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哀愁漂う背中に

*この小説はフィクションです。

 不意に美鶴は目を開ける。ふと目に入った天井に記憶がよみがえる。

 司に呼ばれ、流の遺体がある場所へと足を運んだ。流の異変に驚きながらも対応しようとした後のこと。

 隼人たちと会い、先に司がいるところへ行くようにと伝える。その直後、美鶴は倒れてしまった。いずれ限界が来ることは分かっていても、体に負担が掛かりすぎたまま無理をしていたからだ。

 記憶が戻り、やるべきことを思い出した。体を起こそうとした瞬間、誰かに止められてしまう。

「みっちゃん、駄目だよ。休んでて」

 唐突に勇輝の姿が美鶴の目に映る。剣十の攻撃によって、勇輝の背中に剣が突き刺さってしまった。美鶴たちが治療に全力を尽くしたおかげで一命は取り留めた。

 然し、まだ安静が必要な状態だったはずだ。

 それにも関わらず、勇輝は何事もなかったように平然としている。

「勇輝くん、大丈夫なの? 刺されたのよ」

 不安そうな様子で見つめながら問いかける。大丈夫だよと答える勇輝だが、美鶴は不安を拭いきれない。

 美鶴の様子に勇輝は癒維さんに許可を取ったからと言葉にし、気持ち悪くなったらすぐ言うからと付け足した。

「僕よりも司さんを心配したほうが、」

「俺がなんだって?」

 勇輝が言葉を発した直後、割り込むように司が話し始めた。司は平然とした表情で部屋の出入り口付近に腕を組みながら壁に寄りかかるように立っている。

 美鶴と勇輝は呆気に取られた。二人は司が精神的に追い詰められる状態を目の当たりにしている。


 言葉を失ったまま司を見つめている二人に司は眉を寄せる。

「二人してそんな顔をしないでくれよ。仲間がいる限り、俺は大丈夫だ」

 表情を微動だにさせない司に二人はお互い目を合わせた。

「それよりもだ。美鶴さん、話がある。隼人から聞かれたんだ。俺が居た(••)二丈財閥のことで、」

「僕、出ていったほうがいいよね。話が終わったら呼んで」

 司の言葉を遮り、勇輝は部屋を出ていこうとした。然し、出入り口付近で司に捕まれてしまう。

「勇輝も聞いてくれると、後で説明を省いて話せるから助かる」

 呆然としている勇輝の代わりに美鶴がそうかもしれないわねと口にした。

「司ちゃん、二丈財閥について教えてくれる?」

 言葉を切り出すも、司の表情が曇っていく。

「美鶴さん。俺は表に出てる二丈財閥のことしか知らないんだ。知りたいことは二丈財閥の秘密《••》なはず。武蔵なら知ってたかもしれない」

 司の言葉に美鶴は気を落とすも、予想はしていた。

 司は生まれ持った能力者ではない。知らないのも視野に入れていた。

「俺と隼人で二丈財閥の秘密の場所に忍び込もうかと考えてる」

 美鶴の表情が険しくなった。どんなに二丈財閥の情報が必要でも、潜入するということは危険を伴うということ。安易に許可はできない。

 無言な美鶴に司はじっと待っている。

「敵に見つかってしまったら、危険よ」

「それは分かってる。けど、今できることをしないと前に進めない。流のためにも動きたいんだ」

 司は真剣な眼差しを美鶴に向ける。美鶴は短くため息をついた。額に手を当てて悩んでいる。

「みっちゃん」

 勇輝が声を掛けるが、美鶴は思い詰めている。ふうっと息を吐くと、司をまっすぐに見据える。

「分かったわ」

「隼人と準備してくる」

 司は美鶴の言葉を聞いて、早々に部屋を出ていこうとする。

 一度振り返る。

「流の体に包帯を巻いておいた。暫くは大丈夫だと思うが、透明化が進んでる。何かあったら、よろしくお願いします」

 まっすぐな視線を向けると、その場を退出した。


 美鶴は変化に驚く。

 流の透明化の進行にではない。それを知っておきながら、司が落ち着いていることにだ。

 司は流と相棒と言える存在なくらいに仲が良かった。流が亡くなったときも、流の体に異変が起きたときも、誰よりも落ち込んでいた。

「みっちゃん、いいの?」

 不意に勇輝が問いかける。美鶴は頬を緩めて大丈夫よと答えた。司ちゃんならと加えて。

 そっかと勇輝はぽつりと呟いた。少し考えた後、そうだねと言葉を付け足した。

 ただ、司の後ろ姿に少しだけ寂しさを感じたのだった。


 隼人と二丈財閥の秘密の場所に行くことを決めた司はすでに隼人と話をし、準備を進めていた。

「それにしても、意外でした。司さんの二丈財閥が能力に関わってるなんて思っていなかったです。しかも、司さんの知らないことがあるとは……」

「前々から変だと思ったんだ。やっと、秘密を探れる。流のために、何か見つけないとな」

 準備をしながら、二人は話をしていたが、司の言葉に隼人はふと手を止めた。司の背を見据える。司の背はどこか寂しさを漂わせていた。

「司さん。流さんは……」

「気をつけて行ってきて。俺、待ってるから」

 隼人が司に声をかけようとした。探に途中で言葉を遮られてしまう。

 二人は親しげに会話をしている。それでも、隼人には司の寂しげな姿が目に映されたままだった。

次回の更新日は2月19日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。


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