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最悪な再会

*この小説はフィクションです。

 みんなと解散した後、勇輝は御角を連れてある場所に向かっていた。二人で協力して変えたい者(チェンジャー)を保護しにいく、はずだった。

 どうやら、難しそうだ。御角が不機嫌な様子を見せている。

「どうして、僕がお前と保護しにいくことになったんだよ。僕の代わりは他にもいるでしょ。僕、殺されちゃうんだけど」

 御角の不機嫌が募る。そのせいか、だんだんと歩調がのろくなっていく。

 それでも、勇輝は冷静さを保ち続ける。

「狙われてるのは一緒だと思います。僕もそうだから」

 御角に共感する勇輝。然し、御角には逆効果だった。更に不機嫌さを顔に出している。

「あのさ、僕と歳が変わらないよね。なんで、敬語なの? 普通に嫌な、」

「分かったよ。普通に話すから教えて。変えたい者(チェンジャー)の居場所」

 勇輝は御角の言葉を遮り、御角にまっすぐな視線を向けた。御角は気まずく視線を逸らした。

「僕、知らないよ。知ってるのは狂ってやつと斉ってやつかな」

 直後、勇輝は顔を歪める。勇輝には御角が嘘をついているとしか思えないのだ。

 情報交換していた逸樹から聞いていたのだから。


 不意に御角をきつく睨む。御角は視線を逸らして目を合わせようとしない。

 勇輝から異様な雰囲気を敏感に感じ取った。それはあの時、美鶴から感じ取ったものと似ている。だが、明らかに違うのは確かだった。

「あー、もうさ。分かった。教えてやるから。さっきまでどこ目指してたんだよ」

 御角が諦めて言葉を吐き捨てるように口にすると、先を行こうとする。不意に振り返り、止まっている勇輝を怪訝そうに見やる。

「あのさ、行かないの?」

 はっとして我に返った勇輝は止まっていた足を動かした。然し、様子がおかしい。御角と逆の方向へ進んでいる。

「ねぇ、そっちじゃないんだけど。おーい」

 御角が呼びかけるが、何かに夢中になっているのか聞こえていない。勇輝はまっすぐ進んでいく。

 予想もしないことが起きる。


 突然、勇輝が足を止めた。勇輝の目の前に女性が一人立っている。

「あなたが変えたい者(チェンジャー)ですか? それと、流さんを知ってるんですか?」

 ふと、勇輝は問いかける。女性は答えない。

 勇輝はペンダントを握りながら、無言の女性をじっと見つめた。

 女性も見つめ返す。

 そんな様子を見ている御角が不機嫌そうにする。二人の言葉を耳にして「あ?」と声を漏らした。

 急かそうと言葉を切り出そうとした時だった。

「あなたも流くんを知ってるようね。案内してくれる?」

 女性が言葉を口にする。

 勇輝は首を横に振った。

「今は無理。あなたを保護して安全だと確信を持てたら会わせてあげる。それまでは、」

 勇輝が言葉を続けようとした。次の瞬間、勇輝の横から何かが飛んでこようとしていた。

 勇輝は素早く反応し、躱わす。


 向かってきた方向に視線を向けると、瞬の姿を捉えた。

「へー、やるじゃん。まだ(••)躱せるんだ」

 瞬は勇輝の動きに感心する。勇輝が躱したことは力があることを示していると思ったのだ。

 また戦えることに瞬は嬉しくなった。

「瞬、よかった。無事だったんだ、」

 勇輝がほっと胸を撫で下ろし言葉を発した直後、再び瞬が攻撃をしかけてきた。

 勇輝は避けきれない、そう思った瞬間、何かに包まれ目の前の光景が一変した。

 気がつくと、真っ白な空間に勇輝はいた。

「助けたつもりはないからね」

 不意に勇輝の耳に届いた声。その声の主は御角だった。

 御角が能力を発動したのだ。

 対象者を自分が作り出した空間に閉じ込める能力。

 危機を感じ、勇輝と自分を含めて空間へと閉じ込めたおかげで危機から脱することができたのだ。

「ありがとう」

 勇輝はお礼の言葉を口にする。

「だから、助けたつもりはないって。あいつ嫌いだから逃げたかっただけだし」

 不機嫌に答える御角を見て、勇輝は笑みをにじませる。睨みつけられ、苦笑いで誤魔化した。

「それより、ここはどこ? ここから出ないと保護できない」

「ここは僕が作り出した空間。僕、あいつが嫌いで逃げたって言ったよね? 暫くは出れないよ」

 御角は短く説明した後、その場に座ってしまった。

 ここを出れないと何もできない。

 勇輝の目的は変えたい者(チェンジャー)の保護。御角は勇輝に連れてこられたと言ってもいい。元が変える者(ブラックチェンジャー)変えたい者(チェンジャー)がどうなろうとどうでもいいこと。

 あたふたしている勇輝を傍観した。


 勇輝は考える。どうすれば、御角が作った空間から出れるか。

 御角と戦い、力に頼れば単純な話だ。父親の力弥ならそうしただろう。

 勇輝はそんなことをしたくはない。力は人を傷つけるだけのもの。

 然も、御角は女の子。女の子を傷つけるのはよくない。

 御角が何かに引っかかることを探さなければならない。勇輝は頭を巡らせ、ある事を思い出す。

「君は出なくていいよ。僕だけ出してほしい。外の様子は分かるんだよね? 僕の身に何かあった時はここに連れてきてほしいんだ」

「やだね。そんなの都合が良すぎるじゃん」

 御角の言葉通り、勇輝にとっては都合がいい。簡単には受け入れてもらえないだろう。

 不意に勇輝の口元が緩む。

「いいの? 何かあったら、みっちゃんが駆けつけてくる。そうなれば、君はただじゃ済まないと思うよ。みっちゃんの恐さ知ってるでしょ」

 真剣な表情を浮かべ、御角に言葉を伝える。勇輝は分かっている。御角が美鶴を恐れていること。

 御角は想像して、ぶるっと肩を振るわせる。

「わ、分かったよ。僕も行く。その代わりに守ってよ」

 仕方なく受け入れた御角の言葉に勇輝はありがとうと言葉にして嬉しそうに微笑んだ。


 二人が話をしている間、女性が驚いてその場に立ち尽くしていた。

 その理由は勇輝と御角が消えたからだ。瞬は驚いていない。能力だと思っているから驚くことはない。

「これが能力ってやつだから気にしなくていいよ。どうせ、逃げたんだよ」

「逃げた? それはどういう意味なの?」

 彼女は彼らが敵対している本当の意味を知らない。目的も。瞬の言葉に困惑するばかりだ。

 じっとしている彼女に瞬は呆れて短くため息をつく。

 二人がその場を離れようとした瞬間、消えた勇輝と御角の姿が現れた。

「逃がさないよ。変えたい者(チェンジャー)を保護しにきたんだから」

「へー。じゃあ、試そうよ。今度こそどっちが強いかをさ」

 勇輝の言葉に釣られるように瞬が笑みを浮かべながら言葉を放つ。

 近くで御角がどうなっても知らないからと小言を漏らしていた。

次話更新日は8月21日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。

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