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解き放つ能力と無効化能力の対決

*この小説はフィクションです。

 勇輝たちに危機が訪れている頃、美鶴たちは目的の場所に着いていた。

 阻止する者(ブロッカー)の隠れ住処アジトから少し遠く離れた更地。ここに来る前、人気のなさに違和感を覚えていた。

「美鶴さん、この場所。異様な気配を感じませんか?」

 司が問いかけるが、美鶴はたどり着く前に異様さに気付いている。

「美鶴さん?」

 無言の美鶴を不思議に思ったのか、司が振り向いた。

 次の瞬間、二人の前にゲートが出現した。ゲートの扉がゆっくりと開く。

 ゲートの向こうから怪しげな人物が二人やってきた。

 斉と剣十だ。二人はすぐに美鶴たちと視線が合い、一度は眉をしかめる。

「また会ったな。何しに来た? ここに来た以上、俺たちにやられることは決まっている」

 司を目にした斉が笑いながら話す。斉たちは司と戦ったことがある。

 一方、美鶴のことを知らない。当然、実力も知らないことになる。

 女性なら大した力は持っていないという考えだ。

「そんなことは分からない。あの時とは違う」

 司が斉の言葉に答えて、真剣な眼差しを向ける。不意に剣十の姿が消えた。誰もがそう思った。


 剣十は美鶴の背後に現れた。剣を振りかざそうとして、今にも美鶴に斬りかかろうとしているようだ。

 然し、今度は美鶴の姿が消え、剣十の背後に現れる。咄嗟に剣十が振り返ったが、時すでに遅し。

 美鶴の攻撃が剣十の顔面に直撃した。

 怯んだ剣十は体勢を立て直し、再び斬りかかろうと剣を振りかざした。

 瞬時に躱されてしまう。それを見兼ねて、斉が戦闘に加わろうとする。

「俺の存在を忘れちゃ困るな」

 司が能力で自身の姿を消し、斉を人質をとるように背後から押さえつけた。不利な状況でも、斉は余裕を見せている。

「あいつと同じ台詞か。お前たちはよく似ているな」

 ぽつりと言葉を漏らし、目元に笑みを浮かべる。斉の言葉に司の腕に力が入る。

「そういえば、あいつはどうした? 今頃は、」

「司ちゃん、右!」

 斉が言葉を続けようとした時だった。斉の言葉は美鶴にかき消され、途切れてしまう。

 美鶴の言葉に咄嗟に右を向いた司。刃がぎらりと光るのを捉えた。

 すぐに斉から離れ、攻撃を避けようとした。避けきれず、攻撃が顔を掠めた。

 若干、頬から血が垂れている。

「司ちゃん、大丈夫?」

 心配する美鶴の声に司は嗚呼と答えるだけ。油断すれば、攻撃を受けてしまうかもしれないからだ。

「やはり、お前は俺たちに勝てないようだ」

 斉は得意げに話す。それでも、司は口元に笑みを浮かべた。

「美鶴さん」

 その言葉を耳にした美鶴は斉たちに近づく。斉は拳を、剣十は刀を構える。

 美鶴は一つ目(・・)の能力を発動した。二人の視線が美鶴に向いた瞬間、二人は立っていられなくなり、跪いた。

 何が起こったのか、二人は理解できない。


 美鶴の能力の一つ。

 能力者をひれ伏させるほどの存在感オーラを放つこと。通常時でも僅かに放たれている。

 常に放たれていることになるが、体に影響はない。美鶴自身の能力ではないのが理由だ。

 美鶴は短くため息をつき、二人にゆっくりと近づいていく。

変えたい者(チェンジャー)の居場所はどこ? 答えないとただでは済まないわ」

 然し、二人は答えない。その様子に何かがおかしいと思った司は二人を観察するようにじっと見据える。

 よく見ると、斉の口元が緩んでいる。

「美鶴さん!」

 危険を察知し、思わず声を張り上げていた。司が美鶴に視線を向けると、肩から血を流している。血がぽたぽたと滴り、美鶴は肩を押さえていた。


 跪いていた二人が何事もなかったように立っている。その姿に司は思い出す。

 能力の無効化。

 斉の能力を知らない美鶴は驚いたが、それも僅か。すぐに対応し、いつもの表情に戻った。

「美鶴さん、剣を使わない奴の能力は能力無効化です。一時的に無効化されたんです。気をつけてください」

 美鶴に注意するように説明した司だが、美鶴の顔が綻んでいる。次の瞬間、美鶴の肩から流れていた血が止まった。

 服に血の滲みが付着しているが、何事もなかったように体を動かしている。

 斉は平然としている美鶴を睨んだ。

「残念だったわね」

 美鶴が余裕を見せると、すぐに姿を消した。斉の背後に回り、ぬっと姿を現す。

 斎が振り返ると消えた。瞬間移動のように現れては消える。その繰り返し。

 斉は目で追うが、追いきれていない。一方、剣十は刀を構えている。

「司ちゃん、行くわよ」

「はい」

 その言葉を合図に再び戦いが始まった。



 *

 目的に着く前、二人は小声で会話をしていた。作戦を立てるために。勇輝に指示され、司と美鶴は敵を引き止めることになった。

 言い換えれば、戦うこと。敵の強さは予想できない。そのため、作戦を立てることにした。

 考えた作戦はこうだ。

 最初に司の能力で美鶴の姿を消す。二人に会っている司。能力はすでに見破られている。

 一見、意味のない行動だが、二人が美鶴に注目している間、司が斉の背後に忍び寄る。

 注目していなければ、背後の司にも気づくだろう。

 問題は斉の能力だ。

 能力が無効化しない一瞬の油断をつけば、勝てる可能性がある。

 一瞬を見極められる美鶴に委ねることに決めた、はずだった。

「司ちゃん、後ろ!」

 美鶴の声に反応し、後ろを振り返ろうとした直後、司の背中に痛みが走った。

 剣十に背中を斬りつけられてしまう。

 痛みに耐えきれず、司はその場に倒れてしまった。

「司ちゃん!」

 倒れている司に駆け寄ろうとした美鶴。斉がその前に立ちはだかる。

「あの男は終わりだ」

 斉が言葉を口にすると、美鶴は雰囲気オーラを放った。

 両目には赤色の光が放たれている。怒りの感情の色だ。

「怒りに任せての力か。そんなもの、」

「そうよ。私を怒らせたら、死を覚悟しなさい」

 斉の言葉を遮り、美鶴は斉をきつく睨みつけて言葉を言い放つ。

 斉と剣十は美鶴の本当の強さを知らないまま、体制を固めた。

次話更新日は9月18日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

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