「薬」
僕は捨てられた。治安の悪い町の路地裏。捨て子は日常茶飯事なのか、誰も僕に見向きもしない。ここで生きていくにはどうしたらいいのだろうか。
「……グー」
うん、とりあえず食べ物を探そう。どうせ道行く人は何もくれないから、この路地の奥に行ってみよう。
少し進んだ所にゴミ箱があった。そのゴミ箱にネズミが登ろうと足掻いている。一応、蓋を開けて中身を見てみる。中には沢山の粉が入ったボストンバッグが入っていた。この粉、ネズミが取ろうとしていたけど、はたして食べ物なのだろうか……。
路地の突き当たりを右に曲がったところは行き止まりだった。でも、そこには見た事がない景色が広がっていた。色とりどりの人、目の大きな人、他には溶けたみたいな人もいた。壁には歪んだ人が描かれており、何だか自分の常識が通用しない空間だった。
溶けた人が何かを差し出しながら口を開く。
「コレ、タベモノ。」
その手にあったものが何か分からなかったけど、信じて食べてみた……腹が減って仕方がなかったんだよ。
ハグッ。それはとても甘くて、少し青臭いパンだった。