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助けを求める声に①

*この小説はフィクションです。

 彼らはある場所に来ていた。そこは、隠れ住処アジトから少し離れている。

 人々が救助されたり、助け合っていたりと人々の行動が見て取れる。大きな施設がある場所で彼らは辺りを見渡し、様子を観察していた。

「探は私とついてきて。怪我している人を見つけて手当てするよ。馨は治人はるひとさんと行動して」

 突然、寧々が一緒に来ていた探たちにてきぱきと指示を出す。

 寧々の行動に医療隊員の治人が気づくと、ふと我に返る。

「駄目ですよ。あなたたちはまだ子どもなんですから。私が指示します」

 寧々が悔しそうに頬を膨らませる。言葉を発せずとも、不機嫌そうに口をつぐむ。

「だってさ。俺は何も言ってないからね」

 探の気取った言葉づかいに寧々の不満が募る。探の足に蹴りを入れた。探は思わず、痛っと声を出す。

「探が悪い。寧々に謝れ」

 馨のきつい言い方に加え、鋭い視線を向けられてしまう。

 仕方なく小さく謝った探だったが、実をいうと心の中では反省していない。舌を出し、寧々に勝ち誇った顔を向けた。

 寧々は拗ねたようにふいと横を向く。

「はいはい、喧嘩も駄目です。ここに来た目的を忘れないでくださいね」

 治人の言葉に三人ははっとして我に返り、治人の指示を黙って聞いた。


 治人の指示を受けたのだが、結局のところ寧々の言った言葉通りに二手に別れて行動することになった。

 寧々と探は一旦別れて、怪我人を探している。

 探が怪我人がいないか歩いてると、ある人に視線が向いた。

 足を引き摺っている若い女性だ。探はすぐに駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

 女性はにこりと笑って、探を通り過ぎて行こうとする。途中で、転びそうになる。

 慌てて探が駆け寄った。

「やっぱり、大丈夫じゃないですよね。無理しないでください」

 探は心配しながら言葉にする。女性に手を差し伸べた。

「ありがとう。優しいのね」

 女性は遠慮することなく、探の助けを借りる。一旦、安全な場所で休憩することにした。探が手当てをすることになった。

 よく見れば、彼女の手足に小さい傷がいくつもある。その傷を確認しながら、探は手際よく手当てしていく。

 あまりにも手慣れていることに女性は唖然とした。

「随分、慣れているのね。将来、人を助ける職業に就くの?」

 問いかけられ、探は戸惑いを見せる。探の中では将来のことなど全く考えていない。

 それ以前に人と違う。一般の人が使えない能力を持っている。能力のことを考えれば、将来はどんな職業に就きたいか分からなくなってしまうのだ。

「ごめんなさい。大丈夫?」

 手を止めて黙っている探を気にかけ、女性は不安そうに見守った。

「五年くらい前に事故に巻き込まれたんだ。俺は助かったけど、父さんと母さん、姉ちゃんみんな亡くなったんだ。辛かったけど、だからかな。お姉さん見たら、放っておけなくてさ」

 女性は申し訳なさそうにごめんねと口にした。探は苦笑いで返す。

 探にとっては忘れられない嫌な思い出だが、それでもその経験があったからこそ人を助けたいと強く思うのだ。探の表情を見て、女性はほっと一安心する。

 和んだ空気に寧々がやってきた。

「探、いつまで一人の手当てに時間がかかってるの。次、行くよ!」

 探は寧々の声に急いで手当てを済ませた。

「また何かあったら呼んで。助けに行くから」

「ありがとう」

 二人は一言二言、言葉を交わして別れた。


 寧々の後をついていくと、探はある場所に来た。そこは多くの人がいる場所から離れている。

 男性が建物の壁に寄りかかっているが、よく見れば意識不明のようだ。

 男性の目の前で寧々が立ち止まる。寧々は後ろにいる探のほうを振り向く。

「この人、怪我してるの。救護セット貸して」

 探はためらう。救護セットを渡したからといって、自分たちだけでは意識不明の男性を助けられるとは限らない。

 探は思った。深刻な状況は大人に任せるしかないと。

「探、早く!」

 寧々はぼうっと突っ立っている探を急かす。

「俺たちじゃ無理だよ。治人さんを呼ば、」

「大丈夫だって。この人、まだ息がある。私たちならやれる。だから、助けよう」

 寧々は探の言葉を遮ると、探から救護セットが入った鞄を取り上げた。鞄を開き、必要な物を取り出す。

 てきぱきと動く寧々に呆気にとられる探。寧々をじっと見据えている。真剣な寧々の言動に気持ちが揺れ動く。咄嗟に動いていた。

「俺はなにをすればいい?」

「まず、止血して。それから、」

 二人は協力しながら、てきぱきと処置をしていった。


 *

 一方、馨は治人とともに行動していた。

 治人の指示に従い、順序よく怪我人の手当てをしていく。

 不意に馨は何かの違和感を覚える。それは、過去の出来事と似た感覚だった。

「治人さん。これが終わったら一緒に来てもらえませんか?」

 突然の馨の言葉に驚いた表情を見せた治人だったが、馨が鼻を啜ったのを耳にすると、はいと返事をした。


 馨は普通の人より嗅覚がいい。そのことは治人も知っている。

 治人は馨に無理をしないことを伝え、黙々と治療にあたったのだが、途中で馨の動きが止まった。それに気付いた治人の手も止まる。

「ごめん、治人さん。俺、行ってくる」

 突然、馨が立ち上がって、その場を離れていってしまった。治人は呼び止めようとしたが、馨の早さに諦めてしまう。

 仕方なく今の治療に全力を尽くし、早く終わらせようとてきぱきと治療にあたった。

 終わると、馨が行ったと思われる場所まで急いだ。

次回の更新日は3月19日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。


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