吹いてて、草原の草花はそよそよと吹かれ、奥には川が流れているのが見える。非常に自然豊かで美しい景色だった。

 今までの色のない状態からの激変に戸惑っていると遠くから声が聞こえた。



「…!ア…くん!!アルフレッド!!!」



 待ち望んでいた声に振り向くと、師匠が必死な顔でこっちに走って来ていた。


「し、ししょおーーーー!!」



 溢れる涙を止められないまま、僕も走りだして抱き着いた。


「良かった、無事ですね?!」

「うん、うん……ぼ、ぼく、怖かったけど…」

「ええ、分かっています。君を泣かせた張本人はこの後、しばき倒します」

「…ぇ」

「おい、落ち着け…」

「お断りします。あんな愚か者、少しは痛い目を見ないとまた被害者が出るでしょう」

「まあまあ、とりあえず坊が無事で何よりだ」

「はい!カイルさん、ジムさんもご無事で良かったです!」



 この後の師匠は本当に、本当に本当に怖かった…。師匠を本気で怒らせちゃいけないって、学びました。はい。

 そして、ここは『精霊の郷』であり、ある意味別の次元なのだと聞いた。


 気になる事は山ほどある…「何で日本語なのか」とか、僕を「待っていた」ってどう意味なのか、とか。

 でも、とりあえず、大事な事としてここには教会の手は伸びて来れない、と言うことだ。ここは精霊の力に守られているから、ここにいる限り、周りの人たちに迷惑をかける事もない。安心して過ごせるらしい。


 そして、僕は今まで聞いた事がない話しを色々聞いた。前世でも子供は7歳までは神のうちと言われていたけど、あれは単に医療が発達する前で簡単に子供は亡くなるから言われた言葉だけど、この世界ではガチだった。

 16歳で成人するまで、子供は神や精霊と言われる存在からの影響が非常に大きく、簡単に洗脳状態にされかねないと言うことを初めて知った。精霊たち曰く、この世界の人間の魂は非常に脆く、稀にその魂を守るために精霊が保護することがあるらしい。反面強すぎる加護や複数の精霊の加護は、魂を傷つけてしまい人形のようになってしまうこともある。

 16歳になるとようやく魂が個として成立するため、外からの影響に対抗できるようになる、らしい。それにしても洗脳状態とか植物人間のようになるとか、怖すぎる…!


 なので、ここで自力で全てに対応できるようになるまで、修行をして過ごそうと師匠に言われ僕は即座に精霊の郷への滞在を決めた。師匠たちの足手まといにならないくらい強くなりたい、他はその後でいい。





 僕の冒険は、3年後!ここからまた始める!

読んでいただきありがとうございます。


ほぼ、プロローグですね… チートな感じの能力持つとそれはそれで大変。。

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