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八番目の偽心者  作者: 参龍頭
序章 〜新たな道、目指す先は変わらずとも〜
5/7

化かし合い

「お主、何かここで見てはいないか?」


黒髪の女性がそう言い放った。

それに加えちょうどというかギリギリというか…まあ月光の当たる空間に彼女らが入ったのでその姿が見えてきた。


まず一人は黒髪の女性。

大人っぽい風情をしていて、全体的に服に関しても黒色で、他の二人に比べて武装が少ない。

というか、この人以外も武器のみしか持っていない。

最初に私に話しかけて来たのもこの人だ。


次に柳鼠色の髪の男性。

はい、どこかの暴君にしか見えません。

耳にはイヤリング、ここには私しかいないというのに大剣の刀身丸出しの状態で背中に担いでいる。

馬鹿なのか?この人は?危ないぞ?

というか夜なのになんで肌を半分以上出しているんだ?


【イア様。心の内側でそう持っていたとしても、流石にそれは相手が可哀想ですよ。

相手はそれがカッコいいと思って言っているのですから。】


表情は見えないが、直接伝わってくる感情からしてハクさん()冗談で言っているつもりはないのだろう。

もちろん、私もだけど。


そして最後の一人は木賊色の髪の女性。

一人を除き変な人しかいないな。

この人は最初からオレンジ暴君の後ろに隠れていた。

こんな子どもにまで人見知り…なのか分からないけれど、隠れる必要あるのか?

片手で杖を持っていて、その先端はその人の性格とは似ても似つかない豪華な紅桔梗の結晶で装飾されている。

3人とも服装は黒っぽい感じだ。


そして今、一番重要視すべきことは自分が誰かをバレないようにすることと、相手の正体を探ること。

なぜかというと、暗殺者が原因だ。

ハクさんの言っていたことはよく分からなかったが、こういうことは育ってきた()()()推測がしやすい。

相手の正体が暗殺者ならば三人、まだ逃げることくらいは出来ると思う。

だから用心深く会話を作っていく。

 

「―.........?なんのことでしょうか?」


相手を騙す際には相手の問をそのまま返すよりはその疑問すら知らないという方が私がしてきた中では成功率が高かった。

考える時間もいれるとほぼ九割九分成功する。

必ず成功すると断言しないのはハクさんみたいな『心眼』の保有者だと偽ることは不可能だ。

私にはそれを確定する材料がないが、予測を立てることは事実を確定させることとは全く違う。

相手が『心眼』を持っている確率はおそらく低い。

なぜなら国と国との対談に参加したときにその能力の保持者がいればこの国に不利になる可能性があった。

しかし、その後国内での大規模な損害などは見当たらず平和そのものだった。

他の対談でも他国との戦争まで広がってしまうこともあったが、作戦がバレていたりするこのはなく勝利できていた。


つまり『心眼』の能力を持っている人数は世界でも極小数な可能性が高い。


【『心眼』の能力を持っている方が少ないのは事実です】


サンキューハクさん。

これで心を読まれて騙すも何もなくなることはなくなったな。

大切なのは次に相手がなにをしゃべるかだな




▼▼▼▼▼





イアと初めに言葉を交わした黒髪の女性―名をルーミェ・エレネイルと言った。


彼女のイアに対する心情は不自然としか考えられず、話しかける前から警戒をしていた。

なぜならルーミェが感じた強烈な竜の気配が一瞬にしてその場、イアのいた場所から消え去ったからだ。


しかし、その気配のせいでイアが初めからいたのかわからなかったのだ。

つまり可能性としてイアがそこにいた強力な竜を瞬殺してそこにいるという場合がある。

そうなると残された手段は逃亡か死闘のみであり、出来れば取りたくないとルーミェが思う手段しか残っていないからだ。


「ならば良い。して、他になにか気づいたことはないか? 」


ルーミェがとったのは相手に答えを与えずさらに相手の不意を突くようにすぐに問を出すという手段である。


「?特に何もありませんでしたよ」


イアは首をかしげながら答えた。


「そうか。いやなに、ここに竜の気配を感じたのでな。何事かと思ったのだよ。」


次に急に事実を話す。 これによって相手に動揺を与え演技を見抜くことが出来る。


「―――?! そ、そうだったのですか?」


返ってきたのは絶句と驚き。

しかし反応としては少し違和感があるにルーミェは感じた。

なぜならば一言に竜と言っても、それがどのような竜か想像することなど()()の人間には不可能なのだ。

それに相手を一刻の間のみで信用することは相手に話を合わせて来るようにしかルーミェの耳には聞こえなかった。


「今更聞くことではないと思うのだが、お主、何故このような木しかない空間におるのじゃ?」


思わず…いや、ルーミェの発言したい言葉とは全く別の言葉が出た。

なぜかは分からないが、その言葉が自然に出た。

それがこの場に一番適しているとはルーミェは考えていない。

合理的さを欠けた深層心理から出た言葉だった。


イアもまた疑いかかってくると考えていた矢先、自分に対しての疑問、初めて何も無い場所で会話した時のような一般的な世間話。

その言葉がイアに対して微量ながら動揺を与えた。


「なんででしょうか?私にもなぜだか分かりませんね。」


イアは流れに任せて発言を決めていたため、本人の動揺はルーミェには伝わらない。

但し、その言葉もイアの本心であり、流れに任せていたのが原因で動揺は隠せても次に繋ぐ言葉を見失ってしまった。

これは両者にも言えることなのだが、今までに交渉したことのない種類の話だと慎重になりミスを犯すことも少なくなるが、ありふれた交渉の中ではそれに対応する“方法(解答例)”を作ってしまい、それからズレてしまうと、次の言葉を見失ってしまう。


刹那の静寂。それを破ったのはイアが暴君と呼んだ青年―ランス・ビジョンだった。


「なに固まってんだ?ルーミェと…あーっと、そこの坊主。」


全く雰囲気に合わないことを言うランスだった。


「そなたは黙っておれ!!」


蔑むような視線を向けルーミェは言った。


「お前なぁ、子供の前で―」


何かを言おうとしたランスだったのだが、木賊色の髪を持つ女性―フィフィー・オスカーテによって口を塞がれた。

影のような手がランスの口を塞いだのだ。


フィフィーはランスの方へ近づいていき、


「流石にバラすのは駄目だと思います。」


と近くにいたルーミェにさえ聞こえない声で言った。


「あのー。何から話しましょうか?」


イアが申し訳無さそうに言った。



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