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覚醒

*この小説はフィクションです。

 瞬と再会した勇輝は眉間に皺を寄せる。彼はこの場所に変えたい者(チェンジャー)を保護しに来た。

 然し、行方不明だった瞬に会ってしまう。瞬はいきなり勇輝を攻撃してきたが、勇輝は素早く躱わすことができた。

 その理由は御角の能力にある。自分で作り出せる空間に勇輝を含めて逃げ込んだ。だが、逃げてばかりでは目的である変えたい者(チェンジャー)の保護ができない。

 逃げることは許されない。

 勇輝は御角を騙し、保護しようと試みる。そう上手くはいかないもの。

 瞬が勇輝の話も聞かず、繰り返し攻撃をしてきたのだ。それでも躱していく勇輝だが、瞬の攻撃は止まない。

 寧ろ、攻撃する度に攻撃力が上がっていくような感覚にとらわれていた。

「本気見せろよ。それとも力を失った? そんなわけないよね? かかってこいよ!」

 その瞬間、瞬の拳が勇輝の顔を掠めた。瞬の顔から笑みがこぼれる。

 次の攻撃を仕掛けようと瞬が蹴りを入れるために足を振り上げた。

 然し、足は勇輝に当たることはない。空を蹴り、勇輝に押し出された。

「こんなことをしに来たんじゃないんだ。これじゃ前と同じじゃないか!」

 勇輝の叫びに瞬は聞く耳を持たず、攻撃を繰り返す。それでも、勇輝は躱し続ける。

 簡単に躱され、瞬は軽く舌打ちをする。

 勇輝の態度に苛々が募っていた。

「だったら、攻撃すればいいだろ。このままだとやられちゃうよ。そうなったら、師匠が悲しんで飛んでくるかもね!」

 攻撃を加えようとした瞬間、勇輝が拳で受け止めた。

「そうだと思う。父さんは悲しむ。けど、父さんはもういないんだ。死んじゃったんだよ」

 勇輝が言葉を強めて口にするが、瞬は顔色を変えない。

 瞬の中では今も師匠である力弥が生きている。


 瞬は知らない。勇輝と力弥が対立する前に倒れたのだから。

 勇輝の言うことはどうせ嘘に決まっていると思っているのだ。そんなことも知らず、勇輝はあるモノを取り出す。

 力弥からもらったペンダントだ。迷いなく、瞬に見せた。

「これ、父さんが持ってたペンダント。瞬なら分かるはず。父さんが亡くなる前に貰ったんだ。多分、父さんはこうなることが分かってたんじゃないかな。じゃないと、僕に渡すことは、」

 勇輝の言葉を遮るように瞬はペンダントを奪い取った。そのまま、ペンダントを地面に叩きつけ、踏みつけた。

「コレがどうしたんだよ。師匠が死んだ証拠にならないだろ!」

 怒りを当たり散らすように言葉を吐き捨てると、勇輝を睨みつける。

 勇輝は踏みつけられたペンダントを見つめ、口を閉ざしたまま動かない。

 そんな勇輝を無視し、瞬は電光の速さで攻撃をしかける。然し、攻撃は勇輝に当たらない。

 勇輝が掌で攻撃を食い止めていた。瞬は舌打ちをすると、最大限に力を強めた。

 それでも、微動だにしない勇輝。二人の視線が合い、勇輝の異様さを感じた瞬は視線を逸らした。


 勇輝の目が濃い青色になっている。青色。それは、悲しみの感情を示している。

 以前、瞬は力弥から感情について学んだことがある。能力者にとって、感情は重要なことだと教わっていた。

 今の勇輝が悲しみを抱いていることを知っている。その理由はペンダントを壊されたこと。瞬が踏みつけ、踏み潰したのが原因だ。

「コレが師匠の言っていたことか。でも、関係な、」

 言葉を呟く瞬だが、途切れてしまう。少しばかり手が震えている。

 勇輝がすごい目つきで睨みつけていた。耳を傾けると、何か呟いているようだ。

「なんだ、よ」

 勇輝の姿にぽつりと言葉が漏れる瞬はその場から一二歩後ずさろうとした。勇輝にぐいと腕を掴まれ、身動き出来なくなる。

「許さねぇ。親父の大切なものを壊されたんだ。逃がさねぇ」

 言葉遣いからあの時の勇輝だと察した。

 不意に瞬の頬に痛みが走る。勇輝の拳が直撃した。

「やって、くれるじゃん」

 その言葉を合図に二人は再び争い始めた。


 瞬と覚醒状態の勇輝が対決している頃、御角は女性と一緒に異空間で観戦していた。

 二人を見て面白そうに笑みを浮かべる御角。一方、女性は心配そうに眺めている。

 彼女は能力者ではないただの一般人。なぜ、勇輝と瞬が対立しているのか、戦っている理由が分からないのだ。

 能力者のことはよく理解していない。ただ、能力者の一人、天埜流のことは知っている。

 彼が高校生の時、保健室の先生だった。所謂、養護教諭。

 流が卒業した後、養護教諭を辞め、医師を目指し医療従事者になったのだ。

 彼女の名前は神宮かみや千歳ちとせ

 訳あって、狂に拾われたといってもいい。彼女の願いが流に関係しているからだ。彼女は狂についていくことにした。世界を壊すことだと知らずに。


 ふと、千歳は御角をじっと見つめた。その視線に気付いた御角は千歳を見やる。

「なんだよ。あんたは暫くは出れないから。出したら、あの人に叱られる。あの人、怖いから逆らえないし、勇輝の言う通りにしないと、僕なにされるか分からないからじっとしててもらえる?」

 御角は言葉を口にするが、あくまで自分の身を守るため。勇輝の行動に逆らえば、美鶴に何をされるか分からない。今出るにしても、二人の争いに巻き込まれるだけ。千歳を閉じ込めておくしかないのだ。

 御角の威圧的な言い方に千歳は大人しく見守ることにした。


 御角たちに見られていることも忘れ、勇輝と瞬は戦い続けている。

 よく見れば、覚醒した勇輝の方が有利だ。その理由は勇輝が覚醒したのもそうなのだが、瞬の怪我は完治していない。そんな状態で戦っていてはいずれ限界がくる。

 瞬の動きを察し、勇輝は手を止めた。

「瞬、諦めろ。お前の負けだ。お前は俺に勝てない」

 勇輝の言葉に瞬は悔しそうに唇を噛み締める。

 負けたくない気持ちが瞬の心をかき乱す。力を強めたはずが、攻撃が弱まっていく。

 挙げ句の果てに跪いてしまう。

 やっと、瞬を止めることが出来た勇輝。安心したのか、徐々に我を取り戻していくはずだった。

 勇輝の様子がおかしい。その事に気付いた御角は能力を解いた。

 千歳に続き、勇輝と瞬を異空間へと移動させた。

 ぼうっとしている千歳を見やると、険しい表情を向ける。

「なにやってるの? 二人の怪我を治せるんでしょ。さっさと動いて。じゃないと、」

 御角は言葉を言い切る前にばたっと倒れてしまった。

 突然、御角の空間に狂の姿が現れたのだ。

 不意打ちに遭った御角は動かない。

 三人が倒れている中、千歳は唖然として立ち尽くしていた。

次話更新日は9月4日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

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