相違なる嘗ての相棒
*この小説はフィクションです。
阻止する者の隠れ住処を離れた司と隼人。二人は警戒しつつ向かっていたため、無事に二丈財閥の秘密の場所へと到着していた。
秘密の場所。そこは僻地で大きな蔵がある場所だった。生前の武蔵が司を一度だけ連れてきたことがある。過去の記憶を頼りにどうにか来れたのだ。
当時は厳重な警備がされていた。そのため、蔵の隣には小さな建物がある。そこには人が生活できる空間があった。
然し、今はあたりに人気がない。おそらく、司も被害に遭った震災の影響だろう。
若干、蔵も多少とも影響を受けているように見えた。傾きかけているのがその証拠だ。
「随分経ってますよね。ここに本当に秘密が隠されているんです、か?」
光景を目の当たりにした隼人が司に小声で声を掛ける。司が気にもせず、蔵の中に入ろうとしている。
「司さん、待ってください」
隼人は進む司を追いかけようと、一度辺りを見回してから司の後を追った。
彼は片目しか頼ることができない。そのせいで、転びそうになったが、体勢を立て直した。
二人が中に入ると、沢山の文献が並んでいた。中には大切に保管されているのか、金庫が置いてある。その表面に最高機密と書かれている。
司は迷うことなく、その場所の前へと向かっていく。隼人も後ろからついていく。
金庫の前までやってきた。司が手をかけようとした途端、出入り口付近からがたんと大きな音がした。
二人は近くの書棚の後ろへと隠れた。
「もしかしたら、二丈財閥の誰かが来たのかもしれない」
「けど、司さんの代で終わったんじゃ、」
二人がひそひそと会話を交わしていると、足音が響き渡り始める。
咄嗟にやり過ごすつもりで息をひそめる二人に緊迫した空気が漂う。
「誰かいるのか? 誰だ!」
二人は顔を合わせ、驚いた。不意に司が動こうとしたが、隼人が司の動きを制した。
それでも、司は力づくで隼人を押し除けようとする。隼人は首を横に振り、懸命に押さえつけようとしている。
次の瞬間、物音が響いた。
近づく足音に二人はどうすることもできず、見つかってしまった。
「誰だ? なぜ、ここにいる。もしや、悪いやつか? ならば、」
「待ってくれ。俺は司だ。流、覚えているだろ」
そこにいたのは紛れもなく、流だった。然し、現在の流はすでに亡くなっている。
司の言葉に流は険しい目つきになる。当然のことだった。
ここにいる流は過去から来た司のことを知らない流なのだ。
それを知らない司は思わず話しかけてしまった。
「なぜ、俺の名を知ってる? 会ったことないはずだ」
今の流は過去からきた。司に会う前の流。
お互い名前が知らないはずだった。司は今までの雰囲気と違った流の姿にふと思い出す。
そうかとたった一言呟いた後、流をじっと見た。真っ直ぐな視線に流は動揺を隠しきれない。
「隼人、俺が気をそらしてる間に見つけてくれ」
そう言って、司は能力を発動した。
咄嗟に身構える流は驚きを見せる。突然、司の姿が消えたのだ。
「何を、」
流が驚いて言葉にしたときだった。背後に司が現れた。司は腕を振り上げて攻撃を加えようとする。
然し、攻撃は流に当たらなかった。
一瞬にして、躱された。流も能力を発動している。流れを変え、攻撃を外された。
「危ないじゃないか。それにここで戦っても場が、悪い」
流が言葉を発し、続けようとする。再び、司の攻撃が向かってきた。
それも流は難なく躱わす。
「流石、俺の相棒だった流だ。俺の攻撃を躱わすとはな」
誰に言うともなく呟く司に流は眉を寄せて険しい表情をする。
「相棒? 俺が? そんなことはない。俺はお前を知らない」
険しい表情のまま、言葉を吐き捨てる流に司はある事が脳裏に思い浮かんだ。
現在と過去では少しばかり異なる。出会う人たちによって受ける影響は違ってくる。
然し、背負うものは変わらないことだってある。司の目にはあるものが映っていた。
それは『悲しみ』という感情だった。
司は考えた。流にとって一番の悲しみは何か。あることを思い出す。
流が亡くなった後のことだ。美鶴が阻止する者の彼らに伝えたとき、司も耳にしていた。
流には梢という名前の彼女がいたこと。彼女もまた能力者だったということも。
大切な存在を亡くし、美鶴に相談するほど悲しみを背負っていたのだと司は悟った。
「梢さん」
司が名前を発すると、流は反応を示した。司をきつく睨みつける。
「なぜ、その名を知ってる?」
司に鋭い目つきを向ける。司は怯んでいないが、憐れむような眼差しで流を見据えている。
「なぜって、俺はお前のことを知ってる。梢さんはお前にとって大切な存在だろ。彼女のために、」
「梢とは別れた。それに、敵に俺のことを知ってるとは気味が悪い。消えてくれ!」
流は言葉を言い切ると、不意に司に襲いかかろうとした。
「司さん、右。そのあと、上!」
突然、隼人の声が響き渡る。隼人の言葉通り、司は言われた方向に注意をする。そのおかげで、躱わすことができた。
「流、お願いだ。そっち側につかないでくれ。じゃないと、俺がお前を、」
司が言葉を続けようとした。不意に流が頭を抱え込んだ。最初、何が起きてるのか二人は理解ができなかった。
それを機に隼人は資料を調べ続ける。司は心配そうに頭を抱え込んでいる流の様子をじっと見守る。
大丈夫か、と声を掛けながらそっと流に近づく。
「うわああ」
突然、流が苦しげな呻めき声をあげると、司を攻撃した。攻撃が当たり、司がよろめいて蹲った。
「司さん!」
司に駆け寄る隼人を余所に流が荒れ狂い始めた。司が顔をあげ、流に視線を移す。
「司さん、一旦引きましょう。これ以上は危険です」
隼人の言葉に司は悔しさをこらえ、隼人の言葉に従うことにする。
暴れ出す流の姿を気にしつつも、二人はその場を立ち去ることにした。司の頭の中には苦しんでいる流の姿が離れなかった。
次回の更新日は2月26日(木)の予定です。
*時間帯は未定です。




